第34話

「そういえばあなた、この後どうするの?」


歩いているとメイリーがふとマコトに問いかけた。

突然の問いかけにいつも通りに適当に返答しようとマコトは思うが少し寂しそうなメイリーの横顔を見てきちんと返答してやろうと思い直す。

実際今回の件で大分時間を浪費してしまったし、エリックの行方も気になる。

なぜあれほどの数の回復薬を求めたのか、とかどうしてエリックに渡したはずの回復薬の匂いがスライムからしたのか、とか。

どう考えても今回のことに関わってるのは間違いない。

どうせこの後家に帰るのは間違いない、そうなればまず最初にやることは娘の入学手続きをーー


「あっ」


娘、そう娘。

今考えれば状況に流されて数日間こっちに来てるが娘ーーユキは今どうしているのか。

あくまで九歳ぐらいの次女を家に残して数日間放ったらかしにする、なるほど明らかにやばい。

今そう考えると堪らない不安感に駆られマコトは頭を抱える。

ユイがこちらに来た時に何かしてくれたことを祈るしかない。

悩みに悩むマコトの両頬をメイリーが若干冷たい手で触れて視線を合わせると何故か暖かい額を当ててくる。


「風邪じゃないようね、あって何よ、何かあったの?」


「おいお前、年頃の娘が男にそう言うことをやるんじゃない」


あくまでマコトは大人として美人の分類に入るメイリーに注意する。

だが返ってきたのは呆れたような溜息が一つ。

一応納得したとマコトは判断して今考えてる事を口に出す。


「下着を作ろうと思う」


「変態になったんですかアホくそさん」


と、ジト目でアイスアが一言。


「流石に私もどうかと思うわ、何か考えてるんだろうけど......」


と、伺うようにメイリーが一言。

大分最初の頃に比べて角が取れたメイリーの態度にマコトはお前こそ熱でもあるのか?と全く違う方向の思考をしながらも自論を述べる。


「この世界の下着には色気がない、そもそも布ってなんだよ布って、隠せばいいってもんじゃない」


「女性下着のことを言っているの?それとも男性用下着?......そういえば私の下着あなた凝視してたわね」


「変態クソやろうさんは仕事に着く前に刑務所に自首すべきだと思うわ」


何故アイスアはここまで毒舌なのだろうかとマコトは考えてすぐに思考を止める。


「なんとでも言え。絶対儲かると思うんだよ、後作るとしたらハイヒールとか?適当に流行らせて上手く売ればいいだろ」


「はいひーる?なんなのそれ?」


まだ異世界では発明されていないーーその事実がマコトの頬を緩ませる。

いきなり生き生きとした笑顔に変わったマコトにメイリーは生暖かい視線へと変わり気持ち悪いと毒づきながらアイスアは呟いた。


「ハイヒールっていうのはな、足首が長く、細く見える新しい形の靴だな。身長も高く見えるし何より綺麗に見えるっていうのがポイントらしい」


魔力操作で空中にハイヒールのそれっぽい形を表示する。

それをジッと見ていたアイスアは軽く鼻で笑ってマコトを嘲笑する。


「そんな足を痛めそうなもの買う人がいるわけないじゃない、何もわかってないのねゴミムシさん」


「そこがポイントだ、この世界は魔術があるからな、適当に健康長寿とかの加護を付ければいいだろ」


ハイヒールの悪い部分は足が痛むということだ。

マコトが計画してるのはそのハイヒールの底に加護を付けて足の血行アップや美肌効果など、回復上昇などをかけて足の痛みを軽減するとか、その辺を考えている。

話を聞いていたメイリーは疑問を抱きマコトの裾を引っ張る。


「それだと一つ一つの値段が高くならない?加護つけるって言っても専用の業者が数人集まって作るものでしょ?」


「あぁ、よく考えてんな。その加護なんだが知り合いに頼めば量産も出来そうだ。というかそもそもブランド品として売り出しちまえば少ない方が価値も上がるし貴族達の機嫌も良くなる」


マコトは子供を褒めるような慣れた動作でメイリーの頭部を撫でる。


「クソナルシストさん、今時撫でられて惚れるような人間はいませんよ?」


「そもそも異性としてみてないからノーカンだろ、な?」


その一言にパシッとマコトの手を弾いてメイリーは数歩間を開ける。

マコトは機嫌を悪くしたかと思いポケットに入れていた砂糖菓子をメイリーに渡す。

無言で受け取りなんとも言えない表情で舐め始めたメイリーは置いといてマコトは話を続ける。


「下着もだな、俺の世界だともっとエロい下着があったんだよ」


「そのエロい下着とやらの見た目を知ってる変態覗き魔さんはやはり警察に行くべきでは?」


「さー話を続けるぞ、女性っていうのは可愛いものとか綺麗なものが好きだろ?独断と偏見だが女性の方が化粧品とかそういうのを扱うイメージがあるのはそれだけ女性が美容や自分の美しさを気にするからだ。ならば今割と平和になって金が余ってるような貴族女性や一般市民のお姉様方にこんなものがありますよって売り出せば儲かること間違いなし!!」


「......割と悪い話ではないと思いますが素人がやると失敗しますよ?人生の敗北者さん」


「わかってる、俺もこの世界の商業組合とかに詳しくないしな。だから知り合いの洋服屋と協力して作ろうと思う」


妙に腐女子臭のする知り合いの洋服屋と協力して売り出せば儲けられそうだ。

毎回毎回妙な物を勧めてくるからマコトはあまり行きたくはないのだがユイの誕生日プレゼントの洋服選びに協力してもらったのでなんとも言えない。

結局洋服屋のお陰で上手く事態が収集したので文句を言える立場じゃない。


「で、下着作り、世でいうブラだな、そういうのの製作とあとは......ミウに頼んどいた定職に就くのも悪くないと思う」


まだまだ人生の前半戦、色々とできるといいなぁとマコトは思う。

のんびりと余生を送るのもいいし、商売を勉強して売りをするのもいい。

適当な話をダラダラと続けながら歩くこと数十分、無駄に広く長い宝物庫を歩き回りアイスアは空中で停止する。


「無駄話はそろそろ終わりにして残念な知らせがあるわよ、ダメ人間さん」


「どうした?」


「勇者だけど勇者じゃないろくでなしさん、さぁ!聖剣を抜いてください!」


そう態とらしく言って少女が指を指すと針のように細いレイピアが地面を突き刺していた。

どうやら数十場に重ねられた魔術式やもはや古術単位の物が描かれてるらしい。

最も目を引くのはそのレイピアの剣身に通された見慣れた指輪だった。

どうしてこれだけ厳重な保管がされているのかわからない、だが確かに見慣れたそれがあった。


「どういう事だ?」


「厳重な保管されるほどのものなんですかね、あなたは何かしらないの?」


「俺が知ってたらどういうことだなんて聞かないだろ、まぁとりあえず......」


マコトはレイピアの柄を握りしめて真上に引き上げる。

だがピクリとも剣が動くことはなかった。

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