第2話:禁忌のリセットボタン
「つまり記憶を持ったまま過去に戻るってことですね?」
一通りの説明を受けた俺はもう一度老人に確認する。
「そうだ。お主が事故に遭った直後の4歳のころまで戻す。そこから記憶を引き継いだ状態、現代で言う強くてニューゲームというものじゃな。ただ、スキルとステータスは当時の状態に戻るから注意じゃ。あとは今までの過去を上書きしていけばいい。この世界はなかったことになり、ここの記憶を持っているのはお主だけ」
ここまでの話を聞くと完全にゲームのリセットボタンを押してデータを上書き保存していくような感覚だ。
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「もう一度問う。本当に巻き戻すぞ」
老人は真剣な声で聞いてくる。
「構いません。ここに悔いは・・・あるとすれば唯一俺に良くしてくれた両親とあなたに恩返しができてないことですね」
「それでは始めるぞ。目を閉じてくれ」
俺がそっと目を閉じると、老人が呪文を唱え始めた。少しずつ体が重くなり始め、ひどい耳鳴りが起こり、頭痛に襲われ、意識を閉じざるを得ない状態になった。
「・・・・・・後悔しないように生きなさい。次の”スキルマスター”よ」
そんな声が聞こえた気がした。
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目が覚めると白い天井があった。どうやら本当に戻ってきたようだ。ここは首都の病院だったはず。カレンダーに目をやると2000年7月20日。確かに16年くらい戻っている。とりあえずステータスを開いてみることにした。
__ステータス_______________________________________________________________
EXP:1,854 NEXT:3,200
筋力:23 精神:22 魔力:43
俊敏:32 知力:162 ボーナス:なし
器用:16 体力:28
スキル
『コンピューター:LV:1』(引継ぎ)/『心理学:LV:1』(引継ぎ)
『投擲:LV:2』
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やっぱり全体的に下がっているようだ・・・が、記憶を引き継いでいる分、知力は下がってないみたいだ。一通り確認したのでやることを決めなくては。前回、つまり戻される前の人生(以降元√)では後遺症のせいで確か6歳までは病院生活、8歳までは松葉杖とかを使っていたはずだ。となると優先順位としてはこの後遺症期間をどれだけ短く、有効に使うかだ。この世界は何でもスキルで回っている。やり方によってはこのベッドの上の1畳程度の範囲でいろいろと習得できるかもしれない。よし、それからやろう。
「おはよう。空」
個室のドアが開き、中にお母さんが入ってきた。16年前と言うだけあって若い。
「あ、おはようお母さん」
「お母さんだなんて、いつもは「ママー!」って言ってるのに急にどうしたの?」
あ、さっそくやってしまった。お母さんにとってはあの頃の俺のままだから違和感しかないのか・・・。
「いや、あのね、お願いしたいことがあるから改まってみたの」
「そうなの?言ってみて?できることはやってあげるからね」
どうにか誤魔化せたようだ。さて、ここから何を頼もうか・・・。違和感なく頼めそうなもの・・・。
「僕、小説って言うのが読んでみたい。絵本じゃなくて字がいっぱいのやつ」
お母さんは驚いたような顔を一瞬見せたが、すぐに笑顔になると、
「いいよ~、買ってきてあげるね」
そう言ってお母さんは部屋を出ていった。
読書は集中力が身につくだろうからスキルにつながりやすそうだ。
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