第1章第2話「冒険者として生きる為」

春人はこんどこそ冒険者ギルドに向かっていたが、



「でも、丸腰で行ったら舐められそうだよな、、、?」


「先に防具やら武器やら揃えた方がいい気がするな、、」


「せっかく金も手に入った事だし、、」




などとブツブツ独り言を言いながら歩いていると


とある看板が目に入ってきた




【アルゴの武器防具店】




どうやら、悩み事が解決しそうだ




古びた入り口にはベルが付いており、開けると綺麗な音が鳴り響いた




「ご、ごめんくださーい、、」




恐る恐る声をかけると。店の奥から店主と思われる人物が現れた。身長は低く筋肉質で毛深い男だ。


ジッと見つめているとその男は口を開いた。




「なんだ、ドワーフが珍しいか?」




ドワーフ、名前だけは聞いた事がある空想上の種族、この世界にはこういった人々も生活していると言うことか




「いえいえ!そんな事ないですよ!武器と防具を揃えたいんですが、、」




「ふむ、、そんなひょりょひょりょじゃまともに剣も扱えないだろ?」




ごもっともです、、、コンビニ飯なんで包丁すら殆ど握りません、、、はい、、、




「えぇ、、」




「なら、防具は軽装で武器は短剣だな。短剣は軽くて手数が多いのがメリットだが長剣よりは威力が少ないのがデメリットだ」




「そして短剣の二刀流はその攻撃力をさらに手数を増やす事で補うことができる。


だが、二刀流のデメリットは軸がずれるから扱いが難しい所だな」




ドワーフはスラスラと短剣についての詳細を話し始めた。アニメや漫画などを語ると止まらない会社の後輩を思い出した。




「お前さんにオススメなのは短剣と動きやすくした小さめの盾って感じだな」




「扱いは物理攻撃の効くクレイスライムや単独行動しているゴブリンなんかで練習するといい」




いきなり魔物相手の練習とかハードルが高すぎる、、、




「わ、わかりました、、」




ふと目を逸らすと、部屋の隅に黒い外套がいとうが置いてあった。




「店主さん、あれはなんですか?」




「あぁ、あれか。あれは認識阻害の魔法が付与されている外套でなフードを被ると魔法が発動しする仕組みなっているものだ、少し値ははるがな」




あれは良い、俺なんかが魔物とまともに戦える筈もないし、見つからないに越した事はない、、、










――――――――――――――――――――――――――






「買ってしまった、、」




アルゴの店を出た春人はポツリと呟いた。




「だがこれは先行投資!死なない為の投資だ!」




などといいながら自分を誤魔化していた




「それにしても、、、真っ黒だ、、、」




見方によっては暗殺者に見えてしまうほどだ、先程も衛兵の人にガン見された、、、


早い所ギルド証をてにいれなければ!




そんな事を考えていたらすぐにギルドへと到着した




中に入ると掲示板に張り出された依頼を見る者やテーブルで酒を交わす者達など様々だった。カウンターに着くと受付嬢の女の人が話しかけてきた。




「どの様なご用件ですか?」




声は高くとても可愛い人だ。俺がロリコンだというわけではないぞ?まあいい




「ギルド証を発行したいんですが」




「ギルドへの加入ですね!ではこちらの用紙に記入をお願いします!」




元気のいい受付嬢は笑顔で用紙を渡してきた。




「わかりました」




用紙を見ると、名前、種族、主な武器やスタイルなどなど色々な項目があった。


先に装備を揃えておいて良かった、、




名前はハルトでいいか、相澤の方はゲイルのおっさんも呼びずらそうにしてたしな。


種族は人間、主なスタイルは短剣と小盾、あとはこの外套ぐらいか。




「できました、これで大丈夫ですか?」




「確認しますね!はい、大丈夫です!ハルト様ですね。新規のギルド証の発行には銀貨50枚かかりますが大丈夫ですか?」




「はい、よろしくお願いします!」




永久に使える身分証にしては安いのかな?と思いながら銀貨を差し出した。




「ありがとうございます。それでは発行しますので少々お待ちください」




ニコッと笑うと受付嬢は裏の部屋へと消えていった


数分もしないうちに受付嬢が出てきて




「こちらがハルト様のギルド証になります。ハルト様の身分証でもあり冒険者の証でもあります。再発行には銀貨25枚がかかるので紛失には御気をつけ下さい。」




と説明を続けた。




「冒険者のランクはSからHのランクがあり、ハルト様の冒険者のランクは一番下のHから始まります」




「依頼は一つ上までの依頼を受けることが可能になっており、ハルト様はGとHの依頼を受けることが出来ます」




「その依頼に設定された貢献度を貯めていき、ギルドから認められるとランクが上がっていくシステムとなっています」




「わからない点やご質問などはありまふか?」




噛んだ、この子噛んだぞ最後の最後に


スルーしてくださいと言わんばかりに睨んでいるのでスルーしよう、、、




「だ、大丈夫です」




などと、とっさに答えたが聞ける事は聞いておこう。




「あ、この辺りでオススメの宿なんかはありますか?」




「コホンッ、、ふぅ、、


それでしたら、ギルドを出て右に真っ直ぐ行ったところに、三日月亭という宿があります。値段も安く朝食もつくのでギルドのお仕事とも相性がいいですよ!」




茹でタコの様に赤くした顔を咳払いをして落ちつかせてから宿の場所を教えてくれた




この子面白いな()


そんな事を言ったら怒られそうなので心の内に秘めておくとしよう




「ありがとうございます、依頼は期限などもあるのですか?」




「期限のあるものもあれば、無期限でできるものもあるので確認しておくと良いですね」




「ハルト様でしたらぁ―――」




とペラペラと紙をめくる




「これなんてどうですか?」




【天命草10株 採取 無期限】と書かれている。傷薬を作る為の一般的な薬草の名前のようだ薬草の図とともに詳細が書かれている。多分最低難易度の依頼なのであろう




「ふむふむ、ではこれを受けていきます」




「かしこまりました、ではこちらの方で書き留めておきますね。無期限の依頼でしたら何の罰もありませんが、期限付きの依頼ですと物によっては過ぎてしまうと、ギルド証の凍結などもあり得ますので気をつけてくださいね」




「わかりました」




と笑顔で返しギルドを後にし、三日月亭を探すことにした




確か右に行って真っ直ぐだったよな


早く宿にいってゆっくり休みたい、、、




「ここか」




しばらく歩くとすぐに、三日月に猫の絵が書いてある看板を見つけた




中に入ると受付にいる少女がこちらを見た、あれ?ギルドの子と同じ顔?




「いらっしゃいませ!」




「すみません泊まりたいんですが」




「1泊銀貨1枚と銅貨20枚です。何泊しますか?」




んー、とりあえず銅貨も少し欲しいから一週間くらいにしとくか




「じゃあ7日でお願いできるかな?」




「わかりました!では銀貨8枚と銅貨40枚になります」




銀貨9枚を手渡すと銅貨60枚のお釣りが返ってきた。はじめての銅貨だ




「ギルドの子とはどんな関係なのかな?」




そう聞くと女の子は笑顔で答えた




「あ!ニーナお姉ちゃんですね!私の双子のお姉ちゃんです!私はミーナって言います、よろしくお願いしますね!」




「ん、よろしく頼むよ。俺はハルトだ」




「はい!ハルトさんですね」




そう言うと、ミーナが受付カウンターから出てきて部屋へと案内してくれた




「お部屋は二階の角部屋でお風呂は一階にあります」




「朝ごはんは、お庭の鶏さんが鳴く頃には出来上がるので一階にある食堂までいらして下さいね」




「それではごゆっくりお休みください!」




部屋の前に着き説明を終えるとニコニコしながら仕事に戻っていった




部屋に入りベットに腰をかけると、今日1日の出来事の濃さにため息が出た




「はぁ、、、、異世界かぁ、、、」




何で俺なんだとかを考えながら変えられない現実だという事を噛み締め


改めて最悪な誕生日だとため息をついて1日目を終えた。




寝ている「ハルト」の頬には年甲斐もなく涙の跡があった

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