第14話 間もなくゴング
トイレから戻った智ちゃんにポールのことを聞いてみました。
ここからのポールの発言は実際には智ちゃんに訳してもらっているのですが、面倒なので直接対話形式で書きます。
「智ちゃんはポールくんとどうやって知り合ったの?」
「えっと、私が去年王宮の近くを歩いていたら話かけてきたのよね。彼はT大学の学生で日本のことを勉強してるの」
・・・それにしては日本語ぜんぜんダメなのはどーいうわけだ・・とは言わない。
「ボクは日本の文化と経済にとても興味があるんだ。学校を卒業したら日本の企業に勤めて、いずれはトモコと結婚して幸せにするよ」
ほ~。日本の文化(やれる女)と経済(金ヅル)かあ。
なんにも分かってない智ちゃんはうれしそうに通訳していますが私はべつに同情していませんでした・・・というよりこのバカ女にもムカついてきまして・・。
中田さんもたまに口をはさんでいましたがけっして直接タイ語で話さず、智ちゃんを通しておりました。
私はタイ人と個人的な会話をするのが初めてだったので、ふと長年の疑問をポールに聞いてみたくなりました。
「ポール。僕が昔読んだ日本のコミックのなかでタイ人は全員ムエタイができるから、素手で戦争したらタイが世界を征服する・・てのがあったんだけど本当?」
ポールは例のアメリカ人をまねたような大袈裟なしぐさと、小ばかにしたようなにやにや笑いを浮かべながら
「もちろん本当さ。君たちはタイ人とケンカしてはいけない。ボクたちは素手で人が殺せるからね」
・・・この野郎、吹きやがって!という気持ちと・・・本当かな?というのが半々でした。
ところが、このあとポールが続けて言ったひとこと。これが私の闘争心に火を着けました。
「ところで日本人は全員カラテができるの?」
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