第27話 敵の多い海・空爆
少女はPC画面に数多くの数字を並べ、右から左へ払う動作を繰り返していた。
「何をしてるの?」と秀太が言ってみても、少女は何も答えない。
PC画面上に表示されては消えてゆく、数字の羅列。
秀太にはそうとしか見えなかった。
少女が何度もその作業を続けていくうちに、ある変化があった。
斜め下方向、べヨネーズ列岩近海から動き出すマークが出現。
しかも、断続的に数字の羅列を返してきたのだった。
「TEAM B-BORNの諸君・・・ これより、カラスの怪物に向けてショーアップ
のスポットライトを当てる。それが、攻撃の合図だ。成功を祈る。」
『こちら、B-BORN、了解。』
程無くして、全艦のサーチライトがイナンバ島に集中した。
TVクルー船の望遠カメラが映し出す、巨大な漆黒の物体。
黒い部分は一切の光沢が無い、カラスに似た怪物。
島のわずかな上陸スペースを占拠し、身動きひとつ見せていない。
その上空は戦闘攻撃機編隊の轟音。
もうひとつのTVカメラが、サークル状に配置されたオレンジ色の光の点を捉えた。
同時に、別の甲高い爆音。それらの光の点は、尾を引きながら一斉に降下した。
『キターーーーッ!!!! 空爆開始だーーーっ!!!』
スタジアムのボルテージが一気に上がる大歓声。 ・・・その数秒後・・・
複数の爆発音と数々の閃光。その時発生した爆煙で、カラスの怪物の姿が霞んだ。
『なんとーーーっ!!! 全弾命中だーーーっ!!!』
少女が画面に何か操作した後、部屋中に激しい振動があった。
すると、部屋の照明はフェードアウトするように消え、PC端末の画面も同じように
消えていった。 部屋は、自分の目の前に翳した手が全く見えない程の暗黒。
その時、バサッと何か倒れるような音が秀太に聞こえたが・・・
秀太はそれが何か、おおよその想像は付いていた。
「ばかな・・・ 直撃のはずだ!」 隊長は思わず唸った。
爆煙が晴れ、艦隊のサーチライトに再び照らし出される、カラスの怪物。
だが、様子が少し変化していた。
目玉を連想させる半球状の部分は、黒い球が見えず白濁化していた。
被われている黒い針が数本ほど海に落ちた以外、全くの停止状態。
『隊長! ここはもう、“切り札”を使用すべきと思います。』
『異議なし!ここで致命的ダメージを与えておけば、たとえ海に逃げ込んだと
しても、我々の新型魚雷で仕留められるはずです。』
「・・・・・・」 B-BORNの隊長は何故か躊躇していた。
イージス艦カウアイに、新国連特別監査官の一行を乗せた大型ヘリが着艦した。
「どうやら、新型爆弾の不正入手の件で状況証拠がそろったようです。」
「さあ・・・ どうでる? “切り札”とやらを使ってみろ・・・B-BORN。」
「艦長・・・ 野次馬たちが集まってきたようです。」
「一応、顔ぶれは把握しておいたほうがいいだろう。」
豪華客船、車両運搬船。そして、LPGタンカー。
それらの船舶が映像に収められていた。
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