第41話 Silicon Prairie Dogs (1)

『こちら、北太平洋第七艦隊艦長のソロモンだ。今回使用するミサイルについての

注意点を伝える。』

「V.V.V隊長、マルチナ・シュニーヴです。どうぞ。」

『なんでも、効果的な発射タイミングがあるそうだ。  ターゲットからの有効射程距離は2000m。到達500m手前で炸裂し、強烈な電磁波が発生するらしい。

なお、発射する際の高度、角度はそちらで決めて構わない。 以上だ。』

「了解しました。」

紫色のデルタ型無尾翼機の5機編隊。

気流を読みながら姿勢を維持させる飛行のため、細かく振り分けられたフラップが

せわしなくはためく。

「各自、聞いての通りよ! 設定の変更、急いで!」

『了解!』 そして、『完了しました!』の声が相次いで隊長機に届く。


空母フランク・ハワード 管制室に、整備班から報告があった。

『艦長、調べてみましたところ・・・今時、スクリューマウントのカートリッジ

でした。 一応、交換は可能です。』

「その弾頭・・・何かに転用できないか?」

『分かりました。兵器庫ストックのデータも調べてみます。』



PCの画面を注視して見ている少女。  そこには七つの砲弾型マーク。     そこから、小さい三角形のマーク五つが発生した。

かなりの速度でこちらに向かってくる。



ピー、ピーと断続的に鳴る、コックピット内のアラーム。

「撮影担当、ローラだったかしら? どう、ちゃんと撮れてる?」

『はい、隊長! バッチリです! ・・・ホントにカラスみたいですね・・』

「監査官のリサから・・・みんな聞いたと思うけど、再度確認よ!」

『分かってます、隊長! ミサイル発射後は、直ちに撤収!!ですよね!?』

「そうよ!」

『間違っても、現場近くを通過してはならない!』

「その通り!こんな所で墜落したくはないでしょ!?」

『イエス!!』

『隊長、空母に帰還しなくていい・・・で、間違いなかったでしょうか?』

「ジョアンナ、ちゃんと聞いてなかった? この際だから、はっきり言うわよ!」

『お願いします!!』

「そう、帰還しなくていいの!  落ち合う場所は・・・パールハーバー基地! これは決定事項!!」

『了解しました!!』

コックピット内のアラームが、ピーーと継続音に変わった。

「ファイア!!」

5発のミサイルが一斉に発射された。


5機の無尾翼機が、航空ショーのデモフライトのように散開した。

そして、こちらに向かってくる5発のミサイル。

少女のPC画面は、その様子を既に捉えていた。

“VR”の部屋では・・・

ただ漠然と島の全景を眺めていた秀太の目の前に、またも平仮名表示が。


     ・あいずが あるまで うごかないで・


「この音は・・・またミサイルか! 」

度重なる、“甘んじて攻撃を受ける”という、この状況。

「・・・でも、なんで・・・」

さすがに、疑問が沸々と湧いてくる秀太。



空母フランク・ハワード管制塔内の大型スクリーンに映し出されている、カラスの

怪物こと、レイザービル。

その映像が、一瞬眩い閃光、そしてカメラのフラッシュのような数多くの閃光を

映し出した。  島中に拡がる、火山の噴煙のような煙。

十数秒後、爆発音が空母に到達した。

『艦長、こちらは発進準備、すでに整っております。』

「了解した。今、カバーを外させる。」

『もし、甲板のカタパルトに不具合があるようでしたら・・・  横っ飛びで海面に降りても構いませんが?』

「大丈夫だ、専用のラダーで丁寧に降ろしてやる。だから心配しなくていい。」

『感謝します。』


艦載機のいなくなった甲板(カタパルト)上に、カタ、カタと音をたて伸びてゆく幅の広いレール。 同時に甲板中央部に現れたのは・・・

船体(?)自体は上陸用舟艇の形に近いが、その真ん中部分にある戦車のような

砲台。だが、砲身は存在しておらず、カメラのレンズらしき物が備わっている。

『シリコン・プレーリー・ドッグス、アーリントン・1・・・発進します!』

空母の舳先から海面へなだらかに伸びていく専用ラダー。

そこを遊園地のアトラクションのように滑り降りて行く、奇妙な上陸用舟艇。


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