Code:XVII 古の罪状
煤けた雲が低く靡き、空を曇天のままに微かに橙に染める頃。ヘリポートに一機のヘリが着陸した。漆黒の体躯を軽やかに操りゆるりとした着陸をする様は、まるで天翔ける猛禽類の様であり、その内部から大地に降り立った三つの影は、正しくその形容に足る力を持った存在達だった。
「アリス、歩ける?」
「痛いよぉ……肩貸して李雨」
「仕方ないわね、ほら」
「絶対アイツ許さない……っ! アリスの足を捻じ曲げるなんて意味わかんない!」
「キリアはそう言うやつよ、ね?蓬」
「脳筋の習性を一々覚えるほど暇ではないけれど、まぁその通りね」
ヘリのメインローターの駆動によって翻る三色の髪は掲揚された旗の様に激しく凪ぎ、同時に衣服の裾も無遠慮に騒がしている。血濡れの少女と義手を黒く焦がした女性を引き連れる無傷の女性。三者三様のその姿を見慣れた景色の様に見るウロボロスの職員の中、少し離れた場所に嫌に目立つ見慣れない集団が居た。
「……ちょっといいかしら?」
「はい、なんでしょうか」
視界に入った異物感に眉を顰めた蓬が近くに居た男性に声をかける。
「あの集団、見慣れない若い子が多いけれどどうかしたのかしら」
「あぁ、あれですか。本日付でウロボロスに正式配属されることになった新規職員達です。勿論、ここに居ると言うことは裏です」
「……あぁ、艾が言っていたあの」
「はい。昼頃に入所式が終わり、今は各施設の案内をしているところです。明後日にはあの中で部隊編成を決めるための実技訓練を行う予定です」
「私達も参加するのだけれど、配置場所は決まっているの?」
「少し待ってくださいね…………あ、あったあった。もう決定しています。蓬さん周辺の人ならば、李雨さんは暗殺部隊と長距離狙撃部隊、アリスちゃんは工作部隊、カルミアさんは医療薬学班、篝火さんは技術班ですね。蓬さんと艾さんは特殊強襲部隊です」
「……なるほど、もし手が空いているのなら後でそのデータを私達にも渡して欲しい。あの子達にも共有しておくわ」
「わかりました、後でパーソナルデータベースにアップロードをしておきます。砂丘の鷹で見てください」
「了解、ありがとう」
電子パネルを見ながらそう言った職員との会話を終え、待たせていた李雨とアリスの下に戻る蓬。一体何を話していたのかと訝し気な顔をする二人に、蓬は淡々と共有するべき情報と今後の予定を脳内で整理し、口を開いた。
「待たせたわね、早速だけれど今後の予定についてを話すから歩いたまま聞いて頂戴」
「歩きながらなんて珍しいわね、そんなに予定がカツカツなの?」
「アリス足痛いんだけどー」
「さっさと結果報告に行きたいのと、貴方達二人を医務室と修復室にぶち込むためよ。私達は何時戦闘になるかわからないのだから、出来るうちに万全の状態に戻して欲しいのよ」
「なるほど、で?」
「今日は私の報告と貴方達の修復修繕が終わり次第拠点に帰るわ。明日は一日フリー、明後日にはウロボロス新人実践演習に教官側で参加するわ」
「実践演習って?」
「今年入所した新人を部隊や課毎に実践的な演習・訓練をして、その結果で部隊の割り振りをするためのものよ。貴女は工作部隊よ、アリス。李雨は暗殺部隊と長距離狙撃部隊担当」
「私は二カ所も担当するの?」
「一つ一つの作業量はその分少ないから安心して頂戴、流石に一人だけオーバーワークさせたりしないわよ」
「そう、ならいいわ」
「工作班は何をすればいいの?」
「アリスは爆薬を中心とした工作技術を新人に教えつつ実践に近い破壊工作作戦を行って各員の適性や能力値を割り出す。李雨も同様に」
「了解」
若干慌ただしい人間が目に付く施設内の廊下を歩く。やや歩き方に不自然さを残すアリスは蓬と李雨の速さに食らいつこうとしているからか、額に汗が滲む。見かねた李雨が再びアリスの肩を持とうと傍に近寄るも、そのアリスは小さな手で制して前に進む。ヘリ機内で粗雑な鉄パイプ製の添え木から、医療用の添え木に替えられたアリスの足は戦闘直後よりも治癒している。が、無理矢理歪に拉げられた足は例え万能の物質によって修復促進をされていようと万全にはならない。神経系は今だ傷付いたままで、筋繊維もズタズタになっている。それを短時間に修復しなければ収入に影響を及ぼす身の上、それを可能にするのは彼女らにとっても業腹だがウロボロスにおいてはカルミアしか居ない。あの軽薄で屑で全てを嘲弄している男だが、しかし何処かで培ったその技術能力は本物であり、余人では到底至る事の出来ない神域に手をかけている。とりわけ薬品類の扱いは他の追随を決して許さない。それは、彼を最もよく知る李雨を筆頭に、ウロボロス全体が理解している事だった。それと人間性の是非は別ではあるが。
歩みを進めていた蓬が止まる。その
「私はここで報告をする。李雨は篝火に義手の修復とメンテナンス、アリスはカルミアの処置を受けてくる事。良いわね?」
「わかったわ、報告お願いね?」
「アイツに治されるの好きじゃない……」
「我慢なさいアリス、終わったら明日は休みなのだから」
「はぁーい……」
「それじゃあ蓬、また後で会いましょう」
「えぇ」
李雨の言葉に一つ頷いた蓬が、目の前のエアロック式扉の錠を開けその先に消えていった。李雨が最後に見た彼女の表情は依然として不動。であるのに、李雨にはその顔が何故か、認めがたい事実を突きつけられた人間の顔の様に見えた。
「どうしたの?」
「……いいえ、何でもないわ」
乾いた抜ける音が空しく空回る。暗室の様に暗い部屋はパソコンのモニターだけが光源になっていて、巨躯を椅子に沈めた男の白紙の髪に極彩色を滲み込ませていた。肌を突き刺し呼吸を白磁に燻らす室温は、しかしその部屋に居るただ二人にとっては然程の問題にもならなかった。夥しい機器の冷却用に下げられた温度は、彼と彼女以外の入室を拒む様に佇んでいた。彼女――――蓬は、艾と共有しているデータベースに互いにリンクし、今回のミッションの顛末や報告を映像と共に確認していた。
ジッ――――チッ――――ジッ――――とノイズが走る。凡そ氷点下の乾いた空気に、その揺らぎの音は不快なほど良く響いた。
「…………なるほどな」
ギ――――と、椅子を軋ませながら艾は体を背後の凭れに沈める。目は緩く閉じられ、指を組む手は膝の間で無為に宙に吊るされたまま、虚脱感をその姿に現していた。
「ICOへは以前よりその活動根源の不明瞭さに対して懸念を抱いていたが、しかしそれは見誤っていたな」
「地下に巨大な空洞がある時点で嫌な予感はしたわ。でも、その存在は問題じゃない。人体実験もUA-275を用いた研究も想定の範囲内、そんなものアングラの人間なら大なり小なり手を出しているもの」
「そうだな」
「問題はその奥にあった物」
双方の視覚領域がリンクし記憶領域から引き出し映し出されたのは、400分隊と
無垢なる容器。生育された胎児。或いは人類の見誤った世界の産物。そう形容される代物が、あの忌々しい組織が保有していた建物の地下に大量に鎮座していた。
この世におけるアンドロイド或いはオートマタと呼ばれるものは、大概にして機械人形――――人造人間の形を持つ存在を指す。旧時代の創作作品や実際のロボット工学によって生み出された物から飛躍的に機能向上された物が現代でも生産され、生活補助や生産活動に従事しているのみならず、軍事利用もされている。人の外見を忠実に模倣するアンドロイドも存在すれば、目的とされる機能を精鋭化させたがために、辛うじて人の形を模倣しているだろうと思える風貌の物も存在している。前者は生活や生産目的、後者は軍事目的が主流であり、人々の生活に溶け込んでいる。UA-275への曝露耐性も高く加工されているため、危険作業への従事も頻繁に行われている。現代のアンドロイドの存在は、そう言った人間を補助する目的の色が強い。
それに対して、現代からおよそ300年前にある研究者によって、現行のアンドロイドが源流とする機械人形とは異質なアンドロイドが秘密裏に造り出されていた。
「アンドロイドは機械で全てを構成された存在。そこに生命の何たるかは存在しないし、自我の様な物は結局AIによって発生する電気信号の集合でしかない。結局人間の模倣が出来ても人間にはなれない。機械は何処まで行こうとそのボディは機械であって肉の塊にならない。人工皮膚が人以上にきめ細やかで美しくても、それは人間になった証明ではない」
蓬の瞳は開いていながら何も捉えていない。虚空が視界を埋めながら、
「じゃあ私達は、そのアンドロイドと言う概念に収まるべき存在か否か」
「否」
低く、一切の反論も許さない昂然とした声色で艾が答える。
「俺達は機械に非ず、しかし人にも非ず。擬きと擬きが入り混じる半端な存在だ。そもそもの基盤が本来アンドロイド、或いはオートマタと呼称されるには歪すぎる」
「だから私達はその歪な群を殺した、尽くを殺した。殲滅し、救済した。では何故あの地下施設にその残滓が残っているのか。それが私達の前に現れたのは、終わったはずのタスクが生き残っていたことの証左よ」
「ではどうする、お前の機転であの未完成品は全て土中に消えたが、これで奴らが抹消したはずの技術をどこかで手に入れたか、もしくはそれに到達しうる段階にまで研究を進めた事を俺達は認識しなくてはならない。俺達に放置の選択肢は初めから無い」
「だろうよ、そうでなければあ奴の慈悲無き最期の末路もお主らの永きに渡る鏖殺の数々も馬鹿げた芝居になるからのぅ」
二人の視界が記録再生状態から、現実空間の視覚に戻る。其処に居るのは二人のみ、それなのに聞こえる酷く若い鈴を転がしたような、それでいて数世紀を容易く生きた巨木の様な荘厳さを含んだ声が聞こえてくる。その声を蓬と艾は知っている。このアンドロイド二人と、艾が許した者のみしか入室できない部屋に無断で容易に侵入できる者を、二人は知っている。
どちらが言うでもなく、同時に椅子を回転させ、死角となっていた背後へと体を向ける。
「久しいな艾、蓬。こうして直接会うのは150年ぶりか?」
灰色がかった地に着く程のスーパーロングヘア、右目が隠れ左側頭部で一つ髪を結い、蓬と同様の目尻の紅隈がまず目を惹く風体。ベルトで固定した着物を着崩し、その上に上着を羽織ったちぐはぐな恰好。そして左耳のピアスの数々と首から胸元の紅い紋様。あまりにも統一性の無いその姿は幼い少女のそれであり、口から吐く言葉の一つ一つは久遠を生きる老獪のもの。そんな人かどうかも怪しい少女の姿の何かは、無遠慮にも机の上に置かれていた書類を下敷きに座っている事に、しかし驚く者はいなかった。
「…………
「儂と主らの仲じゃろ、無粋な事は言うまいて」
「貴女神出鬼没過ぎるからこっちの調子が崩れるのよ、少しは自重して頂戴」
「ラヴィの小僧にバレると色々と面倒臭い、そも用向きは主らにしかないからな」
「……で、何の用だ? ちゃちな内容ならさっさと帰れ」
「つれない奴よの艾、儂と主の間にそう邪険にする壁は無いであろう?」
茅と呼ばれたその少女は、からからと笑いながら机から降り、至って自然な歩みで艾の膝上に腰掛ける。脇にあった彼の腕を自身の体を安定させるベルトの様に体に回すと、満足気な顔で再び口を開いた。
「で、用件であったな」
「何を当然の様に俺の上に座っている」
「古今東西様々な椅子を座ったものだが、最も儂が気に入ったのはお主の膝上。誇っていい」
「戯けた事を」
「まるで幼子の様よ茅、貴女自分をいくつだと思ってるの」
「姿形を見れば然して問題もあるまい。それよりも話す事はある」
「……はぁ、で?」
「うむ、用件。今しがた主らが語っていた件そのものに関するな」
その言葉に、毒気を抜かれた様な眼になっていた蓬と艾の瞳が、鋭いものに変化する。先程の話、つまりはアンドロイドに関する情報。ただのアンドロイドではない、禁忌とされその製造法の一切を抹消されたはずの、ただ二体しか存在しないはずのそれ。今になってその話が再び懸念を吊り下げて現れた上でのその茅の発言は、二人の神経を否応なく過敏にさせた。
「人間ベースのアンドロイド、オートマタ。それらはあまりにも業が深いものと判断された。赤子を赤子たらしめる以前、遺伝子情報体を造られた肉体と言う匣に流し込み、機械でありながら人間としての側面も露出させ、機械故の人間を超えた技能に、人間故の複雑で柔軟な思考と不気味の谷の克服を成した。だがそれは、十全の製法ではない」
茅が懐から煙管を取り出し、小さな携帯式の箱から刻み煙草を丸め入れるとマッチの遠火で火を点け、紫煙を吐き出した。溜め息にも似た煙の吐き出しは、憂慮していた見えない脅威に対しての、若干の煩わしさを含ませていた。
「大抵が不完全なまま生育し、煩雑な思考回路と機能不全のAIで論理異常を引き起こす。そうして自我は崩壊し、まともな運用もままならない。しかしそれを一体作り出すだけでも莫大なコストが発生する。ならばどうするか?」
煙はあまりにも貧弱に、凍てつく空気に消える。一縷の末路すら残されずに。
「耐久試験や性能実験の試験機、精々がその役目。欠陥品の躯の上に完成したプロトタイプとなったのが蓬、そして事実上の最新機に自ずからなったのが艾。主らは現存する原初にして最新の存在だ」
「誉れも何もないわ。私達は歴史の上の黒点、生み出されるべきではない存在だったのよ」
「どうやら人間共には失われた偉大なる功績らしいがな。全く……何十世紀と歴史を紡ぎ、偉業と持て囃される事を成し遂げた者が存在していようと、本質は一切何も変わらない。大罪を背負い生きるのが人間だからと言えばそこまでだがのう」
手を覆い隠すあり余った袖から小さな掌を出し、頭上にある艾の頬を撫でる。その手つきはまるで息子を慈しむ母の様にも、愛しき男を撫ぜる女の様にも、罪人の告解を聞く修道女の様にも見えた。
「主らは大罪の具現化でもあり、また大罪を背負わされた者。だからこそ主らはその贖罪として同胞を屠り、そしてその一切の痕跡を排した」
「あぁ」
「だが」
室内冷気が更に肌を刺す。寒さは然程感じない。だが、設定された空調よりもその人工皮膚面上で感じ取れるそれは、最早人間が生きるためのそれではなくなっていた。トリガーは疑うまでも無く茅の言葉。まるで人間と言う種族の罪状を読み上げる審判の様な言葉が、人間の存在しない、させない空間にこだます。
「主らと同様のアンドロイドの製法が、根絶したと思えたその技術と知識が、まさに今復元されんと動いている。それもかなり進んだ状態に」
「……なんだと?」
「残念ながらこれは真実じゃ、艾。それもあまりにも近い場所でそれは進行している。体を蝕む病魔の様に、静かに、確かに。人の到達するべきではない領域に再び手をかけようとする者が、この世界に残っている」
「やはり今回のミッションで見たあれはその一端だったのね」
「……やはり取りこぼしがあったのか、完全なるアンドロイドとして作られた俺がこのざまとは」
蓬と艾、両名が深い嘆息を吐きながら背凭れにゆっくりと体を沈める。過去に屠った自分たち含めた負の遺恨、それが再び現れ、その原因の一端は自身らにあるとくる。なれば、機械と言えども気重い精神状態となるのはそう難しい話ではなかった。それを知った上で、茅は続ける。
「さらにもう一つ、主らは与り知らぬことであろうことが一つ」
「……与り知らぬ話って?」
「主らがあの施設を殲滅破壊を成したあの時、全ての個体を破壊した。相違無いな?」
「あぁ、間違いない。データベースは破壊されていたが、俺達の記憶領域に残る個体はすべて破壊し尽くした」
「だろうな。だがここで一つ、主らは見落とした」
「一体何を?」
「艾が事実上の最新個体、成功例としての個体として最も新しいのは最早言うまでもない。だが、艾より前の個体。ある二つの個体が主らの行動を感知し、事前に個体情報を改竄し逃亡した」
「待て、俺以前の個体だと? それならば俺が知らないはずが――――」
「特異体」
頭上から降りかかる怪訝な声を、華奢な掌で制す。艾より幾分か明るい紅の瞳を細めながら、煙管の煙草を傍の灰皿に落とす。ジッ、と。小さく唯一の熱源が消える音がする。
「蓬や艾。主らの様に成功例かつ特殊な個体は実は他にも存在していたようだ。儂が視た過去の記録ではな。共に性別は女個体、そして単騎での戦闘能力や演算処理能力が比肩無き者になっていると言う」
「何故秘匿した、全く必要性が無い」
「あったんじゃよ。その個体があまりにも人格面での問題があったのでな」
「それはAIの異常じゃないのかしら」
「残念ながらそれは人間と言う種族には十分あり得る人格問題、失敗機と判断するには惜しかった様でな。正常な状態になるまではその存在をデータベース上には載せなかった」
「……その個体情報は?」
「期待には沿えん、その情報もかなり破損していたからな。だが同じ世界には生きているだろう。蓬も艾もその特異体も例外無く、主らアンドロイドは戦う事こそが本懐だからの」
「…………」
「頭の痛い話ね……ただミッションの報告に来ただけなのに」
「相変わらずの傭兵業か? 以前の様にウロボロスに属せばもう少し楽であろうに」
「組織所属は艾だけで十分、私は私で守るべき場所があるの」
「難儀じゃのう」
「話は終わりね。艾、上への報告は任せたわよ」
「あぁ、明後日の新人の実践演習参加も頼んだぞ」
「私と貴方は同じだったわね、まぁ程々にやるわ」
蓬が立ち上がる。軋む音を出す椅子から重々しく体を持ち上げ踵を返すと、部屋の出口まで歩き進む。そこではた、と足を止め、何かを思い出したような顔で振り返った。
「そう、もう一つ言っておくことがあったわ」
「……?」
「ICO幹部、UA-275を用いた研究の果てに超能力に酷似した力を得ていたわ。現状判明しているのは三つ。キリアの身体強化、ジリアの氷結、ペンタリアの雷電。把握をお願いね」
「……ランヴァルトに伝えておこう、カルミアにもな」
「お願いね、それじゃあ」
そう言って、蓬は部屋を出ていった。
「ほう、あの
「予想できる範囲ではあったがな」
「それでも尚、主らには及ばぬだろうがな。特に艾、お主には」
「さぁな、実際に相対し全力で当たらなければそれもわからない。俺はただの兵器に過ぎない」
「人を超えた力を持った人間であっても及ばぬ力……いやはや、ロストオーバーテクノロジーでありながら恐ろしい。だからこそ儂はお主を気に入っているのだがな」
「いい加減降りろ、作業の邪魔だ」
「その腕と作業効率なら問題ないじゃろう? 暫くお主の部屋に厄介になる、ランヴァルトに見つかると面倒なのでな」
「……勝手にしろ」
「くかか、よい。我が最愛のアンドロイドよ、今は束の間の安息を楽しもうか。いずれ来る災禍は、その時考えればよい」
「どういうことだ」
「気にするな、老婆の戯言。それより今は儂を愛でろ。久しいお主の肌が恋しい」
「…………はぁ」
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