くどくど

尾巻屋

くどくど

一人の存在を世界に知らしめるには、

あまりにも広すぎて


でもみんなが幸せになるのには、

あまりに狭すぎる世界で


つまらねえ

売れねえ

やめちまえって言われ続けて


降り注ぐ星空の光さえも、

こんな自分には勿体無いような気さえして来て


街中で聞こえてくる笑い声が、自らに向けられた嘲笑のように聞こえて来た

見知らぬ誰かの生きる背景にさえなれない自分が嫌いになった


身を潜める

口をつぐ

楽しそうな幸せを

台無しにするまいと遠くから眺めて

縁という縁が怖くなって


喰いしばった歯に頬を伝う涙

笑いたい心に蓋するのは虚ろだ


泣きたいときに泣けたならば

どれほど楽だろうか

それを許さぬ社会が

ひ弱だ情けないと言うから

いつしか表情を忘れたのだった


とっくに崩れ去った自尊心の欠片と

結局選ばれることのなかった自分と

尽きろ尽きろと願い続けたこの命




広くて狭い、この世界で

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くどくど 尾巻屋 @ruthless_novel

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