17
「どこ、だろうな……」
双葉の行きそうな場所を思い浮かべながらフラフラと歩いてみる。
しかし、「ここだ」という場所が思い付かないのであった。
「困ったな……」
まさか、あの絶望のワンダーランドに居るわけがないし、自由自在に移動出来るわけでもない。
喫茶店から出たら移動するかも。なんて淡い期待もあったが、そうそう都合よくいかなかった。
そもそも、ワンダーランドに行ってしまえば、双葉よりもアイのことで手一杯になりそうなので、捕まえるのならばこっちで捕まえたい。
「そうか。アイも探さないと、なのか……」
アイだってワンダーランドだけの存在ではないはずだ。
なら、この近くに居てもおかしくはない。探せば、どこかに居るのだろう。
人が多くて、探すには障害だらけだけど……何とかしないとな。
方法としては、声を出したり聞き込みだけど、立ち止まって話を聞いてくれる人が何人居るか分からないのが現状。
芸能人ならまだしも、ただの学生の話をまともに聞いてくれる人……居なさそうだな。
辺りを見渡せば、時間帯なのか忙しなく歩く主婦らしき人が多い。井戸端会議のようなことをしている人たちもいるが、その中に割って入れるだけの根性はない。冷ややかな視線を向けられたらごめんなさいとしか言えなくなる。
「はぁ」
自分でやると飛び出したのに、すでに手がない。
どうしたら……
「あっ!!」
キョロキョロとした視線の先で、双葉の後ろ姿が見えた気がした。
人混みに紛れ、すぐに見失いはしたが……急げば追い付けるだろう距離だ。
すいません。すいませんと人混みを泳ぎ、必死に前へ前へと進んでいく。
(助けて)
「んっ!?」
頭に直接飛び込んできた言葉に動きを止めた。
辺りを見回し、声の発信源を探る。
「気の、せい?」
耳を澄ませても声は聞こえない。
辺りを見回しても、急ぐ人ばかりで困っている人はいない。
首を横に振り、足を前に出した。
聞き覚えのある声の気がした。泣いているような、そんな気がした。
だけど、見つからないのならば後に回すしかない。今は目の前にあることから片付けていかないといけない。
いくつも抱えられるほどに器用ではない。全力で取り組むしかないのだ。
「双葉!!」
声を上げる。
視線が集まる。その中に、双葉の姿は見つからない。
「くそっ」
悪態をつきながら、どんどん前へと人を押し退けて進んでいく。
確かに居たのだ。後ろ姿であっても双葉を見間違えたりはしない。
「双葉、どこに……」
伸ばした手が何か触れる。
パリンと、ガラスの割れるような音が響き、触れた何かがこちらを向いた。
「えっ?」
双葉。ではない。血にまみれ、業火を背に立つのは……
「アリ……ス? いや、そんな……」
「助けて。私の白兎」
業火へと飛び込むその身を捕まえることが出来ない。動くことすらままならない俺は、涙を流す彼女を見送るだけだった。
「あっああ。うわわわわわわ!!」
世界が変わる。狂ったように真っ赤に染まる。
俺は、誰も助けること……出来ない。
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