第26話 敵の多い海・包囲網
島と星印が重なった箇所に近づこうとしている、数々の砲弾型マークを
注視している少女。
そのつど、長い髪が垂れ下がり、そのたびに手でかき上げている。
秀太は少女のその仕草がどうにも気になっていた。
( 何か、結ぶひもみたいの・・・無かったかな? )
着替えが入っていた引き出しをのぞいて見ても、あるのはTシャツ、タンクトップ
、ジムショーツばかり。 だが、よく見てみると、小さな白い腹巻があった。
しばらく考え込む秀太。
北太平洋第七艦隊、空母フランク・ハワードの甲板にはTEAM B-BORNの戦闘
攻撃機編隊が待機していた。
『あと、1時間ほどで有効射程距離の海域に到達します。』
北太平洋第七艦隊、ソロモン提督は手に持っているマイクのスイッチをONにした。
「B-BORNの諸君・・日本には一言物申したいのだろうが、その日本政府は我々に
バトルフィールドを快く臨時提供してくれた。 そして、あのカラスの怪物の討伐の栄えある一番手に選ばれたのが・・・諸君である。 戦果を期待している。」
『B-BORN隊長、オ・チャワンです。我々には切り札があります。その怪物とやつら(日本政府)に我々の力を見せ付けてやりますよ!』
空母甲板上の戦闘攻撃機のエンジンに火が入る。
周囲は日が暮れようとしていた。
秀太は、引き出しから持ってきた白い小さな腹巻を少女に手渡した。
その瞬間、何故かイングリッド先生の顔を思い浮かんでしまう。・・・何故か。
白い小さな腹巻をあっさり受け取り、手に持ったままそれを見つめている少女。
秀太をチラッと見たあと、少女はその腹巻を被り始めた。
長い髪を全部出し、ネックウォーマー状態になった時、秀太はトントンと少女の
肩を軽く叩いた。 振り向く少女。
「これはお腹のほうにもって行くんじゃなくてね・・・。」
秀太は、白い小さな腹巻を脱がす・・・のを途中で止め、頭の辺りで固定した。
「どう? いけるんじゃないかな。」
しきりに髪を掻き分けていた少女の様子を思い浮かべている秀太を見つめている
少女。 口が半開きになっていた。
「どっかに鏡は・・・」
秀太のその声に反応したかのように、少女は目の前のPC画面を一部変換させた。
さながら、ニットキャップを被ったような自分の姿をまじまじと見つめる少女。
そして、そばにいた秀太の手を掴むと、パン!と手を合わせた。
その後、何事も無かったかのようにPC画面と向き合う少女。
少女の口元が、わずかにアヒル口に見えた秀太。
( どうやら気に入ってくれたみたい・・・かな。 )
『隊長、あのカラスの怪物、何か電波を発信しているようです。』
「こちらでも確認した。念のため、各計器の再チェックをしろ。」
『こちら、(イージス艦)カウアイ。 電波の内容は、数字の羅列である事は確認できたが、法則性を含め、何らかの暗号という可能性もある。 電波の調査はこちらに任せて、そちらは通常通り作戦を実行されたし。』
「TEAM B-BORN、了解。」
『カラスの怪物、肉眼でも確認できました。・・・炭のように真っ黒です。』
「あまり接近はするな。どんな攻撃を仕掛けてくるか分からんぞ。」
一足先にイナンバ島海域上空に到達した、B-BORNの戦闘攻撃機編隊。 正式な攻撃命令があるまで、その周辺空域を旋回飛行しながら様子を伺っていた。
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