第33話  テロリスト壊滅

少女は秀太に三本指を立てて見せた。

「三度目って事なんだね? 分かった。」


〝VRの部屋〟に入った秀太に、またも不可解な平仮名表示。


      ・うみにむかって たおれて・


「もう・・・ワケ分かんないや。」

とは言え、少女なりに何か作戦めいたものがあるのだろう。

実際に倒れたフリをしてみれば、テロリスト側がどう動くのか分かろう

というもの。 秀太は、そう解釈する他無かった。


LPGタンカー偽装艦の乗組員から歓声が上がった。

サーチライトに照らされた、カラスの怪物を映し出している映像。

ゆっくりと、木が切り倒されたように倒れ、巨大な水柱が上がった。

もうもうと沸き立つ、入道雲のような湯気。


再び海底に足が着き、視線を上に向けた映像を見ている秀太。

自らが発生させる無数の気泡のせいで多少見辛くなっているが、そこには

大型船舶特有の船底の形があった。

所々にオレンジ色のカーソル表示。


     ・そこをぶちぬいて・


「そこにもナックルボールがいるんだね?」

返答の平仮名表示は無かった。


カーソル表示の部分を全てぶち抜けば当然、浸水は免れないだろう。

悪事に加担する船は、自分の手でゆっくり沈めてやろう。

その間に全ての乗組員は脱出するといい。

残虐非道なテロリストとはいえ、人間だ。

海上保安庁か第七艦隊に救助してもらい、然る後、法で裁いてくれるだろう。

秀太は漠然とした、そういう思いでジャンプし、船底に取り付いた。

掴む箇所が何もない船底だったが、どうやら強烈な磁力を駆使しているらしい。

レイザービルは、ハンマーのような手を出現させると・・・

ハンマーの打撃面を船底に押し当てた。

すると、その箇所に・・・

アーク溶接の様な眩い光が、真っ暗だった船底の周囲を明るく照らし出した。

同時に発生する、無数の気泡。

暗黒の海中に星の瞬き。


しばらくして、帰還途中の北太平洋第七艦隊に、軍事衛星を介し一報が届く。

     

    < アル・カリの船団、イナンバ島沖で現在沈没中 >


艦隊は踵を返すように進路を変更した。




      

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