第31話 訓練で腕切られた

  いつの間にか物事が決まっていることってあるよね……きっとどうにかなる……と思う。


 「お前は、一週間であの集団をつぶしてこい」


 未来のライトはそんなことを言った。一週間は無理では……


 「できると思うか? 今まで戦闘訓練なんかしたことなんかないのだぞ」


 その通りです、カミール先生! 戦ったことなんてないです……あれ、戦ったことはあるのでは? いや、対人戦はしたことがない。


 「大丈夫だ。戦闘の基本は、俺が教える。何前世は、先生だったんだ。5日で仕上げて見せる」


 「それは頼もしい。よろしく頼むよ」


 いつの間にか、私の予定が決まっているそうです。こんな世界に転生させたあの普通神め!


 なぜか二人とも笑っているように見えたが気のせいだろう。


◆◇◆


 あれから毎日猛特訓の日々が続いています。未来の私に勧められたので日記を書こうと思います。 


 特訓一日目


 まずは、魔術で作る剣の詠唱を教えてもらいました。カミール先生は無詠唱だったはずなんだけどな……


 そのあとはひたすら素振りの練習でした。剣を振るのって難しいですね。体力がなくなったら、未来の私が体力を回復する魔術をかけてくれました。うれしくないんですが……

運動神経はよくないのでこれだけで一日が過ぎました。


 特訓二日目


 今日は、ある程度昨日で剣が振れるようになったので、ひたすら未来の私に打ち込みをしました。全然スキがなくて、心が折れかけましたが、お前のためだといわれてがんばれました。私が前世から弱かったらしい言葉もしっています。やっぱりあの方は未来の私なんだと実感しました。


 一日打ち込んだだけで終わりました。でも、攻め方はなんとなくわかったような気がしました。カミール先生は何も言わないのですが学園はいかなくて大丈夫なんでしょうか?


特訓三日目


 今日は、思い出したくもないです。でも日記なので書かないと……未来の私が振った剣をひたすら剣で守る特訓をしました。それだけなら、まだいいのです。


 が、使った剣は模擬専用の剣なんかではありません。普通に魔力で作った剣です。しかも風属性なので金属だろうとスパスパ切れます。ここから、頭がおかしいです。


 私は、守ることしかできません。手加減はしていたと思いますけど……無理です。剣で受け止めても剣ごと切れます。「魔力をもっと込めろ!」なんて言われてもペンダントでしか魔力を使えないので無理です。しかも未来の私はそれを知ってて言うんです。さらに、能力思考速度上昇を使うなって言います。不意打ちの対策のためといわれてわかってはいるのですが……


 最高に頭がおかしいのはここからです。本物の剣を使うので切れます。当たり前ですね。なので、腕や足は当たり前のように切れます。胴体が半分になったときは、絶対に死んでてもおかしくないです。ですが、治癒魔術で全部元通りになります。元に戻っても痛みはあります。もうあんなことは、したくないです。


 今日だけで一体何回死んだのでしょうか?


 特訓四日目 


 今日からは、ひたすら試合をするそうです。合格点は、死なずに30秒耐えることだそうです。無理では……今日も何回も死にました。


 特訓五日目


 ついに30秒耐えきりました。大きな理由としては、魔力をもっと使ことだったのです。もっと使うのは、量ではなく質でした。


魔力をうまく巡らせるそれだけだったのです。未来の私の一言で気がつきました。それからは剣でも受け止められるだけの強度はできたので、何度も何度も死にながら特訓しました。ちなみに、三日で死んだであろう回数は百を超えてからは数えていません。


 未来から来た私は、何回治癒魔術を使ったのでしょうか。百は少なくとも超えています。それでも魔力があるというのは、未来の私、一体どうなっているのでしょうか……?


 特訓六日目



 今日は、一方的な打ち合いはしませんでした。ですが、その代わり盗賊の討伐をしました。未来の私は、人を殺すという心構えがないと戦うことはおろか生きていくのも厳しいといいました。



 わかっては、いるんです。ですが……気持ちが追いつきません。盗賊の人たちは盗賊としての未来があったはずです。それを自分の手で壊すというのは考え深いものがあります。



 ですがそれももう割り切りました。500年生きてきたのは毎日倒したモンスターのおかげです。きっとモンスターにも自我があり生活があります。それを500年もしていたのだと割り切ります。でもやっぱり、同じ種族だと同情やつらい気持ちになります……



 今日は盗賊の討伐で特訓は終わりました。人殺しが日常の世界で私は人殺しになった……気持ちの整理ができません。きっと未来の私もこのような気持ちになったのでしょう。だから、今日の特訓は心を強くすることなのでしょう。頑張って乗り越えて見せます。



 特訓最終日



 今日はついにあの集団の討伐、いや殺戮をしました。私は、人を殺すときには心を鬼にすると決めたのです。盗賊の討伐と討伐なんか言葉を使ったとしても殺した事実から逃げれない。これからはしっかりと向き合おうそう決めたのです。



 話がずれましたが、あの集団の事実を未来の私から聞いて、いやになりました。あの怪しい集団は、本当は私を崇めるなんてたいそうなことをするものではありませんでした。


 メンバーたちは、スラム街からお金のために連れてこられたそうです。その人たちは、お金のためにパンを渡したり、朝その薬が効いているか確認したりさせられたりすることをさせられ、失敗したら即死亡だそうです。今まで、「ショックで死んでしまう」なんて言っていたのは殺されるからなんですね。私が、無理と言っていたらそれだけで何人が死んだでしょうか? 考えるだけで震えが止まりません。



 そういえば、薬を飲まされている間、あのライトちゃんを崇める会は存在しない話を聞かされていたそうですが、私は覚えていません。



 スラム街から連れてこられた人たちは解放しました。また、そのスラム街の人たちに命令したのは、不老不死である私を研究しようとする研究者たちでした。私を薬で洗脳して、解剖し、実験しようと計画していたそうです。


 あのまま未来のライトがいないで、そのままドアをあけたたしたら……私は、あの修行なんかよりももっと辛い思いをしたことでしょう。


 私は、研究所での戦闘中、人殺しは善か悪かを考えていました。


 結論は出ません。ですが、多くの罪のないスラム街の人たちを命の危機に晒し、私に対しても洗脳しかけました。このことは、私は絶対に許せません。なので、必要悪だと割り切りました。そして、何人か殺すうちに私は何も思わなくなっていました。そんな私が怖いです……


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