第3話「拉致される」
頭に衝撃を受けて目を覚ますと、何やら状況がカオスだった。
「これのどこが虐めてるってんだ。あ?」
先程私を探していた茶髪ヤンキー。誰。
「まあ落ち着け黒峰。後輩には優しくするもんだ」
メガネは掛けてるし真面目そうだけど煙草の匂いがする黒髪ヤンキー。誰。
「せ、先生を呼びますよ!」
メガネの男子。誰。
えー。こんなことってあるんだろうか。何やら私のことで言い争ってるっぽいのに当事者の私が全然誰のことも分からない。全員初対面。
ちょっとうたた寝していただけなのにどうしてこうなった。
「あの.....」
皆さんどなたですか、と言いかけて止める。
三人中の二人が高確率でヤンキーなんだからもうとるべき行動は決まっている。
私は立ち上がって(健全そうな)メガネの後ろに回った。
「た、助けて、この人達……っこわい!」
必殺!ぶりっ子危機回避大作戦!若干棒読みになってしまったけど、入学式までに読んだ数種類の少女漫画達が私の背中を後押ししてくれている。
―――男子は!頼られるのが!好きなのだ!……たぶん!!
「は、春野さん!!や、やっぱりこの人たちに苛められてたんだね!?」
「いじ……?あー、うんそうなんです。突然……あのー、パンチを」
「パンチを!?」
「あっいやパンチじゃなかったかも……とにかくタスケテー」
寝起き頭でしっちゃかめっちゃかなことを言っていると、黒髪ヤンキーと茶髪ヤンキーが私の左右の腕を掴んで引っ張った。は?痛いんですけど?イラリとするのを内心のみに留め、彼らを見上げる。
黒髪眼鏡が小声で言った。
「パンチって言ったら、昨日の校舎裏。お前のパンチは素晴らしかったな」
「ああ。あれはいい腕だった」
揃ってニヤリと笑う。私は瞬く間に青ざめた。フラッシュバックする昨日の記憶。
咄嗟に茶髪ヤンキーの腕をとり、自分の首に巻き付けた。
「だ……誰かタスケテー!」
そのまま背中で彼を押すと(意を汲んでくれたらしい)私のことを引きずりながら教室の引き戸へと向かってくれた。いいヤンキーだ!いやヤンキーに良いも悪いもいないけど。
「は、春野さんを離すんだ!」
と追いかけてきてくれる健全メガネ君。ありがとう!だけど今はほっといて!
その時、私達と彼の間に入った黒髪ヤンキーが、にっこり笑って彼に何か囁いた。彼はもう追いかけてこなくなった。
「お前アイツに何言ったんだ」
「……ちょっとな」
(あ。こいつは悪いヤンキーだ)
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