第11話 ルミ、秀太との出会いと経緯を話す。

成田空港のロビー。

ロサンゼルス行き直行便の搭乗時間を待つ、ルミとマネージャーの須田。

「まずね、到着したら担当のコーディネーターの人と合うことになっててね・・」

そう言って、須田はルミに一枚の写真を見せた。

 ” TESORO DE GITANOS ”と書かれたフリップを掲げている人物。

「ルミちゃん、これ、なんて読むか分かる?」

「これはですね・・・スペイン語で ” ジプシーの宝 ”という意味で・・・

たぶん、TEAM名だと思います。」

「なあんだ、そうだったの!てっきり、クイズでも出されたのかと思ったわよ。」

ロビーの大型テレビがニュースを伝えようとしていた。


{ 千葉県警は、先日起きたミサイル墜落事故の直前、近くの警察署に送られた

一通のメールの内容を公開しました。 }


そのニュースを注視するように見ている、ルミとマネージャーの須田。


{ 生業町 い・ろ・は・区域の「は」で もと畑だった所に 木ではない何かが

 いつのまにか立っています 朝にはありませんでした 調べてください }


{ そのメールの送り主の鉄砲塚秀太さんですが… 依然として行方が掴めて無く、現在も捜査は継続中との事です。 }


( ちょっと気まずいかも・・・ )

マネージャーの須田は、何か話題を変えようと考えていた。


{ EUと新国際連合は、北太平洋・第七艦隊に対し、そのメンバー艦である、空母フレデリック・ジェイソンの二度にわたる海洋遺失物拾得に関連する詳しい報告が

まだ無いとし、速やかに返答するよう通達しました。   これに対し、艦隊側は

現在調査中とし、明確な回答を避けました。 }


どう話題を取り繕うか、あれこれ考え中の須田だったが、意外にも話を切り出してきたのはルミの方からだった。

「須田さん・・・昨日、変なメールありましたよね?」

「えっ!?」

「私、信じてみようと思うんです。・・・誰かは分からないんですけど、秀くんは

” 生きている ” って ・・・」

「・・・勇気付けてくれたんだろうけどね・・・」

いきなり、須田のスマホが振動した。 「!!」

撮影スタッフ(外注)から、SNSのショートメッセージだった。


< みなこしゃちょー!  なんだか、ドえらい手違いで2便ほど後になっちゃったみたいです! >


文末に、土下座するキャラクターのスタンプが添えられていた。

「・・・なによ、もぉ~!」

須田は既読にクリックし、改めてルミの様子を見た。

( 秀クン・・・ね・・・ )

少しの間、ビミョーな雰囲気ではあった。

( ここはひとつ、彼氏かどうか聞くべきよね・・・。 )

「・・・ルミちゃんさあ、いきなり聞いちゃうけど、秀クンって・・・?」

「カレシじゃないです! クラスメートですから!」

「まぁ、そういう事にしておこう。   ・・・でも、いろいろ聞いておきたいの。いいでしょ?」

渋々話し始めるルミ。

「日本の中学校に進学というか、編入した時に同じクラスになって・・・」

「編入って?」

「正確に言うと、日本での(中学生)生活の始まりはシアトルの小学校の夏休み

が終わってからで・・・ 日本では二学期から中学生でしたね。」

「あ・・そうか、日本とアメリカじゃ新学期の時期が違うんだもんね。」

ルミは自分のスマホを指でなぞり、ある写真を出した。

「これが秀くん。その苗字、何て読むの?って聞いたのが始まり・・・かな。」

「あれっ? 何があったの? このコ。車椅子って・・・。」

「秀くんが体を張ってくれたおかげで・・・私が今、ここにいます。」

マネージャーの須田は、秀太の写真とルミを(なぜか)見比べていた。

「何それ・・・? て、事は、このコって・・・」

「命の恩人です。」

ルミは中二の夏ごろに起きた{ 無人航空機墜落事故 }→( 三階建て校舎の

屋上と三階を直撃、校舎がほぼ全壊 )で、秀太が機転を利かせ、自分をいち早く

避難させてくれたおかげで難を逃れる事ができた・・・             という話を、須田に初めて打ち明けた。

「・・・でもさぁ、何でカレは逃げ遅れちゃったの?」

「そこなんですよ・・・ 秀くんの悪いところ。」

ルミは、秀太がとにかく危険な事が大好きで、友だちから「ムテッポー」という

あだ名で呼ばれていた事、その時の事故直前まで「ゾンビ・プレーン」(欧米での

ニックネーム)をギリギリの所まで迫ってくる動画を撮影するつもりだったらしい

というエピソードも明かした。

「屋上が自由に行き来できたというのは、その当時の彼の思うツボだったのね。」

「確か、普段は使用禁止で、屋上出入り口は常にロックされてたはずです。」

「やだ、合鍵でも持ってたのかしら?」

「その時は・・・” 天体観測部が使用 ”という先生からの許可が・・・

下りていたんですね。」

「確信犯よ、カレは。」


二人の乗る便の搭乗時間が迫ろうとしていた。

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