第55話「部室とコタツ」
新聞部の部室にコタツが来た。
「どうしたんですか?これ。暖かすぎて家に帰れないんですけど」
「コイツがまたどっかからくすねてきたらしい」
「人聞きの悪ィことを言うな黒峰。ある取引をして得た正当な報償だ」
「お前はギャングか?」
「相手は教頭だがな」
「生徒と取引しちゃだめでしょ教頭.......ていうか誰かみかん買ってきて〜」
「先輩を使うな。たまには後輩らしくパシられろ春野」
「そう言えばクロ先輩太った?ウォーキング行った方がいいのでは」
「太ってねェ。それを言うなら久瀬、たまには頭じゃなく身体動かした方がいいのでは」
「いや俺は脳内消費カロリーハンパねぇから。フットワークの軽い春野が適役では」
「いや私のフットワーク別名マウント・オーガスタスですから」
「世界一の巨石じゃねェか。じゃあ俺はプリリンロックマウンテン」
「それ山じゃん」
「つーかお前等うるせェんだよ!誰でもいいからとっとと行ってこいや!!」
「あ!蹴った!!!今誰か私の足蹴りましたね!乙女の生足を!」
「下にジャージ履いてんの知ってんだよ」
「お前らいい加減にしろよ。誰のおかげでこの理想郷(ユートピア)を手にできたと思ってる」
「教頭だろ」
「もういいブチ切れた。表でろ黒峰。ついでにみかん買ってこい」
「それただのパシリじゃねーか!!」
「先輩ついでにジャンプも」
「春野テメーいい加減にしろよ」
「あ―――――!!!いやだ!無理やり引っ張り出さないで!だれかー!」
ガタン!バン!
一人机で記事を書いていた新谷さん(最初からずっといた)が立ち上がって言った。
「三人で行ってきなさい!!!」
「「「は、はい」」」
結局鼻水たらしながら三人で買いに行き、戻ってきたらなんと新谷先輩がコタツで寝てた。こ、こいつめ〜。
**
部室にこたつが来たことで部室にこもりがちになった我々。どうせなら記事を書いてくれと本日他校に取材中の部長・新谷先輩に頼まれたので「最近あったどうでもいいこと選手権」というすこぶるどうでもいい大会を開催することとなった。
「ということで第1回どうでもいいこと選手権を開催します〜、どんどんパフパフー」
「古い」
「なお二回目はありません。採点は1~10まで。最高点20点を獲得した話が優勝です。はい、まずは久瀬先輩」
「今朝まつ毛が4本抜けた」
「10どうでもいい」
「10どうでもいい」
「あっさり優勝させんな。あとお前らもっと俺に興味持て」
採点はもっと厳しくすることになった。
「じゃあ次黒峰先輩」
「俺か.....俺は、道端で見かけたババアの.....」
「ババアの?」
「.....」
「?」
「.....荷物を持ってやることができない」
「え!持ってやんなよ!」
「八割断られんだよ。最近は物騒だからってな」
「シャバダ――!!」
「え?何の音だ?」
「春野の涙だ」
「がわい゛ぞう゛ぅッづ!!全然どうでもよくないし...!」
「狂犬みたいなツラしてるから仕方ないな。10どうでもいい」
「ちょっと!!10なんてダメでしょ!1にしてあげてくださいよかわいそう!!」
「お前おれのまつ毛は10どうでもいいだったくせに何だこの差は!異議を唱える!」
「久瀬先輩のまつ毛は本当にどうでもいい」
「そんなに言うならお前のどうでもいいを見せてみろ」
「いやその前に俺のに点数付けろよ」
「どうでもいいこと...どうでもいいこと.....枝豆は大豆になる」
「「嘘つけ」」
「うそでしょ知らないの?久瀬先輩も?」
「オイ、それがマジなら枝豆を栽培するだけで家でつまみも冷奴も納豆も作れることになるじゃねェか」
「納豆は無理では」
「やるな春野。イグノーベル賞やるよ」
「いやこれ割と常識ですから!で、何点なんですか?」
「「8点」」
「意外とどうでもいいんじゃん...」
そこからは接戦が続いた。
「トイレによくある音出る機会を流水ボタンと間違えて押して焦る。止まんねェし」
「わりとよくある。6点」
「二郎系をずっと野郎系だと思ってた」
「輩が食ってそう。5点」
「6歳の時ホントにへそで茶がわくか実践したことがある」
「アホガキじゃん」
「親戚が沸いたな」
「面白い。3点」
「実は靴紐がイマイチ上手く結べねェ」
「あー。確かに毎度縦結びな気はしてました」
「惜しい。9点.....そろそろ尽きてきたな」
どうでもいいこと、どうでもいいこと、と三人で頭をひねっていると、壁のカレンダーを見た久瀬先輩が「あ。」と声を発した。
「俺の誕生日だ、今日」
「.......!?!?!?」
「まあどうでもいいが」
「「良くないだろ!!」」
その後、新谷先輩と佐藤先輩を呼び出してコンビニでスイーツを買ってプチ誕生日パーティをした。結論。どうでもいいことって意外と少ないな。
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