第19話 海岸にて (2)
「先ほど、新たな情報がありました。海上自衛隊広報担当の方によりますと、
やはり、このような天候なので、雨が止みしだい爆破解体を再開・・・」
と、レポーターが言い終わらないうちに、雲の中を横へと走る稲光。
直後、空中に響き渡る、何かを引き裂くような大音響。
その音は、ワイドショーを通じて秀太と少女のいる部屋にも届いた。
バン!と床を叩き、飛び起きる少女。
そして、テレビの画面を確認するように見ると、今度は反対側の画面に向かい、
何やら操作するように画面を撫で回し始めた。
なぜか、ワイドショーの画面と少女とを見比べている秀太。
しばらく何の進展も無いまま、環境ビデオにありそうな映像(?)が続く・・・
訳では無かった。 何かザワザワした音声が混じっている。
程無くして、いつものワイドショー番組に戻った。
「現場のタテヤマさーん! そちらのカメラ、ズームアップできますかー?」
「・・・あ、はい! どの辺を拡大すればいいですか?」
「あの、クチバシみたいな・・・ 先端の所です!」
テレビ画面は、そのクチバシの全体像を捉えるまで寄った。
「分かります、分かります! ボォ~っと光ってますねー!」
「あぁ、あれはですね・・・」と、コメンテーターが口を挟んだ。
「“セント・エルモの灯”(ひ)という自然現象です。」
「そうだったんですか。」
「原因もちゃんと解明されてまして、気象条件と物体が帯電している・・・」
いきなりだった。激しく引き裂くような音のすぐ直後、砲撃のような大爆発音。
「きゃあああーーっ!!!」 レポーターの悲鳴もそこそこ大きかった。
「タテヤマさーん! 大丈夫ですかー? 今、落ちましたね、雷・・・。」
「・・・すみません、確かに落雷はあったようです。」
その頃、秀太と少女のいる部屋に変化があったようだった。
( 思ったほど広くは無いな・・・。) どうした訳か、少し明るくなっていた。
少女が見ている円グラフのような図形にも若干の変化が。
12時の方向に縦線一本だったのが、6分の1ほど色が変わっていたのだった。
「・・・?」 何で、少女はガッツポーズしているんだろう?と・・・
ふと、目が合った。 少女の手が秀太の額に当てられた。
「いや、そんな熱があるように見える?」 そう言った後・・・
秀太は膝から崩れ落ちた。
とっさに秀太の頭が床に当たらないよう支える少女。
そして、だらしない寝顔の秀太をズルズルと引きずり運び、押し込んだ先は・・・
秀太の言う「VRの部屋」だった。
ワイドショーでは再び騒がしい状況になっていた。
「ご覧いただけますでしょうか!? 何か様子に変化があったようです!」
映像は “黒い巨大な怪物” のクチバシのアップに切り替わった。
「・・・あれは、目玉なんでしょうか?」
クチバシの両側に位置している半球体の突起部分。
その部分が透明になって、内部(?)に光沢の無い漆黒の球が出現していた。
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