ぼくがかんがえるさいきょうのたんくすいっち~理想と現実~
くろまめ
たんくすいっち
■□■□■ 理想 ■□■□■
ピキ
ピキピキピキ…
まるで世界が破裂してしまったのではないかと思う程の激しい轟音。
その後に続く静寂が訪れたかと思えば小さくそれは鳴った。
まるで卵を割るかの様に悲鳴を上げる。
勿論それは卵なんて物じゃなく、聖別を受けたホーリーシールド、ナイトの愛盾である。
「ぐ…流石伝説の召喚獣バハムートのメガフレア… 竜王を冠するのがこれ程とは…。」
「おいおい、無茶しやがって。何でお前はいつもそうなんだか」
後ろから軽薄そうに声を掛けたのは戦士 。このパーティーのサブタンクを努めている。
「ナイトたる者、皆の前に立ち盾となりその剣を持って魔物に立ち向かうが務め!卿もタンクとして理解出来るはずだ!」
「かーっ、これだからお坊っちゃんは…卿とかやめろよ。背中がブリザド食らったようだわ。うへぇ。」
「今はそんな事論じてる場合ではない!早く次に備えなければ…!」
「だから落ち着けってぇ~ほら白ちゃんも泣いてんぞ?」
「この者に癒しを…!ケアルガ! ナイトさん…」
「エネルギーフィールド解析完了 地場展開するです! 野戦治療の陣!早くこちらへ来るです!」
「かたじけない。だが私がここを下がる訳にh…」
「だーから無理すんなって言ってんだろ。大人しく治療しとけ。盾だって修復しとけよ。【インビンシブル】だってそう何度も連発出来るもんじゃないだろう?」
「だ、だが…!」
「駄菓子も案山子もねぇよ。ここは俺に任せとけ。な?兄弟。」
「済まないっ!必ず…必ず戦線に復帰する!それまで頼む!…相棒」
一瞬、それは瞬きする程の時間呆気にとられた男はニカッと相好を崩す。
「ハハッ、やっと呼んだかよ。おう、任せとけ…相棒。」
スタッスタッスタと一歩づつ我が家の庭にでも向かう様な足取りで前に進んだ。
「任されちったからなぁ~、まぁ、たまには真面目にやってみますかぁ~。」
背中から重厚な存在感を醸し出す取り出し愛斧を構えた。
「さ~て、竜王だか何だか知らねえが俺の弟分可愛がってくれたんだ。覚悟は出来てんだろうな?」
普段の軽薄そうな物腰は鳴りを潜め、その身からは歴戦の戦士に恥じぬ気配が漂う。
「かかってこいやぁ~!
その時、影から何者かが動いた。
シュン シュババッ
「おい、忍者。何か言ってけよ。」
汚い。さすが忍者汚い。
「ハハハ!しょうがないにゃん!アイツが喋ったとこ誰も見たことないにゃん!あ、レイン・アロー!」
「そうだなぁ、あ!詩人ちゃん右羽根も頼むわ!」
「はいはい。お任せにゃん。でも、そろそろ竜ちゃんg…おお!」
「イヤッフゥー!竜狩りダゼェェェェ!!これがホントのドラゴンダイブぅぅぅぅ!!イエエエエェー!!」
「さすがにアレは俺も無理だわ…。」
「いつもはもっとまともにゃん…。ちょっとドラゴン相手でテンション上がっちゃっただけにゃん…早く正気に戻って…。」
「さっきから何バカ事ばかり言ってるです!さっさと殺るです!詩人ちゃんもキャラブレて語尾忘れてるです!鼓舞激励の策!」
「おお~いつも済まないねぇ学ちゃん。向こうはもういいのか?」
「それは言わない約束ですよおじいちゃん。…白ちゃんが看てるです。きっと何とかするはずなのです。」
「へっ!アイツがアレ位で参る訳ねえ!お前ら!それまでもたせんぞ!」
「「「「おう!」」」」
「…。」
「いや、だから…。」
ザッ
「皆!待たせた!もう大丈夫だ!」
「メインタンク来た!これで勝つる!」
□■□■□ 現実 □■□■□
「そろそろ交代でしょう~。」
「え?ちょ、今イベントだから無理。なんとかしてよ。」
「いや、無理無理!もうバフだってないんだから!」
「いや、でも俺だって忙しいし~。」
「いいからはよしろ!」
「へーいへいへい。分かりましたよっとぉ。」
「あー!またタイムカード忘れてるです!交代する時はちゃんとしろっていつも言ってるです!もう給料なしなのです!」
「え~、そりゃないよ~。」
~ 完 ~
ぼくがかんがえるさいきょうのたんくすいっち~理想と現実~ くろまめ @kuro-mame
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