第38話「ゲリラ豪雨と廃神社③」
「オイどうすんだオイ!ますます放っておけねェ状況になったぞ!!こっち見てんぞ!!?」
「青春したい春野と青春したかった飯森花子がリンクするのは不思議なことじゃねぇってわけか」
「どうやってあんなの引きはがすんだ!?いやその前に……盛り塩爆発させるような奴俺達でどうにかできんのか!?」
「せい、しゅん」
春野がつぶやき、久瀬がはっとする。
「そうだ。飯森花子に青春を感じさせてやればいい」
「は?ンなもんどうやって」
「JKにとって青春は恋だろ。つまり、恋人的シチュエーションを作れ」
「作れって……あぁ!?俺がやんのかよ!!ふざけんな!」
「春野が心配じゃねぇのかお前は!」
「序盤で逃げ出そうとしてたやつの台詞かそれは!?」
「いいから行ってこい!」「あっ、てめ」
押し出されて春野の傍に飛び出す格好となった俺は、改めてそいつを見下ろして鳥肌が総立ちになった。
つなぎ目は分からない。
だが、春野の首の裏から伸びた両手が、そのまま抱き着くような形で春野の肩に覆いかぶさっている。
「は、……春野?」
「ん………クロ先輩?」
どうやら自我は失ってないらしい。
「なんか突然めちゃくちゃ眠くて……ふあぁ、私なんかしゃべってました?記憶が………すぅ、」
「おい!オイ寝るな!!死ぬぞ!!!」
「いや雪山じゃないんだから……!てか先輩の声うるさくて寝れないし。ガクガクしないで、吐く」
「黒峰」
久瀬に呼ばれて振り返る。
「壁ドンだ。今すぐやれ」
あとで久瀬を張っ倒すと胸に決めて、春野の顔の横にダンッと手をつく。寝ぼけ眼がすぐ近くでぱっと開いた。
「な、……なんですか急に。びび、びっくりした」
「………飯森」
「春野ですけど!?」
「飯森」
「春野だって!!誰それ!?」
「お前、男に迫られて今どんな気持ちだ?」
「え?」
「嬉しいのか?女はこういうの好きなんだろ。久瀬にもこうされたいんだな…?ほら、とっとと答えろ」
「私はビッチか!?好きなわけないでしょ離れろや!!」
「え」バッッチーン!!!!
(……おい、殴られたぞ)
(おかしいな。アテが外れたか)
(お前……お前ほんといい加減にしろよ?後で同じ強さでひっぱたくからな)
「まったく、突然のドSキャラとか意味わかんない。」
まだぶつぶつ言っている春野。
チラ、チラ、とこちらによこす視線が熱を帯びたのは、その時だった。
「そ……そういうのは、久瀬先輩にしてあげてくださいよね………!!」
「「…………」」
――飯森花子、腐女子じゃねェか!!!!?
***
「黒峰……お前、放課後新谷と喋ってただろ。ずいぶん仲よさそうだったな」
「そんなことねェよ」
「ダメだろ。お前は俺のもんなんだから」
ドンッ
「ぴゃああああ!!そうそうそうそう!壁ドンは本来そういうものであるべき!!独占欲が!垣間見えてこそ至極!もっとください!」
「——そういうお前だって、女にチヤホヤされて浮かれてんじゃねェか」
「何だ、嫉妬か?かわいいやつだな」
「は?殺、……………嫉妬なんかしてねェよ!バカ!」
「はぁぁぁぁん!かわいい!!クロ先輩そんな強面のくせに久瀬先輩の前だと乙女になっちゃうのかわいいすぎる!次!攻守交代でお願いします!」
「——おい、なあ待てよ黒峰!」
「触るんじゃねェ、尻軽が」
「ッ!……あいつの家に行ったの怒ってんのかよ。だったらアレは」
「……お前がまだあいつを好きだって、そんなのどうでもいいと思ってたが……やっぱり、辛ェよ」
「ああああああ無理!設定が!!見える!!失恋につけ込んでモノにしたけどやっぱり心ごと欲しくなっちゃったパターンだ!!そうなんでしょ!?」
「あいつのことなんてもうとっくに忘れてる……!今は、お前しかみえてねぇよ」
「きゃあーーーー!もうとっくに心もモノにされてたぁぁ!!!ときめきのビックサンダーマウンテン!!!!」
「……久瀬」
「さあ!!!ここで!ハグを!!」
「「……………」」
ぎゅ
「あ、尊い、召されるわ」
サァァァ……
「———ん?あれ、私今まで何やってたんだっけ?……て、げーッ。何で抱き合ってんですか二人とも。それなんて病気??……てか、雨やんでるじゃん、カラオケ行きます?あれ、ちょっとせんぱい、帰るの?ねー!」
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