第41話 シャスタ山の入り口
愛達は、いよいよシャスタ山の中に入る為に、夢で見た窪みを手分けをして探した。けれど、思っていた以上に見つけるのが難しかった。
「もう、どうなっているの?
こんなに探しているのに、見つからないわ!」
「ジュリアお姉さん、落ち着いて!
夢の中のイメージは昔の物で、現在のイメージではないと思うんです。なぜなら、夢の中では窪みがはっきりと見えたのに、今では苔とか雑草が生えている。魔法で焼くしか方法が無いと思うんです」
マリサが冷静に言って、ジュリアの苛立ちを沈めた。
アンドリューが、マリサの言った事に賛同した。
「それはいい考えかもしれないね。
僕がやってみるよ。だいたい、どの辺りに窪みが有ったんだい?」
夢を見た五人と猫一匹は、それぞれ別の場所を指し示した。
「ちょっと待ってよ。そんなに広い範囲にファイアの魔法はかけられないよ。
何で同じ夢を見ていたのに、こんなにも距離と高さが離れているの? おかしいよ? まさか、フィアーの悪戯?」
「待って、これってペンタグラムだわ」
マリサが、驚きの声を上げた。
それを聞いたユリアが言った。
「マリサの言う通りだよ。これはペンタグラムだ。家の入り口に魔物除けとして使われている。そうすると、中心部分に窪みが有るのかもしれない」
ユリアは早速、ナイトが指し示した、ペンタグラムの中心部分を丹念に調べ始めた。
愛は、ペンタグラムの意味が分からなかったので、マリサに聞いた。
「この世界では魔除けのシンボルとして、あらゆる所に使われています。弱い魔物でしたら、このペンタグラムだけで遠ざける事が出来る優れ物なのです。しかし、逆さまにすると、魔物の象徴で、魔物をおびき寄せてしまうんです。
五つの先はそれぞれ意味を持っています。一番上が光を表していて、右回りに火、風、雷、氷を表しています」
「それって、攻撃魔法と関係があるみたいですね」
愛が、何気無く言った言葉に、マリサは目を見開いて愛を見た。
魔法とペンタグラムが関係あるとは、今まで彼女は気が付かないでいた。いや、この世界にいる誰もがそんな事を言った人は居なかった。考えてみれば、当てはまっている部分が多いい。
火はファイアで、風はウインドの魔法。雷はサンダーで、氷はブリザードの魔法になる。
「それって、凄い発見だと思います。
愛の説によると、光の攻撃魔法が存在する事になります」
「え? 光の攻撃魔法?」
「暗闇を照らす光は既に有りますが、それは攻撃魔法でないので違うと思うんですよね。まだ誰も発見できてない光の攻撃魔法。きっと有るわ!!」
マリサは、その光の攻撃魔法を考え始めようとした。その時、トニーがマリサと愛の会話の中で何かを思い出し、強い口調で言った。
「夢の中の窪みは確か、光に照らされていましたよね!」
頭の回転の早いマリサが、トニーの言葉に素早く反応して、今度はトニーを見つめながら言い始めた。
「そうよ、そうだわ! 確かに光に照らされていたわ。トニーの言う通りよ。
そうすると、ペンタグラムの辺りを照らせば何かの反応が起こるかも知れないわ。みんな下がってくれます。その辺りを光の魔法で照らしてみるわ」
マリサは、いつもなら片手で夜の闇を照らす光の魔法を使う。けれども、夢の中で見た窪みに照らされた光と同じくらいの明るさの魔法を発動する為に、両手を前面に出した。そして、夜の闇を照らす魔法を両手で発動し、ペンタグラムの図形の全てを照らした。すると、五芒星の線の光がその中から徐々に浮かび上がってきて、中心の部分も光始めた。
マリサが近付いていって、青白く光っている中心部分を押した。押すと直ぐに、ペンタグラムの周りの岩が音を立て始め、観音開きの入り口が少しずつ、少しずつ開いていった。
「やったわ。遂に開く事が出来た!」
興奮して、マリサが言った。
扉の中は洞窟になっていて、夢に出ていた洞窟と同じだった。扉が開いた事によって、外と中の気圧が違ったのか、中から匂いのする強い風が吹いて来た。彼等はこの風の匂いに惑わされるかもしれないと警戒して、鼻を摘んだ。ナイトは鼻から息を吸うのを止めて、口からの呼吸に変えていた。
しかし、愛だけが違って、洞窟からする匂いを満喫しているかの様に、思いっきり鼻から吸っていた。不思議に思ったユリアは、鼻を摘まみながら変な声で聞いた。
「愛、鼻を摘ままなくても大丈夫なのか?
妖精のリリの匂いの様に、この匂いは君を惑わせるかも知れないよ」
「この匂いは、妖精のリリが残した匂いとは全く違うんです。
この世界に生きている、あらゆる生物の良い香りがするんです。花々の酔いしれる様な香りはもちろんの事、樹々の清涼感溢れる匂いとか、海の中の生物の心を落ち着かせる香り。動物達の躍動感あふれる香りに、鳥達の清々しい香り。私の好きな香辛料の草花の香りもしています。
何と言っていいのか分かりませんが、この世界の光の、純粋な魂の香りがし来るんです」
ジュリアがいつも通りに愛を信じて、最初に鼻を摘むのを止めた。
そして愛の様に、鼻から思いっきり洞窟から流れてくる風の匂いを嗅いだ。半信半疑だった彼女の顔が、段々と喜びの顔になって行った。そして、何度も鼻から呼吸をしては、昔嗅いだ懐かしい良い香りを楽しんでいたのだった。
愛とジュリアの二人が、通常では考えられない行動をしていたので、他の仲間達は、益々怪しげに二人を見ていたのだった。
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