裏 4

世界にヒビが入っている。

紫の雲が霧散し、赤い星が落ちてくる。黒い太陽が遠くへ行く。

世界の終わりがやってくる。


「残念だわ。残念だわ。本当に、残念だわ」


豪華なドレスを着込んだアイが、空を見上げて呟いた。

シワや汚れが一つもない。清楚さと可憐さをあわせ持つそのドレスの裾を掴んで、くるくると回り、ため息を溢す。


「楽しい時間が終わるわ。兎ちゃんと仲良くなって、名前も貰ったのに、残念だわ。一人で足りないのは分かってたけど、女王様の選択は尊重しないとダメね」


ぴょんと、瓦礫を乗り越える。

ドードー鳥が、ネズミが、グリフォンが、海亀が、イモムシが、他にも多数の人と同じサイズの生き物がアイに視線を送る。


「女王様の指示に従って、この世界を残しまーす。みんな、頑張って欲しいわ。一緒にたくさん楽しみましょう!!」


気軽で、明るい声音。

最後尾にまで届くはずの無い声は、声無き鳴き声で遠くまで響く。

人には聞こえぬ声。しかし、それが聞こえるアイはニコニコと笑い。背を向けてぴょんとジャンプする。

視線の先には、二階建ての建物と同じ大きさの生き物たちが口からどんどんと仲間を産み出していた。


「いいわ。いいわ。凄くいいわ。たくさんのお友達。最高よ!!」


高層ビルの屋上へ、優雅に着地。

右手に意識を集中させると、そこには禍々しい化け物の仮面が現れ、平然とその仮面を被った。


「さあ、楽しいパーティーの時間よ。たくさんの悲鳴を喚声を怒声を聞かせてちょうだい。あはは。あはははははは」


笑いながら闇へと消えるアイ。

それがトリガーであったかのように、パリンとガラスの割れるような音を鳴らして世界が変化する。

その音は、遠く遠く。どこまでもどこまでも遠くまで届いた。


彼女の耳にも、その音は響く。

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