第10話薙刀と飛び道具
愛達は今度は薙刀と防具を取りに行った。
クゥイントンの店に行くと、彼が一人で店の番をしていた。
ヒゲをさすりながら、久しぶりに友達にあった様な、親しい言葉遣いで話し出した。
「おお、愛か。待っていたんだよ。
こっちに来て、出来栄えを見てくれないか?」
「今日はクゥイントンさん。
よろしくお願いします」
愛は挨拶をすると、直ぐにクゥイントンの所に行った。
彼が棚から布に包まれた薙刀と防具を愛に渡してくれた。
「防具は服の下から装着する様になっている。愛の場合は動きが素早いので胴体周りにだけに限定をした。これだと、最も攻撃力を活かせる。
薙刀は、ここでは振り回されないので、裏庭に行って試してくれ」
「はい。ありがとうございます」
愛はそう言って薙刀を受け取った。最初に持った感じは少しだけ重たいかなと思った。
裏庭に行くと、直系二十センチぐらいの試し切り用の麦の束が三カ所設置されていた。
「その麦の束で、試し切りをしてくれ」
「はい、分かりました」
布を全て取って、マリサに渡した。
手に持った感じは、まるで吸い付く様に馴染んだ。刃先に取り付けてあった鞘を取ると見事な刀身が現れた。
軽く一回回すと、思っていた通りの太刀筋を正確に描いたので、久しぶりに昔の感覚が蘇って来た。
数回回しながら最初の束に斬りつけた。二十センチの束が殆ど抵抗なく切れ、数秒遅れて束の先が地面に落ちた。
姉妹が感嘆の声を上げて、驚きを隠さず素直に応援をしだした。
「愛、頑張れ〜〜」
応援された愛は少し照れながら、今度は最速の連続技で三箇所全部を切って行った。
今度は真横に切っていったので、切れたまま落ちずに上に乗っていた。
姉妹は、束が地面に落ちなかったので、失敗したと勘違いをして落胆の声を漏らした。
クゥイントンは流石に見抜いており、切った束に近づいた。彼は切れた束の上を取り除いて、切り口を見た。
「愛、見事だ。殆ど潰れずに綺麗に切れている。
しかし、やはり訓練不足で、全てが切れていない。少しだけ重く感じなかったか?」
「はい、ほんの少しですが」
「それは、これからの訓練で筋力が元に戻るとなくなる。
その時は、全て綺麗に切れているだろう」
「そこまで分かるんですね。
手に柄が馴染むのが自然で、まるで吸い付く様でした。
どうもありがとうございました」
「いや、礼には及ばないさ。
こんなにやり甲斐のある仕事は久しぶりだったんでな、楽しんでやらせてもらったよ」
愛はもう一種類、クゥイントンさんに武器をお願いしようと思って話しだした。
それは、橘流で使われている暗器で、遠くの敵を倒す時に使うものだった。
「クゥイントンさん、もう一つお願いがあるのですが、聞いてもらえますか?」
「お、なんだね」
「実は、飛び道具を扱うことが出来るのですが、この国では売っていないのです。
もしよろしければ、作ってもらえると嬉しいのですが?」
「飛び道具か?短剣ではないんだな。
どんな特徴をしているんだね」
「薄くて星型の形に近い形をしています。
短剣よりも命中率が高く、更に、遠くまで投げることが出来るのです」
「ほう、変わった武器だな。
イメージが少し湧きにくいが」
愛は、ふとカードキーを思い出した。
「それと同じ様に薄い物を今持っています。
それを投げれば、ある程度分かるでしょうか?」
「そうか、それを投げてくれ。
今までその様な武器を作った事がないんでな」
「はい、お願いします」
愛は、カードキーをお守り袋から取り出して、橘流の投げ方で素早く一番遠くにあった麦の束になげた。手を離れたカードキーは、一直線に目標に向かっていき、上に乗っていた麦の束を落とした。
姉妹はそれを見ると、また驚きの声を上げていた。
クゥイントンは興味を示して、カードキーを自ら拾いに行き、確かめる様に丁寧にそれを調べ始めた。
「愛、これは?」
「それは、私の生まれた日本と言う島国で使われているものです。
それと同じ形でトランプと言うカードゲームがあるのですが、それを遠くに投げて標的に当てるのを、姉とよく遊んでいました。
実際の武器は金属でできており、厚みはそれの二倍ぐらいで、周りは鋭利な刃物になっています。遠くの敵を倒すのに適しており、数多く持ち運べる利点もある武器なのです。
この武器を、クゥイントンさんに作って欲しいのですが、いかがでしょうか?」
「それは面白そうだな。
よし、試作で二、三種類作ってみるよ。その中で気に入ったのを欲しい数だけ作ろう。
いやー。また面白そうな武器で、楽しんで仕事ができそうだ。
これは返しておくよ」
そう言って、クゥイントンはカードキーを返してくれた。
「それは不思議な素材だな。今まで見た事がない。
日本と言う島国は、変わった物を作っているんだな」
愛は、カードキーを出した時からこう聞かれると予測をしていたので、自然に、怪しまれない様に気を使いながらこう言った。
「だからこの様なものが、この国にはなかったんですね」
愛は、笑顔でクゥイントンに、そう答えた。
彼もそれ以上追求することはなく、その後は、詳しく武器の説明を聞いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます