スキルマスターは安心を探す

暇太郎

第1話:過去の安心にすがる

「はぁ。これだから無能って言われるんだ。パシリの一つもできないのかよ」

とある高校の屋上で俺は不良3人組に絡まれていた。原因は遡ること5分前・・・。


_____________________________________


「おい。隣町まで1日50個限定のカレーパン買って来いよ」

金髪長身で目つきが悪く、耳にピアスをつけたいかにも不良といった男が命令する。

「待ってくれ。隣町まで30分もかかるんだ。昼休み終わるまでに帰ってこれない」

「おいおい・・・。冗談きついぜ?いくらここが栃木で、しかも『転移魔法』が使えなくても東京まで1時間だぞ?そんなにかかるはずないだろ?」

「兄貴、コイツが使えるのは初級の強化魔法だけですぜ」

金髪の横にいる細身で低身長の男が馬鹿にするように言うと三人は笑い出した。そしてひとしきり笑うと急に真顔になりため息をついた。


_____________________________________


そして今に至る。

「ちっ、使えねーな!」

そう言いながら金髪が俺のみぞおちを『中級筋力強化魔法』を使って殴ってくる。俺はとっさに『初級防御魔法』を発動させた。しかし、そのなけなしの防御が意味を成すことはなく、鋭い一撃が与えられる。

「兄貴、センセが来たらまずいぜ?」

ガタイのいい男が金髪を諫める。

「仕方ねえ。今日はこれで勘弁してやるよ」

そう言うと不良3人組は屋上を去り、俺は一人残された。

「クソっ・・・。何で俺だけがこんな目に遭わなくちゃいけないんだよ・・・」


_____________________________________


俺はそのまま授業に出ることなく帰路についた。スキルが使えないだけでこれほどまで苦労するこの世界。何で俺だけがこんな目に遭うのか。


この世界ではスキルとは幼少期から常に日常にあるものだ。スキルは様々な生活行動や技術の経験を積むことでその習熟度が上がっていくものだ。

例を挙げるならば、小さいころずっと石を探して遊んでいた子供は『捜索』スキルが育ち、絵を描いていたら『芸術(絵画)』スキルが育つ。


しかし、俺は幼少期に大きな事故に遭い、5年ほど寝たきりだった。そのために、他の人よりも経験を積むことができず、未熟になってしまったのだ。


救済措置はあるにはある。それは”レベルシステム”だ。ゲームのように生き物(魔物以外を含む)を狩ること、新しい事を経験する事、年齢があがることなど様々なことで経験値は貯まり、レベルが上がる。その時にスキルポイント、ステータスポイントという『スキルや能力を上げるためのポイント』を得ることができる。


しかし、これにも問題がある。それは一人では危険すぎることだ。親に迷惑はかけたくないが頼れる人間もいない。そんな状況で未熟な人間が挑めば死ぬ可能性も低くはないのだ。


「はぁ・・・。こんなことになるなら幼少期からやり直したいなぁ・・・」

独り言を言いながら家までの近道の路地裏に入っていくと薄汚れた黒いローブを纏った怪しい老人が声を掛けてきた。

「お主の願い、わしが引き受けた」

「失礼ですがあなたは何者ですか?信用できませんので失礼します」

急にそんなことを言われても当然ながら怪しすぎる。俺が無視して通り抜けようとすると老人が気になることをつぶやいた。

「『時空魔法』この世界の禁忌。その力、借りてみたいと思わないかね?」


『時空魔法』。この世界の真理にたどり着いたもの、つまり”すべてのスキルを習得したもの”のみが使えるという究極の業。おとぎ話に出てくる以外では書物に乗っていない、存在すら謎めいた究極のスキル。


「お話を聞かせてください」


嘘を言っているとは思えはい老人の様子に俺はいつしか頭を下げていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る