第47話 円卓会議

『やはり、そうです。この、脈動するように進行していくのはR・Bの際立った

特徴の一つといえますね。』


「予想される進路は?」


『ハワイ諸島の可能性が高いです。 ただ、予測進路上には割りと多くの船舶が

航行中で、作戦を遂行する場合、それらに最大限の注意を払う必要があります。』


「ご苦労。引き続き追跡を続行してくれ。」


『了解しました。』


「えー、皆さん。 研究テーマの発表およびプレゼン会議・・・そろそろ始めたい

と思います。 どなたから行きますか?」


会議室と思われる広めの部屋に集結した、科学者集団15名。

そのうちの一人が手を挙げた。


「私から、いきなり決定打になりそうな提案をさせてもらうとしよう。」


会議室内がザワつく。


「オーストラリア海洋TEAM、タスマニア・シーデビルス代表・・・

ヒューバート・フックだ。 フック船長と呼んでくれ。」


「ヒュー、大きく出やがったな!」

「分かってるだろうな!? ここにいる全員の賛同を得る必要があるんだぞ!?」

「御静粛に願います! ・・・フック代表、始めてください。」


「ここに居られる方々は、すでにR・Bに関する情報を把握しているという前提で

話をさせていただく。 皆さんは、とっくにお気付きと思うが・・・

ヤツは荒れ狂うカイジューではなく、知性を持って行動しているのは明らかだ。

そもそも、姿からして二足歩行の人間の形を呈しているのには、やはり意味があると、私は見ている。  何故カラスに似ているか?は、この際置いといて・・・

皆さんは、R・Bが日本へ上陸した時の出来事・・・記憶に新しいと思う。」


「あれは、ある意味衝撃的だった! あの辺一帯は壊滅的被害かと思ったぞ!」


「そう。 誰もがそう思った。   しかし、現実は皆さん御存知の通り。

R・Bがメッセージを出した後の一連の行動・・・

とてもじゃないが、カイジューやA Iに、これらの行動はできるはずが無い!

暴論に聞こえてしまいそうだが・・・あえて、そう断言させていただく。

機能を最優先した形態であるならば、何も非効率的な人間の形を取る必要は無い。

では、何故R・Bは人間の形態をしたようなメカニズムなのか?

操縦系統が、内部の人間の動きを超高性能センサーで逐一トレースする形である

ならば、そのような形になる方が自然・・・

すなわち、人間が介入して操作していると考えた方が、また自然である。」


「おいおい、そんな早急に決め付けてしまっていいのか?」

「ヒュー、何が言いたいんだ!?」


「荒れ狂うカイジュー、予めプログラミングされたA I、一部のテロリスト一味。

これらは話の通じる相手ではない。 お分かりと思うが。

ここで、R・Bが上陸し、どういう行動を取ったか、今一度思い返してみてほしい。

ヤツは上陸する際、メッセージを発し、去る時もメッセージを残して行った。

こんな事、人間にしかできない! そうは思わないか!?

しかも、地面に残してくれたメッセージは、我々へナックルボールに関する重要な

ヒントを教えてくれたのかもしれない!」


「だから、何が言いたいんだ!?」

「いいかげん、終わらせるぞ!」


「私が言いたいのは・・・ 人間が搭乗している機体であるならば、メッセージの

やりとりが可能という事。 つまり、〝話し合い〟だ。 

これによって生じるメリットは、我々に実害や被害をもたらさない!

それだけじゃない。 戦闘活動により発生してしまう不本意な出費が抑えられる。

そして何より大事な事・・・

無闇に戦闘を挑まなければ、貴重な人命を失わなくて済む!

敢えて言おう。  今、我々に必要なのは・・・

世界的に有用な情報を得る、カギになるかもしれない・・・


交渉人(ネゴシエイター)・・・ その有能な人材だ!」


 




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