第8話  記憶をたどる秀太

(??????)

目を覚ましてみたものの、周囲の様子が何か違う。

丸い、さほど眩しくない照明。

その周囲は何も存在していないような暗黒。

少なくとも、自分の部屋はこんな感じではない。

視線を左右に振って見ても、リクライニングシートを目いっぱい倒して

スタンバイしてくれている、いつもの電動車いすの姿は無い。

とにかく、状況を確認しない事には埒が明かない。

そう思って、まず右腕を動かそうとした。

(!!)

自分の視界に入った右腕は、貼られた覚えの無い湿布のような分厚い

絆創膏がびっしりと・・・。

不意に、下校した時の記憶が甦った。

確か、途中の畦道で見かけた「三本の木のような物体」の件で警察署に

メールを送ったはずだった。

再び視線を左右に振ってみる。 やはり、自分のケータイは見当たらなかった。

もう・・・ 何がなんだか、訳が解らないまま、貼られた覚えの無い厚手の絆創膏を見つめ、記憶を辿ってみる。

( 俺の名前は・・・ 鉄砲塚秀太・・・ )

( 通っている高校は・・・ 県立生業高校・・・ )

だが、どう思い返してみても・・・

最後の記憶は ”メールが打てるFAX” のキーを打っていた自分。

( ????? )

あれこれ考えているうちに、今度は何か違った感覚を感じ始めていた。

幼い頃は当たり前に存在し、現在の自分にとって奇妙な違和感。

その感覚を理解できたのも、この静か過ぎる場所だからこそだった。

見回してみても見当たらない、いつもの電動車いす。

(右)手に馴染んでいた、いつものガラケー。

淡いスポットライトが当てられている自分の所以外、何も無いような暗黒。

今まで住んでいた自宅ではない、” どこか ”に(いつのまにか)来ている自分。

ひょっとしたら、” 拉致 ”されているのかも知れない、という恐怖心。


でも、それらの事は全て後回しにしていいくらいの・・・

自分に起きつつある、異様な ” 感覚 ” だった。

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