第12話 犬小屋のような形をした・・・

慣れない匍匐前進で、息も絶え絶えな秀太の目の前にある物。

大きさにして、中型犬の犬小屋ほど。

屋根の形が、寄棟型の平屋の一軒家を簡略化したような物体。

その横長の穴を確かめようとして(色違いの)床に手を着いた時、

違った感触があった。

ゴムボートかウォーターベッドのような、コシのある柔らかさ。

秀太はしばらく考え込んで、ある答えを導き出した。

いったん仰向けの体勢に変え、両足をその ” 横長の穴 ”に刺し込んで

みよう・・・と。

相変わらず、両足の不快な激痛は続いているが、実行しかない。

そして、どうにか尻の位置を ” 柔らかい床 ”に当てはめてみると・・・

ムクッと体勢が起き上がり、普段の車椅子に座る形になった。

( 掘りゴタツみたいな感じか・・・ なるほど。 )

すると、目の前の屋根の部分に大文字のアルファベット5文字が表示された。

   U W A A A

( ・・・?? )

続いて、板状のキーボードのような物が迫り出されてきた。

秀太はそれを見た瞬間、( これは・・・ダメだ。 )と思った。

どうやらPC端末らしい。  でも・・・

迫り出してきたキーボードは、とても使えそうには見えなかった。

一応、それらしい形はしているものの、本来はアルファベット等がある筈のキー。

それらのキーには一切の文字が無かった。

ただ… 美術の教本にあるような色のブロックが、細かいグラデーションの色分けで配置されているだけ。

( こんなものを使いこなすヤツがいる・・・? )

いつのまにか、左側の引き出し(?)が開いていた。

何か入っているように見える。 それは見覚えのある物で、形もそのまま。

コンビニで割りとよく見かける、紙パック飲料の「いちごミルク」そのもの。

手に持ってみると、適度な重量感がある。

しかも、ストローが貼り付いたままの未開封・・・

こらえきれず、ストローを刺し込み、夢中で吸い込んだ。

( え・・・? こんなにうまかったっけ・・・? )


『・・・あ~あ・・・ 飲んじまったか・・・ 』


『・・・これは・・仕方ない・・かな・・・ 』


またも、頭の中に現れる、 ” 声無き声 ” の呟き。

( たぶん、幻聴に違いない。 )

秀太は、そう思うほか無かった。 

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