オープニング

光陰矢のごとしと言うように、月日はあっという間に流れていった。

あの時の後悔も悲しみも全てが過去のものとなり、今となっては失われずに側にある。


「ようやく。高校ね」

「早いものですね」

「そうだな」


入学式を迎え、学校を見上げる。

アリスが女王の仮面を受け取らなかったことで事故が起こらず、平穏無事な日常を送ることが出来ていた。


仮面は、未だに俺たちの側に居る。


右手を開いて集中すれば、すぐに浮かび上がり、顔に装備することで強力な身体能力を手にすることが出来る。白兎の特異能力を発動したことは、この世界にたどり着いてから一度もないが、双葉の帽子屋は普通に使うことが出来た。

多くの実験を繰り返し、体を鍛え、勉強し、俺たちは備えている。


いつか正面切って戦わなければならない相手。あの時、手も足も出すことのできなかった脅威。俺たちは、お情けで生かしてもらっているに過ぎない。

面白くすることが条件ではあるが、今の俺たちにはそんなことを考えている余裕はない。


「不安そうな顔は止めなさい」

「笑顔ですよ。笑顔」


二人に手を引かれて、校門を潜る。


いつ、この日常が壊れてしまうのか分からない。不安は常につきまとう。

それでも、双葉とアリスはそのことを表に出すことなく。楽しそうな笑顔を浮かべて先へ行く。


だから、俺は諦めない。

いつの日か、この不安から抜け出すのだ。


「危ない。危ない!」


左右で微妙に違う力加減で引かれるのでバランスが崩れて倒れそうになる。

必死にバランスを取りながら笑みを浮かべて足を動かす。


幸せだ。


後悔と絶望を乗り越え、掴みとった幸せ。

この幸せを守るため、魔女なんかに絶対負けるものか。


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