第24話 敵の多い海  (1)

秀太の目の前の映像は、海上から海中へ変わった。

同時に、体の強制的な包み込みと無理やり動かされていた状態からも開放された。

その時、またも頭の中で “ 声無き声 ” が。


   『・・・早く行ってあげてくれ・・・ 』


「行ってあげてくれって・・・?」

元いた部屋に戻ってみると、少女の姿が無い。

改めて見直してみると・・・

犬小屋型のPC端末の陰に隠れたような、横たわる裸足の一部が見えた。

「床に寝ちゃったか・・・ しょうがないな。」

少女の寝顔を見ると、明らかに苦悶の表情をしていた。 額には脂汗。

「えっ? ・・・まさか!?」

額に手を当ててみると、温かいでは済まされない温度が伝わってきた。

なんとかしなければ・・・と、思っても・・・まず、どうすればいいのか?

どこに、何があるのか? 全然、見当がつかない秀太だった。

「・・・たのむ! どうしたらいいか教えてくれ!!」

だが、そう都合良く “声無き声” が感じられる訳では無かった。

時おり、自分に対し降りかかってくる謎の現象(?)にイラっと来ても、

今は緊急を要する状況。

「とにかく、ちゃんと寝かせてあげないと・・・。」

秀太は少女を抱きかかえ、ベッドのある場所を探し、見渡してみた。

「・・・!? こんな時に・・・!」

目眩なのか、普通に見ているのに焦点が合わない。

一瞬、パニックになりかけたが、あれこれ見ているうちにどういう訳か

部分的にはっきり見えるエリアが現れるのが分かった。

まず、目に付いたのは、壁の少し低い位置にあるカーソルのような模様。

「これって・・・?」

触れるとどうなるのか、触ってみると・・・。

それは机の引き出しのように迫り出されてきた。

枕、毛布、シーツ・・・ 普通に備わっているベッドだった。

少女を寝かしつけた秀太は再び周囲を見回したが・・・

まだ、微妙に焦点が合わない。 その状況にイライラが募る。

「あと、冷蔵庫だ! ふざけんな!! ちゃんと名前ぐらい書いとけ!!」

この後、どうにか冷蔵庫を探し当て、冷却ジェルタイプの氷枕も見つけた。

タオルで包んだ氷枕を少女の後頭部に敷き、一息つく秀太。

心なしか、少女の寝顔は穏やかな表情に変わっていた。



「まったく、余計な事をしてくれたものだ。」

「瞬く間に全世界へ配信されてしまいましたな。こうなってしまうと、例のあの

企業が黙っているはずが無い。もう、すでに動いていると見るべきでしょう。」

「それでしたら、これをご覧下さい。」


    ・WANTED・   DEAD OR ALIVE

     

        〝 RAZORBILL 〟


{ WO-PARTSが懸賞金を出します。 挑戦する際は、必ず国連に名乗りを

上げてください。  捕獲(討伐)に成功すれば、莫大な賞金をプレゼント。

でも、失敗してしまうと、TEAM丸ごと消滅・・・という危険性も孕んでいます。

我々(WP)に、これは!という画期的な攻略方法を提示したうえ、挑戦権の応募

をして下さい。    お待ちしております。 }


ハワイ・パールハーバー軍港司令部の会議室では、国連と一企業の仕事の速さに

呆れてはいたが、空母を失った北太平洋第七艦隊も黙ってはいなかった。

「君、TEAM運営側とWO-PARTSと話がしたい。繋いでくれるか?」

第七艦隊のソロモン提督は、同席していた国連の職員にそう伝えた。








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