第1章第3話「初めての依頼」

コケコッコオォォ!!!


バサッ!


いつもと違う目覚ましの音にハルトは飛び起きた




「うるさ!びっくりした、、、」




そして、目を覚ましてから数分フリーズしてから


自分が異世界に飛ばされたという事を思い出した




「夢じゃなかったか、、」




グーっと腹が鳴り響く




「鶏が鳴いたら朝食だったか、準備をして食堂に行こう」




食堂にいくととても良い匂いが漂ってきた、そういえば昨日からリンガ1つしか食べてないんだった、1日色々ありすぎて食事の事なんてすっかり忘れていた




「ハルトさんおはようございます!」




席に着くとミーナが元気よく挨拶しにきてくれた。




「おはよう、朝の鶏の鳴き声大きいねびっくりしちゃったよ」




くすくすと笑い




「あの子はうちの宿の看板鶏ちゃんなのです!」




それを聞いた他のお客たちも笑いながらご飯を食べていた




「ふふ、なるほどね」




「今、朝ごはんをおもちしますね!」




そういうと厨房の方へ入っていった




窓の外へ目を向けると凄く青い空が広がっていた。いい天気だ、昨日出会った優しい人達や今朝のミーナ、そして窓から注ぐ朝日が突然異世界へと飛ばされたハルトの感情を明るく照らしてくれた。




そうだ、今日は昨日受けた薬草の依頼をしに行こう




「どうしました?ボーッとしちゃって


ごはんお待ちしましたよ」




外を見てボーッとしてる間に朝食を運んできてくれたようだ




「んーん、今日やることについて考えてただけだよ」




「依頼ですか?頑張ってくださいね」




そう言うとメニューの説明を始めた


―――――――――――――


オニオとキャロのスープ


丸パン


鶏ちゃんの卵の目玉焼き


アーデンシアサラダ


―――――――――――――


サラダは各街に1つは街の名前が付いたサラダがあるようでその街の特産野菜を使っているサラダのようだ、ちなみにこの街の特産品はスープにも入っているキャロだ。人参と同じようなもので色は赤く京人参に近い




コンビニ生活をしていた俺にとっては涙が出そうな献立だ




「たくさん食べてください!」




「うん、いただきます」




美味しい、、、この世界に来てはじめてのまともな食事、やはり食べ物に困らないと言うのは素晴らしい事だ




特産品のキャロは味こそ人参だが食感は人参より大根に近くとても水々しく甘い野菜だ




あっという間に食べ終わってしまった




「ご馳走さま、とても美味しかったよ」




「ありがとうございます!」




ミーナは厨房の中から笑顔で返してくれた




食事を済ませミーナにご馳走さまと告げ


部屋に戻り、今日やる事と今持っている残金の確認を行った




「今日は、滞在手数料の更新と依頼だな」




「残金は――――」




昨日のスーツを売りに出した時にできた


王章金貨3枚、金貨90枚、銀貨1000枚のうち


短剣や盾、防具代で銀貨400枚


認識阻害の外套が魔法付与は滅多に出回らないものらしく王章金貨1枚という大きな出費をしてしまった。そして、ギルド登録で銀貨50枚、宿7日分で銀貨8枚銅貨40枚




「――――王章金貨2枚、金貨90枚、銀貨541枚、銅貨60枚ってところか」




宿代や武器防具の相場から見て王章金貨って相当な大金なんじゃ、、、、


洋服の◯山のスーツおそるべし、、、




でも、このお金も無限って訳ではない、最低ランクの依頼の報酬なんて高々知れてるし、ランクが上がればその分良い装備を買わなければならない。普通に生活を続けていてもいつかは底を尽きるだろう




「このお金が尽きる前に少しはランクもあげないとな」




今後の方針も決まったところで、装備を着込み、宿を後にした




昨日、捕まりそうになった門の役所でとりあえず一週間分の滞在手数料を払い、天命草の採取をする為、王都の外にある森へと向かう




王都は魔力溜まりの上に建てられおり、その魔力の影響が周りの土地に影響を及ぼしているようだ、魔力が王都の街灯を照らすのと同じで、森の植物や魔物などにも力を与えている。天命草もその1つである




俺は改めて依頼書を見た




【天命草 10株 採取 無期限】




詳しい図解と採取方法が書かれていた


見た目は蓮の花とよく似ている


天命草は刈り取ると劣化が激しいようで、球根から掘り起こして採取するのが基本らしい




「さて、、凡人現代人でも、、草取りくらいならできるだろ、、」




「やってやりますか!」






― 数時間後 ―


ハルトは走っていた




「まてまてまて!!魔物多すぎだろ!」




ゴブリンの群れに追われていた


ゴブリンは個体値の強さは低く、人間の子供ほどの力であるが、ずる賢く群れで行動している魔物である




舐めてかかっていたが最低ランクでも冒険者の依頼、一般市民に出来ないから依頼が来るのである。そして最低難易度なのは剣技などが使えるのが前提の場合




「俺にとっては高難易度じゃんかよ!!」




叫びながら逃げまくるのであった




「どうする、、!!どうする!!」




アルゴの言葉を思い出した




「あ!外套だ!」




俺は草陰に飛び込み急いで外套のフードを被った




ギィィ? ギギッ!


ゴブリンの声が聞こえる、探しているようだ


ギィ!ギギギッ!ギッ!


どうやら俺のことを舐めているのかバラバラに探し始めたようだ、、、




「いける、、、か?」




短剣に手を伸ばした、、だが、その手は震えていた




やれるのか?現実世界で生き物を殺した事もなく、スーパーに並んでる肉しか食べてないような俺が?




怯えていた、殺生というものに




だが、これを乗り越えなければこの世界では生きていけない。最低難易度でもこんな有様だ。ランクが上がればこんな事では済まなくなる




「くそ、、、」




生きるという事はこういう事なのだ


生きるというのは奪う事


その、気持ちを今朝の食事に対して行ったように「いただきます」「ご馳走さま」に込める




ゴブリンから何も得ることは出来なくても同じ、殺さなければ生きられない




「ふぅ、、」




深呼吸をし震えていた手を無理矢理落ち着かせた




何体かのゴブリンは撒けていたようで残りはは3体




バラバラに行動しているゴブリンの中で1番離れている奴に目を付けた




「あいつだ、、、」




ハルトは背後から忍び寄りゴブリンの首の横、鎖骨あたりに短剣を勢いよく突き刺した




ギィアイイイイイ




その叫び声で鳥たちが一斉に飛び去っていき、吹き出した血がハルトへと吹き出した




「はぁ、、はぁ、、、」




手がまた震えだした


目の前には横たわる「死」がある




自分が殺したのだ




初めての殺生に涙を浮かべる余裕すら与えないかのように残りの2体がこちらへ向かってきた。認識阻害は被った血の匂いで効果を無くしたようだ




これは「現実」だ




「うぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」




短剣をゴブリン達に向け迎え撃った




――――――――――――――


ギルドに入ると 「おい見ろよ 」「やばいな」などと他の冒険者の人達が言っているのが聞こえてくる




「おつかれさ、、、、え!?どうしたんですかその血!!」




ニーナもこちらを見るなり血相を変え駆け寄ってきた




「ははっ、、情けないです」




「だ、大丈夫なんですか???」




「自分の怪我はかすり傷程度です」




「冒険者初日で死んじゃうのは洒落になりませんからね!」




ニーナは心配すると同時に怒っていた


自分の担当した冒険者が死なれては気分が悪いだろう




「すみません、、あっ、これ依頼の天命草10株です」




「もぅ、、確かに受け取りました、これで依頼完了ですね」




謝りながら依頼の話をすると少し呆れられたかのように達成受理をされた




「これが、依頼報酬の銅貨80枚です」




報酬は分かってはいたが、これだけ戦って1日分の宿代にも満たないのか、最低ランク依頼とはいえ金銭問題は早いうちに解決しないといけないようだ




「ありがとう」




「次は気をつけて下さいね」




「はい、、気をつけます、、」




この調子じゃ毎日のように心配させることになりそうだ




三日月亭帰るとミーナも同じ反応で駆け寄ってきた




は、ハルトさん!?と驚かれ




そのまま強制的に風呂に連行されてしまった




風呂に入りながら今日の事について考える




「生き物の命を奪うという行為はこんなにも辛いものだったんだなぁ」




血が出て冷たくなるそれが「死」


奪わなければ生きられない世界


元いた世界も裏を返せば同じだ




何気なく買っていた物、何気なく捨てていた物、全てに命が宿っていたはずだ




「よしっ!!」パンッ!




両頬を叩いて気合を入れて


感謝を込めて食事をとることに決めた




部屋に戻り着替えたハルトは街へと出た




「昨日の夜は寝てしまったからな、夜の王都は初めてだ」




街灯が街を照らし、1区画高いところにある三日月亭からは王都の夜景を見る事が出来た




「綺麗だ、、、」




あの建物1つ1つの明かりの中に生きている人達が生活してる。なんて美しいんだ。


そんな事を考えつつ




「さて、何を食べようかな!」




とりあえず大通りに出ることにした




大通りに出ると出店や酒場などが数多く並んでおりテラスで酒を交わす人々が大勢いた




「おにいさん!どうだい1本!」




声をかけてきたのは、串焼きのお店のおっちゃんだった




「これは何のお肉なんですか?」




「これはバッフロアって言う動物の肉で、うちの店秘伝のタレで漬け込んで、寝かせてから炭火でじっくりと火を入れたものさ!」




「これを串から抜いて野菜と一緒にパンで挟んで食べる!


これがうちの自慢の一品【バケス】だ」




これは美味そうだ、、、




「じゃあ1つ下さい」




「あいよ!銅貨20枚だ」




お金を受け取ると焼いていた肉を野菜と共にパンに挟み手渡してきた




「ありがとうございます、いただきます」




一口食べた




「ッ!!」




その瞬間、肉から出た肉汁の量に驚いた。そして、その溢れるはずだった肉汁がパンに吸われ余すことなく口の中に広がった




「これは、、う、うまい、、!」




「そうだろう、そうだろう!」




おっちゃんは満足げに腕を組んで笑っていた




「この千切りにされてる野菜は何ですか?」




「それはキャべって野菜だ」




「ふむふむ」




なるほどキャベツか、この野菜の相性も抜群だ。パンに受けきれなかった肉汁をこの千切りが受け止めてくれている




「とても美味しかったです」




「おう、ありがとーよ!また来てくれよな!」




そんな会話を交わし店を離れた




「あの美味さであの値段安いなぁ」




満足げに腹をさすっていると。どこからか甘い匂い柄漂ってきた




どうやら焼き菓子の屋台らしい


屋台の前でおばさんが客引きをしている




「甘くておいしい、ポンはいいが!」




どうやらお菓子の名前は【ポン】と言うらしい、見た感じは鈴カステラのような見た目で、1袋に数個入っているようだ。




1袋銅貨10枚か、よし




「2袋貰えますか?」




「ありがとさん、ちょっとまっててな」




そう言うと袋詰めしてくれた




「あいよ、お待ちどうさん、何個かはおまけだ」




優しいおばさんで袋からはみ出るくらい入れてくれた




「こんなに!ありがとうございます」




お礼を言い、適当な座れる場所をさがし


中央にある噴水の縁に座った




そして、早速1つ口に入れてみるととても甘くあの時忘れてきたケーキを思い出した




1日遅れた誕生日祝いかな、おめでとう俺




そろそろ戻るか




――――――――――――――――




三日月亭に入るとミーナと目が合った




「お帰りなさいハルトさん、夜のアーデンシアはどうでしたか?」




「夜景がとても綺麗だったよ、あとご飯も美味しかった」




そう言いながら買ってきたものをミーナに渡した




「今日は血だらけで帰って宿を汚しちゃったから、お土産を買ってきたよ」




「わ!!これって通りにあるお菓子屋さんのポンですよね!!好きなんです!」




と、ミーナは目をキラキラ輝かせていた




「お店番が忙しくて中々買えなかったので嬉しいです!ありがとうございます」




「喜んでもらえたなら良かったよ」




「明日のお店番の合間に食べますね!」




「うんうん、今日はもう遅いし明日に備えて寝るとするよ」




「おやすみなさいハルトさん」




何気ない会話をし、部屋に戻った




「ふぅ、、、」




今日もなんとか乗り越えられた




明日も乗り越えられるだろうか




「明日は新しい依頼の確認と黒狼について少し調べてみよう」




課題は山積みだ


この世界の事をもっと知らなければ


そして、戻る方法も、、、、




そんな事を考えてるうちに眠りの中へと意識を落としていった


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