第21話 カタカナのメッセージ

ゴリ ゴリ ゴリ・・・ ポーン!

車道に放り出されていたコンクリートブロックが踏まれた。

本来、歩道の植え込みを囲んでいた物が自衛隊の慌しい配備で弾かれ、

道路上に放置された状態と、“黒い巨大な怪物”の進む進路がたまたま

重なったために起きた音だった。

だが、それ以外の音といえば、熊の毛のように密集した “針”らしき

物が擦れ合う、シャラシャラ・・・の音だけ。

大げさな動力音などは一切聞こえてこない。

唖然として見上げている、自衛隊と警察官の一行。

カメラを構え、映像を記録し続ける報道陣。

そして、トレーラーの前に立つ、カラスを連想させる漆黒の巨大な怪物。


ワイドショー側は騒然を通り越し、固唾を呑んで行方を見守っている。

「もう一度見せていただけますか?あれ、どう見てもメッセージですよね?」

画面は自衛隊側(報道陣側)から見た、ゆっくりと迫ってくる漆黒の怪物。

ウニ(ガンガゼ)のトゲを連想させる、無数の黒い針の蓑を纏ったような姿。

その間からニョキッと現れる、柄の太すぎる銀色のハンマーのような物体。

だが、出てきた位置関係と大きさの比率からして、やはり “腕” に見える。

突き出された “ハンマー” は、ある一定方向に向けられていた。

「撃ち方、用意!!」の声が響いたが・・・。

“ハンマー”は縦方向(打撃面が天地の方向)の位置のまま、真横に動いた。

よく見ると、その側面に六つ、光のドットが瞬いている。

黒い怪物の謎行動の正体を解明したのは、テレビ局のカメラだった。

その内容は直ちに自衛隊側に伝えられた。 隊側の出した答えは・・・

何と、「様子を見る」だった。

そして、自衛隊側からテレビ局への返信は、こう付け加えられていた。

「もし、そのメッセージが虚偽で、怪物が少しでも異常な行動を起こした場合、

我々は一斉に総攻撃を仕掛けます。 その時は事前に信号弾を発射しますので、

これを合図とし、直ちに避難行動を開始していただくようお願いします。」

テレビ局の撮影した映像には、“ハンマー”をほぼ真横に2回動かす行動が収め

られており、再生画面では分かりやすく画面下にルビが振ってあった。

そのメッセージとは・・・


    ソノ トレーラー ニ ヨウガ アル

    ヨウジ ガ スメバ ウミ ヘ モドル


「思いっきり日本語のカタカナじゃないですか。 日本人なんでしょうか?」

「断定はできませんよ。ここが日本だから配慮してくれてるかもしれませんし。」

「そう言えば、確かにトレーラーが置いてある駐車場・・ありましたね。」

「何をするつもりか分かりませんけど、映像は一部始終記録しておくべきです。」



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