第3話 ミサイル墜落 (2)

自宅へ戻った電動車イスの少年は、家電話付属機の”メールが打てるFAX”で

何か文章を打ち始めた。

少年の住んでいる地域から一番近い警察署の”町民の声”というコーナーにある

FAXがピー、と鳴った。

カタカタ・・とプリントアウトしている事に気付いた署員は、空中に響き渡る

爆音にも・・・ しかも次第に大きくなってきているのが分かった。

署員が外へ出て状況を確認しようとした、その時。

パトカーのすぐ横を、縦に長い大きな影が瞬時に通り過ぎ・・・

それとほぼ同時に、ロケットの発射音を至近距離で聞いたような凄まじい爆音が

建物、窓ガラスなどを激しく振動させた。

そして、大爆発音。

地響きと爆風で署内は一時パニックとなった。

「みんな、無事か!?」 「落ちたのどこだ?」 「応援呼びましょう!」



荒れた更地の上に瓦礫が散乱、周囲の木々がなぎ倒され、所々焼け焦げた跡から

まだ少し煙が出ている。

すでに消防車は引き上げ、警察の現場検証が始められていた。

鑑識官は「多数の金属片を確認」と報告。

検証に携わった警官の一人がパトカー内の無線マイクを手に取った。

「えー、被害者なんですが、現時点では確認できておりません。 ですが、どうも

いた痕跡はあったようです。」

そして、その証拠物件として「血まみれの、ズタズタになったワイシャツ」と、

「粉々に破壊された電動らしき車椅子」の件を話していた。


「何か、電柱を引っこ抜いたばかり、といった感じに見えますね。」

「それにしてはデカイぞ。第一、その引っこ抜いたブツがどこに消えちまったか?

なんだよな。」

二人の警官が話していたのは、畑だった空き地にポッカリと開けられた、三箇所の

大きく深い穴の事だった。

正三角形の等間隔に開けられた三箇所の大きな穴を測量、撮影し終えた鑑識官が

戻り、「これを見ていただけますか?」と言ってきた。

鑑識官はノートパソコンをセットし、首に下げている陸上競技のメジャーに似た

円盤状の機器と、その側面に取り付けられている、釣鐘状のビデオカメラとを

コネクター同士接続させ、映像を出した。

トンネルを突き進んで行くように見える映像は、すぐに行き止まりの土壁を映し

出し、止まった。

「・・・ちゃんと底はあったんだな。で、規模はどうなんだ?」

「今、データを出します。」

画面は深い縦穴の断面図を表示。

   { 直径 2.4m   最深 10.25m  }

その最深部断面図は、ゆるやかなクサビ形をしていた。

「あと、縦穴の壁面なんですが・・・粘土質層の所が軽く素焼き状態になって

いるようです。」 

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