第42話 Silicon Prairie Dogs (2)

「こちら、アーリントン1、 島に到着しました。 今、状況を確認中です。」

『こちらの映像で見る限り、ヤツは全くの停止状態に見えるんだが・・・ そちらに何らかの兆候でもあったら、すぐに退避行動を取ってくれて構わないが。』

「大丈夫です。 こちらでも確認とれました。 何かのモニュメントみたいに、全くもって動きはありません。 先ほどのミサイル空爆は成功したと思われます。」

『・・・以前より低くなっているいるように、こちらでは見えるが、何か・・』

「ああ、艦長、この状態は・・・おそらく座っているんだと思いますよ。」

『なるほど、それで合点がいった。引き続き、細心の注意を払ってくれ。』


奇妙な形の上陸用舟艇の舳先が島の狭い砂浜に到達した。

それまで、“凪”だった状態から、島に漂う細かいキラキラ光る物を吹き払っていく、

吹き始めた海風。

「・・・行かないんですか?隊長。」

「あの金属の粉塵が消え去ってからだ。こんな所でつまらん故障をする訳にはいかんからな。」


狭い砂浜に立ち止まっている、奇妙な上陸用舟艇の映像を見ている少女。

“VRの部屋”で、胡坐(あぐら)を掻いて座った形の秀太。

「・・・やっぱり座禅なんて柄じゃないよな・・・」


「前方、視界クリアになりました。」

「よし、ドッグ・レッグ起動!」

「ドッグ・レッグ、起動開始!」

「シリンダー内圧力、正常値にて上昇!」

戦車の砲台のような操舵室に、乗組員たちの掛け合いのような声が響く。

奇妙な上陸用舟艇の四隅あたりから、海中に何かを射出したような気泡。

同時に、それら四ヶ所から柱のような物が現れた。

海面から持ち上がる、上陸用舟艇の巨体。

「・・・上陸開始。 砂浜は、なるべく踏むな。」

四本の柱は動物の足のように動き始めた。

コンボイ級トラックのタイヤを横に連装させたような“足先”が、滑走路の

路面の端っこを慎重に踏んでゆく。

「ホイールはちゃんとロックしてあるな? 不用意に回ってしまうとコケるぞ!」

「大丈夫です! 試験歩行の時の失敗はもうありません!」


そして、四つの脚を少し「く」の字に近い形で滑走路上に立つ、奇妙な形の上陸用舟艇、アーリントン・1 。

「・・・それにしても、不気味な目つきしてやがる・・・」

「自分は深海魚のそれを連想してました。」

操舵室スクリーンに映し出された、虚空をただ眺めているような目つきに見える、 レイザービルの尖った横顔。

「ラリアット・ワイヤー、射出準備完了しました!」


目の前の上陸用舟艇の船体上部が、次々とミサイル発射口のように変化していく。 その映像を身構えながら注視する少女。


      ・まだ うごかないで・


一向に消えようとしない目の前の表示。  次第に苛立ちを感じてくる秀太。


「射出!!」  上陸用舟艇船体にある4っつの発射口から射出された物・・・

レイザービルと比べた大きさの比率からして細く見えはするが、実際は相当に太い

ワイヤーだった。

さながら、カウボーイの投げ縄のように放たれたワイヤーは4本全てレイザービルの巨体を捉え、その胴体の辺りまで食い込んだ。

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