第18話闇の大魔導士の幹部とドラゴン



「なんだって、見張りのカラスが殺されただって!!」

「へえ、突然カラスから見えていた奴らが見えなくなって、カラスに命令をしても全然反応が無いんでさ」

「クッソー。ブラックウルフは全滅するし、見張りのカラスまで殺されるとは。

 最初はただの旅人かと思っていたが、間違いねえ、奴らは騎士団の連中だ。

 特に女二人は異常に強い。一人は通常の魔法の射程距離の倍の距離から、正確にブラックウルフを殺していった。もう一人の女は、あっという間に八頭のブラックウルフを殺しやがった。魔法騎士団の中で最強の二人が来たのかも知れない。

 更にだ、今まで誰も気が付いていなかった見張りのカラスに気が付いて殺しやがった。

 おのれー。このままだと俺が大魔導士様に殺されてしまう」

「え、どうしてランディ様が大魔導士様に殺されるんですか?貴方様は幹部の一人で、今回この地域の偵察と、もし出来るならバルガス伯爵の屋敷を襲う為にここまで来ただけでしたよね。俺にはわからないんだけれど」

「あほ。見張りのカラスには、例の黒色の首輪を付けていただろうが。それは俺たちの秘密中の秘密なんだよ。その秘密の首輪を奴らが持っているのは間違いねえ。

 この事が、大魔導士様に知れたら俺の首があぶねえ」

「あ、そうか」


 ここはバルガス伯爵の領地のすぐ近くにある洞窟の中だった。しかも。山越えの道のすぐ脇で、ここからブラックウルフを操ってこの五日間、旅人を襲っていた。


「最後の切り札を使うしかねえな」

「え、もしかして、レッドドラゴンを奴らと戦わせるつもりですか?」

「ああ、文句あるのか?」

「いえ、文句は無いですが、レッドドラゴンはバルガス伯爵の屋敷を襲うのに使うと聞いて、近くのここの洞窟をやっと探し出して隠していたのにと思っただけです。はい」

「俺の首が危ないんだよ、早く首輪を取り戻さないと!!

 バルガス伯爵の家に行かれたら、向こうも用心して警戒を高める。そうするとだな、レッドドラゴンでも襲うのは難しくなるんだよ。頭使えって、アホ。

 向こうは強いといっても、たった五人しかいないんだ。ブラックウルフを倒しても、同じ魔法は今回は全く効かねえからな。

 しかし問題なのは、カラスが居なくなったので、俺たちが近くまで行ってドラゴンを操るしかない。もし見つかったら、捕まるか、殺されるかだな」

「俺は嫌だよ。そんな所に行くのは」

「何言ってやがるんだ。一蓮托生だよ」

「何ですか、それは?」

「ああ、うるさい。付いて来なければ今ここでお前を殺してもいいんだけどな」

「わ、分かりました。付いて行きます」


 愛達が山から下りてくる道は一本道なので、彼等は待ち伏せをする事に決めた。


「ここはどうですかね、ランディ様。この辺りは谷間で木々が密集していて、レッドドラゴン得意の火炎を使って、火の海に出来そうな場所だと思うのですが?」

「よく探したな。お前にしては上出来だ。

 よし、レッドドラゴンを、そこの岩の陰に隠せ。そして俺たちは向こうで高みの見物とするか」

「これはいい見ものになりそうですね。いやー、付いて来て良かったですよ。

 お弁当を持って来れば、なお良かったですね」

「そう言えば、昼飯食ってなかったな。

 あー、クッソ。彼奴らが殺されるのを見ながら美味しい飯が食える所だったのに。

 まあいい。奴らを殺したら帰って、祝杯と行こうぜ」

「もしかしたら、あの取って置きののワインを飲ませてくれるんですか?」

「おうよ。今はそれを楽しみに腹減ってても耐えるしかねーな」

「分かりましたーー。

 では早速レッドドラゴンを隠してきます」


 レッドドラゴンを隠し終えると二人は、谷間がよく見える所を確保し、愛達が来るのを首を長くして・・・、お腹を空かして待っていたのだった。




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