エピローグ

「はっ!!」


ガタンと揺れる感覚に目を開く。

夢を見ていた気がする。凄く長い夢。背中が汗でびっしょりだ。

右を向いて外を見れば、景色が流れている。窓の前には眠る双葉。反対側にはアリス。


「起きたんだな」

「まだ寝てて大丈夫よ」


前から聞こえる声。

寝ぼけていた頭がようやく回転し、車に乗っているのだと理解した。


「あれは……夢?」


未来を先取りしたような感覚。悲しみと苦しみと恐怖が胸を締め付ける。

現実として体験したかのようだ。でも、そんなことがあるはずがないと考えてしまう。


「もしも、現実なら……」


右手を開き、意識を集中させる。

そこには、白兎の仮面。

持っているはずの無い物がある。その意味を理解し、体の力を抜いた。


あれは夢ではなく。崩壊した世界の記録なのだと納得した。

恐らく、目的である双葉の救済はなったのだ。そのついでで、ジャバウォックに捕らわれていた人たちも解放出来たのだろう。


だが、終わりではないことを俺は知っている。むしろ、これは始まりにすぎない。なぜなら……


「 魔女を楽しませる、か」


その方法なんてまるで分からない。けれど、やらなければならない理由はたくさんあるのだ。

だったら、やれることをやるしかない。


仮面を消し、寝ている二人の手を掴む。

ビクッと震える感触があったが、すぐに委ねられた。


「絶対に守るから」


自分自身に刻みこむ。

そのためだけに世界を見捨てた。魔女と取引した。

全ては、双葉のためだ。

やれないと諦めることは許されない。できないと蹲ることも許されない。見捨てるなんてもってのほかだ。


これから先、どうなるか分からないけれど全力を尽くす。


それが、俺に出来る唯一だから……

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