第77話 大魔導士の正体

愛達は、もうすぐダルダード渓谷に着こうとしていた。

 妖精からの情報によると、残りの四人の幹部達は、ダルダード渓谷に集結をしていた。魔物の数も今まで見たこともない程多く、向こう側は万全の戦隊体型を既に整えていた。

 それらを取り囲むように、こちら側を援護してくれるドラゴンや、大型の猛禽類など、攻撃の命令を待つべく待機していた。


 最期の戦いは、猛禽類が向こうの監視を担っているカラス達の攻撃から始まった。

 所詮、カラスが猛禽類に敵うはずもなく、全てのカラスは無残にも地上に落下して行った。


 愛達がダルダード渓谷に見える位置まで来ると、大草原の戦いで始めて使った、二つの大竜巻による攻撃を開始した。

 愛の横にはリリアが居て、愛に魔法の供給している。

 リサの横にはジュリア、ジョウダン、アンドリューが居て、同じくリサに魔法を供給している。

 ダルダード渓谷はシャスタ山をひっくり返して、地面に押し込んで出来た様な巨大な渓谷だった。

 しかし、集合魔法は、その巨大な渓谷をも凌駕する、超巨大な竜巻を二つも作っていた。一つは渓谷の真ん中に固定をして、もう一つは、フィアーからの情報を基に、愛が効率の良い場所に移動をさせて魔物達を襲った。渓谷の中に居た向こう側のドラゴンや魔物達はなすすべもなく、超巨大な竜巻の前に殺傷された。

 それでも、敵側の元の数が多かったので、無傷で生き残ったのも多数居た。


 総攻撃が開始され、味方のドラゴン達が雪崩の様にダルダード渓谷に舞い降りて、攻撃を開始した。最期の戦いなので、ドラゴン族は同じドラゴン族も攻撃の対象に入れており、敵味方入り乱れての戦いは、まさに地獄図絵そのものであった。


 その中を、愛達を乗せたドラゴン達も、同じくダルダード渓谷に舞い降りて行った。


「総攻撃開始!」


 リサが号令を掛けると、一斉に部隊員達は激戦の真っ只中を降下して行った。


 愛はナイトに合図を送って、彼女が先に降下した。降下しながら真下にいる敵を切り裂く魔法で攻撃を開始した。近くにドラゴンが居なかったので、無事に彼女は降下して、周りの安全を確保した。ナイトが載っているグラウンド・ビッグ・マザーは急降下を開始して、愛の真上を通過した。と同時にナイトが器用に飛び降りて、無事に地面に降りた。


 グラウンド・ビッグ・マザーはそのまま、敵方のドラゴンに襲いかかった。ドラゴン族の中で最大最強の強さを誇る彼女は、鋭い巨大な後ろ足で敵のドラゴンの頭を鷲掴みにした。もがき苦しむ敵方のドラゴンを、彼女はさらに足に力を入れ、爪が頭にのめり込んでいった。断末魔声を上げて、敵方のドラゴンは死んでいった。彼女は、悲しみの咆哮を上げて、更に別の敵方のドラゴンに襲いかかった。


 愛とナイトは、フィアー達妖精の情報を元に、ダルダード渓谷にある洞窟の入り口を目指した。

 彼女の近くには、ユリア、アンドリュー、ジュリア、マリサ、トニーが居た。事前の作戦通り、彼らと協力をして、いく先々の魔物を倒していった。

 フィアーによると、既に向こうの幹部は全員死亡して、残るは悪の大魔導士だけとなっていた。


「その向こうに、洞窟の入り口があるわ」


 フィアーが緊張した口調で言った。

 入り口付近に近寄ると、洞窟は閉まっており、どこがいり口か分からなかった。

 マリサが言った。


「シャスタ山の扉と同じように、光で開くのかもしれませんね」

「おそらくそうね。マリサ、お願い」


 ジュリアがマリサに言うと、マリサは入り口らしい付近を光で照らした。

 すると、シャスタ山と同じ規模の五芒星が現れた。

 しかし、一つだけの文字が違って、光の代わりに闇の文字が浮かび上がった。

 地鳴りのような音と共に、洞窟のドアがゆっくりと開いていった。

 マリサが、闇の文字をジッと見た。気になったトニーが聞いた。


「マリサ、どうしたんだい。

 残りは悪の大魔導士だけだから、このメンバーで戦えば楽勝で勝てると思うんだけれど」

「トニー、よく考えて。

 光の最強魔法が有るということは、この五芒星から、魔の最強魔法も有るという事を示しているわ。

 私達は、光の最強魔法を習得していないのに、太刀打ち出来るとは思えないのよ」


 ジュリアが、威勢よくマリサに話しかけた。


「マリサの言っている事は分かるけれども、これだけの人数で行けば何とかなるわよ。

 アンドリューはどう思う」

「マリサの言う事は分かる。

 でも、それだと……、悪の大魔導士を取り逃がしてしまう事になる。ドラゴンが決死の覚悟で戦っているのに、ここで僕達が何もしないで思い悩んでも仕方ないと思う。

 ユリアの意見は?」

「不安は残るけれど、行くしかないのは確かだね。愛は、どう考える?」

「今まで死線を何度もくぐり抜けてここまで来ました。今回もきっと大丈夫だと思います」


 アンドリューが最終的な決断を下した。


「行こう。

 悪の大魔導士を、今倒さないと、一生後悔する。

 ナイト、先導を頼む」

「ニャーーーー」


 ナイトを先頭に、愛達は洞窟の中に入って行った。

 洞窟の内で、魔物が襲って来ると警戒していたけれど、何事も無く奥へと向かった。洞窟の中を更に進むと、広い空間に出た。

 愛は、人の気配が奥からして来るのが分かって、仲間に警告をした。


「誰か来る! 気を付けて!」


 向こうから、ゆっくりと歩いて来る人物に、愛は驚愕した。

 愛の実の姉、恵姉さんだった。

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