第4話 異世界人 ファーストコンタクトはお大事に
二人は、何とか山から下り、ふもとの村に到着した。
その時である。
「あんれえ、誰だ、おめえらは。見かけない顔だな。」
遠くの方から農民と思しき男性がやってきた。
「ああ、ええっと、私たちは、その…」
考えていなくて詰まるフェリックス。
「神だ。」
アンリが言う。
「はえー、神様だか。おら初めて見ただ。」
「ええ、それ言って信用してもらえるのか?」
驚くフェリックス。
「ふふふ、僕の能力の数々を見せつければすぐに分かってもらえるさ。見てろ。」
そう言うとアンリは手を掲げると、
掲げると…
そのまま立ちすくんだ。
「僕、元々派手なことはそんなにできなかったね…」
「じゃあ何ができるんだよ。」
フェリックスはツッコミを入れた!
「感知。あらゆるものを感知できる、広範囲感知。大体地球であれば6分の1周ぐらいの範囲で使えたな。」
「で。それは見えるのか?」
「見えません。」
「あー、話してるとこ悪いんだげんども、要は何をしに来ただ?」
と農民が救いの手を差し伸べてくれた。
「山で、道に迷ってました。で、降りたらここに。」
「まー、なんだ、帰り道が分からんゆうこったら、もう遅いし、うちに来るべ?」と心配になったのか声をかけてくれた。
「ありがとうございます。あなたはまさに、救いの神…!」
「いや、神は我々だぞ。」
アンリはそこは譲れないのか、つっこんだ。
「まあ、もう暗くなりかけてるしな。野宿してたら危ない目に遭うかもしれんしなあ〜。」と言ってアンリは腕を自分に回す。
「だーれが、お前になんか手を出すか!妄想も大概にしとけよ。」
フェリックスはなんだか、ゴキブリを見るような目でアンリを見た。
「ええ、ベッピンさんでねえか。もったいないでねえの。」
農民はフォローする。
「まあ、危ない目に遭うのはフェリックスだがな。」
アンリは笑い飛ばして反撃する。内心は傷ついていたが。
「んじゃ、おいらはもう少し仕事があるんで、しばらくここで待っててくんろ。」
そう言うと農民は畑の方に向かっていった。
「今の僕は、一応これでも美少女なんだけどな。」
「ただ魔法で変身しただけだろ。女装と変わらねえよ。」
「人間になる前はどっちでもなかったけどね。要はどうとでもなるんだよ。神には関係ないことだしね。あ、変身で思い出したが、自分、変身はできるんだよ、ほら。」
と言うとアンリは大きなヤマネコに変身してみせる。元の髪と目の色と同じオレンジ色の毛並み、金色の目。
「もしかして、そっちが本体だったりする?」
「間違ってはいないな。神は概念そのものだからね。何の神なのかで形が決まるとも言える。」
「じゃあ自分もそういうのがあったりするのか?」
「これから決まるさ。おっと、作業が終わったみたいだぞ。」
見れば農民さんは収穫したいくつかの芋を籠に入れて背負っていた。
「いくつか運びましょうか?」とフェリックスが申し出た。
「ああ、ありがたいべ。さすがに一人で運ぶのは骨だべな。」
フェリックスとアンリは芋を手に持てるだけ持って運び、農民の家に着いた。
「お世話になります。」
「こちらこそ、こんなボロ屋で申し訳ないんだな。せっかく神様に来てもらったんのに。」
「いえいえ、今は何もこちらから出せるものはないのに、申し訳ありません。」
「困った時は助け合いって神様の教えにもあるんだべな。まあその神様はもういなくなっちまっただが。」
「いなくなった?」
二人がハモる。
「あ、いや。なんでもねえだ…気にせんでくれ。飯は少ねけど、今から作るで、待ってくんろ。」
「あーいや、我々飯は要らないんだ。森から生命エネルギーを吸収して賄えるからな。」
とアンリがここで初めて聞く話をする。
「そうなのか?」
「うん、まあはじめは辛いけどそのうち慣れるさ。」
「まだ他にも言ってないことがあるな。さては。」
「あるかもしれんが、思い出せん。もう疲れたから寝る。」
フェリックスはやれやれと呆れつつ、自分も歩き疲れと驚き疲れが溜まっていたのか、寝床に横になるや否や寝入ってしまった。
こうして二人は初めての異世界での一日を終えたのだった。
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