第45話 追っ手(?)を撃退する方法
『沈没船から、溶接作業のものと思われる光源と大量の気泡を確認しました!』
「ヤツめ・・・〝作業〟を開始したか。」
「提督、どうぞ、作戦を決行なさって下さい。結果がどうあろうと、その後の
対策は改めて考えればいいだけの事です。」
「そう言っていただけると助かる。」
『1番から5番、装填完了しました。』
「よし、対潜魚雷発射用意・・・ 1番から5番、射出口開放。」
『1番、2番、3番、4番、5番の射出口、開放しました!』
『依然として、光源の位置と発生している気泡に変化は見られず。』
「・・・発射!」
魚雷を発射できる武装をも備えた、空母フランク・ハワード。
大きな船体の横から5ヶ所に気泡が発生した後、海中へ向かって進む
5本の白い線。
「もう少し・・・だ!」
激しく生じる気泡によって見辛くなってはいるが、指定された枠にそっての
切断作業は、ほぼ完了しようとしていた。 ・・・が。
・ふりかえって!・
・りょうて を さしだして!・
「合図か!!」
振り返った秀太の目の前に、ターゲットマークのような5つのX印。
「え・・・? まさか、あれって・・・」
・ぎょらい・
・うちおとさないと だめ・
「なんで、わざわざそんな事を・・・?」
( でも、じっくり考えているヒマなんて無いんだろうな )
と、目の前に光っている枠線に、自分の両腕の位置を合わせる秀太。
無数に近い数の黒いトゲに被われた蓑(?)から現れた、銀色のハンマー。
秀太から見た自分の両腕は、その銀色のハンマーとダブって映っている。
「・・・・・・」
「提督、ひとつ聞き忘れていました。その後の・・・レイザービルの調査の件
ですが、どのような段取りになっているか教えていただけますでしょうか?」
「そちら(WO-PARTS)の調査団に先行してもらいます。 そして、我々はその
護衛・・・という事で。」
「分かりました。ありがとうございます。」
その時、重低音の振動が空母の管制塔にまで伝わり、地震のように大きく揺れた。
「!?」 「!!」
『沈没船付近で、五つの閃光を確認! 着弾したものと思われます!』
そして、沈没船のある海域付近から轟音とともに海面に上がった巨大な水柱。
もうもうと立ち上る、煙を含んだ水蒸気が急ごしらえの積乱雲を形成した。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「おっと、そちらの特殊潜航艇に出番、ではないですかな?」
「そうでした! では、提督、行ってまいります!」
空母の側面から迫り出してくる、特殊潜航艇。
クレーンで徐々に海面へと降ろされてゆく。
意気揚々と、その反面、少し寂しさを感じながら特殊潜航艇に乗り込んだ、
オブライエンCEO。 ・・・そこへ・・・
「社長、総司令から通信が入ってます。」
乗組員からマイク付のヘッドホンを受け取り、耳に当てると・・・
『オブライエンさん、悪い知らせを伝えなければならない。』
「提督、何があったんですか?」
『沈没船が10数メートルずれていたのは確認されたが・・・』
「まさか!?」
『ヤツの姿が見当たらなくなってしまった。破片すら無いようだ。』
「そうなると、我々は待機でしょうか?」
『そうしてもらったほうがいい。何故なら、沈没船内にヤツが潜んでいる場合を
想定すると・・・ もう、それで御理解いただけると思う。』
「その話、提督の予想では、何らかの攻撃方法で魚雷を破壊したレイザービルが
まだ動ける状態で沈没船の内部に潜んで、我々をやり過ごそうとしていると・・」
『少なくとも、私はそう見ている。』
「確かに、あれほどの爆発で沈没船が丸々残っているのは・・・ 奇妙ですね。」
『そう、ファイアービーンズ弾をまともに喰らえば、両方とも粉々のはずだ。』
「・・・・・・」 『・・・・・』
その後、両者協議の結果・・・
作戦の続行を断念、この海域から撤退し、母港へ帰還。が、正式決定された。
・だいじょうぶ?・
目の前のひらがな表示が見えて、確認できた。 と、いう事は・・・
どこも痛みは無く、体も動かせる。
停電している様子も無い。
「こっちは大丈夫。 君は・・・」
と、言いかけて、言葉につまった秀太。
( あの子・・・何て名前で呼んであげたらいいんだ・・・? )
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