第2話  ミサイル墜落 (1)

積乱雲と青空のコントラスト。 ハーモニーを無視したセミの合唱。

そして、遠くの空に甲高い爆音が響き渡るなか、

電動車いすの、その少年は自宅へ帰ろうとしていた。

いつもの通り竹林の間の細い農道を抜け、空き地の畦道を通った。

普段そこをただ通り過ぎるだけだったその少年は、その時に限って

何故か立ち止まり、”それら”を呆然と眺めていた。

”それら”は三本、正三角形の等間隔に並んで突き刺さっているように見える。

三本とも各一本ずつ、枝にしては不自然に大きめな丸太状の枝だけが木の高い

位置の所、垂直に取って付けたような形で生えているのはともかく、ミノムシ

の繭のようにびっしりと枯葉や小枝などに被われていて、外見上はそれらしく

似せてはあった。

少年には、どうやら”それら”が木ではなさそうだと感じていたようだった。

本物の木には、所々に金属の地肌らしき箇所など見えるはずが無い。

少年は自分のケータイで写真を撮ろうとした。   だが・・・。

電池残量マークの表示が赤枠だけの点滅になり、やがて電源OFFになった。

画面が暗くなってしまったのを見て、少年はしかたなくその場を後にした。


雲海上空に三機の戦闘攻撃機。

その三機が、もう一機らしい青白い光の点滅を追跡しているようだった。

パイロットから見たコックピット前方は目まぐるしく二つの円形が動き回り、

射程距離を示しているであろう数値は判読しづらい速さでカウントダウンを

していた。     「発射準備・・・。」

点状に見える、一つの青白い光の点滅。

その消えてる時の間隔が、また少し長くなった。

『ターゲット、減速!』

その時、コックピット前方の円形は一つになった。

”嵐佐武朗遊撃隊”とペイントされた戦闘攻撃機の下部から、機体の半分ほどの

大きさのミサイルが発射された。

突然、通信にノイズ。

「どうした、何かあったか?」

『隊長、どこからか電波の割り込みがあったようです。』

「発信元を調べろ。」

青白い光の点滅と黄白色の炎の点が重なり合おうとした、その瞬間・・・

何と、ミサイルは急降下、雲海の中へ吸い込まれていった。

それまで間隔の長かった青白い光の点滅は、さながらエンジンの鼓動のように

連続、さらに輝きを増し、超高空へ消えていった。

『・・・・・・』    「監査官さんよ・・・。」

『何でしょう?嵐隊長。』

プツ、プツとノイズが混ざる通信。

「見たろ?間違いなくクレームもんだ、ありゃあ。」

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