第27話 清浄な光
ユリアがおとぎ話の続きを話した。
「さっき話したおとぎ話には続きがあって、それはこういう話なんだ。影は形となって、ダルダード渓谷を作ったと。そこはシャスタ山と同じで実際にある場所なんだよ。この大陸の北の果てにあって凄く寒い所で、冒険記によるとダルダード渓谷は巨大だと書かれてある。魔物が多く居て、中心部に近付けば近付くほど魔物が強くなって行くと」
マリサが古の勇者に関する本を全て読んでいたので、それに関して言った。
「古の勇者に関する本の中にもダルダード渓谷が出てきます。ユリアが言ったと同じ内容で、同じく中心部に行くと魔物が強くなっていったと。誰もが思っている事なのですが、悪の大魔導士はここに居るのではと思うのです」
ジュリアが腕を組み直して、疑い深そうに言った。
「それは考えてみたけれど、本当のそこに居るのかしら。
勇者の本の中で、最後の戦いはダルダード渓谷であったとは書かれてないはずよ」
「それはそうですが、それらの本が余りにも古いので、無くなった箇所も結構あるんです。そこに書かれていた可能性も有ると思うんですよね」
ユリアが言った。
「どちらにしても、今の我々ではどうする事も出来ない。行くにしても、かなり先の様な気がする。目下のところ、ドラゴンの妖精のフィアーが言っていたシャスタ山に行く事を優先して、その対策を考えた方が良いと思うんだよね。それで考えたんだけれど、これから・・・・。
朝日が丁度昇り始めていて、この世界で最も清いとされている一条の光が、愛の目の中に射し込んだ。
余りにも眩しくて目を瞑った彼女は瞼の中に女の子の妖精らしき影が見えた。再び目を開けると、そこには紛れもなく女の子の妖精が窓の外に浮かんでいた。
幻想的なその光景に、思わず彼女は右手を差し出したら、その妖精が蝶の様な羽でこちらに、わずかに上下しながら飛んできて、右手の手の平に舞い降りた。その妖精は白いドレスを着ていて、艶やかな顔立ちで、濃厚な百合独特な香りも漂わせていた。
愛は、余りにも不思議なので顔を少し傾け、そして、心の中でその妖精に問い掛けた。
“貴女は誰なの?”
妖精は、艶やかでゆっくりとした口調で話しだした。
“私は百合の妖精のリリです”
“私は愛、はじめましてリリ。
始めて妖精を見ているのだけれど、どうして私の所に来たの?”
“はじめまして愛。
窓の外の下には百合の花壇が在り、そこで昨晩寝ていました。この部屋でフィアーの話をして、シャスタ山に行くというのが僅かに聞こえて来たので、気になったので窓の外で聞いていました。そして、愛には邪心が一切なくて心が綺麗だから、貴女の手の上まで来ました”
“妖精は子供しか見えないと、先程みんなから聞いたばかりなんですが、どうして私にはリリが見えるの?”
“朝日が昇り切る間の、僅かな間の光は清浄な光なのです。この光を見た後なら、しばらくの間なら見える事が出来ます”
マリサが、愛が可笑しな行動ををしているので、小声で聞いてみた。
「愛、どうかしたのですか?」
「それが・・・、私の右手の上に百合の妖精のリリが居るのよ」
「え、本当ですか?私には見えませんけれど?」
「朝日を見て、眩しくて瞼を閉じたら妖精の影が見えて、再び目を開けたら妖精が居たからビックリしてるところ」
マリサが直ぐに愛の言った通りにしたら、朝日が眩しくて思わず目を瞑った。瞑った目の中の、愛の右手の方に妖精の影が現れて、再び目を開けると愛の右手の上に白いでレスを着た妖精がハッキリと見えたので非常に驚いて、直ぐに皆んなに聞こえる様に言った。
「今、 愛の右手の上に妖精が居ます。朝日を見て瞼を閉じて、再び目を開けたら私にも見えました」
他の三人が驚きながらも、マリサが言ったことを直ぐに実行した。
ジュリアが驚いて言った。
「見えるわ。私にも」
トニーも同じく驚いている。
「僕にも見えました」
ユリアは、生まれて初めて妖精を見たので非常に驚いて、言葉に表す事が出来なくて、ジッと妖精を見ていたのだった。
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