第41話「悪徳ファンクラブ」
新谷先輩からスイパラのチケットを貰った私、春野深月は今、二枚のチケットを手に泥棒よろしくコソコソやっていた。二年生の教室の前で。
(ふぁ―――!!二年の教室入りずらっ!!)
いや、これは二年生に限ったことではない。上下関係なく他学年の教室というのは入りにくいものなのである。そこへズカズカ入っていって後輩に絡んだり鞄を漁ってマンガを読み始めたりするほうがどうかしてるのだ。そんなどうかしてる片方を誘い出すことにこんなに難航している自分も、やっぱりどうかしてる。
(クッソォ……、新谷さんも久瀬先輩も他のクラスだし、黒峰先輩なんか爆睡中だし……気付けや!かわいい後輩のSOSに気付いて!)
「あれ?君一年生?」
「かわいい~」
「誰かに用事かな?」
「!!!」
センパイ ジョシガ アラワレタ !!
「ひゅぇ、あ、あの……!」
珍しく女子に囲まれた私はものの見事に狼狽した。三人とも可愛い。
だがしかし、何か様子が変だ。
「あ!もしかして佐藤待ってる?」
「さ、さとう?」
誰それ。全然知らない。
「最近多いんだよねぇ~!!女子からの呼び出し今日で3回目」
「いや、わたくしは」
「く~!憎いねあの色男。待ってて!今呼んできてあげっから」
「えっ!?いやいや大丈夫です!違うし!――あれ!ウソ行っちゃった!?何で!?」
何だか分からないが佐藤先輩とやらを呼びに行かれてしまった。まったく状況が呑み込めてない。
「ウチら実は佐藤ファンクラブでね!今会員募集中なんだぁ。あなたもどー?」
「いや大丈夫、というか、ファンクラブなのに呼び出してくれたんですか……?どういう心理状況……???」
「あー!別に独占欲とかないから!佐藤は皆のものだし」
「あ、待って嫌な予感がします。話を聞かない人種の気配がします!」
「あー。でも彼女とかできたらどうかなー。まあイジメやイビリの一つや二つくらいはしちゃうかもしんないなー」
「ねー?まあ女子の嫉妬とか災害みたいなもんでしょ」
「災害っていうかほとんど無差別テロなんですけど!!私佐藤さん知らないし!」
「洗礼受けたくないからって嘘つかないの」
「今洗礼って言いました!?」
「ほら、佐藤来たよ。何話せばいいかわかるよね?」
「いやまだ一文字も見当ついてないです!!えっ誰あれコッチくる人!?!?帰ります!!――何で離さない!?」
「言っとくけど、彼女になったりしたらコ●すからね」
「じゃあ呼び出さなきゃいい!うわ!マジで来た」
「僕のこと呼んでるのって、君?」
呼んでないし無駄にキラキラエフェクトすごい人キタし、っつーか黒峰!こんなに騒いでんだからいい加減起きろや!!!
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