第30話 会話の裏側《カミール目線》

  「「やめろ! 開けるな」」


 私の声と同時に同じことをいう人がいた。でも、この声は聞き覚えのあるライトの声だ。もしかしたら、まださっきの怪しい薬の効果が残っていたのかもしれない。だが、目の前の状態は、そんな考えとは全く違うものだった。


 ライトが二人いる。どういうことだ。とりあえず、能力鑑定と知識之神を使ってみる。


 レジストされた。ありえない。鑑定のレジストはまだわかる。だが、知識之神のレジストはありえない。これをするには、まったく同じ能力を持ってる必要がある。この知識之神は、私が作ったオリジナルの能力、いやゴッドスキルだ。なので、レジストするには、このライトもどきが知識之神を持っていることになる。


 どういうことだ。一体目の前にいるこのライトもどきは何者なんだ。まさかまったく同じ能力を作り出したというのか。こんな芸当ができるのは、この世界にはいない。もしかして、ほかの世界の侵略者か? それだとしたら、まずいな……


 こんな考察をしているうちに、ライトは、ライトもどきに私が今聞きたいことを尋ねた。


 「えーと、あなたはどなたですかね?」


 さすが、ライトだ。さっきまで、ずっと心配してたが、どうにか元に戻ったようで安心した。


 「俺は、あんたのよく知るライト。未来から来たライト・ピタゴラスだ」


 未来から来た? そんなことが可能なのか? いや、不可能ではない……か?


 「未来からきた……?」 


 よかった。ライトも身に覚えがないようだ。あの薬のせいで何か変なことをしていたわけではないようだ。


 「わからないような顔をしてるがその通りだ。俺は、あの時ドアを開け、人質にされた。そして、あのクソ野郎どもにカルノアを殺され、リムアムちゃんも殺された」


 「……そんなことが」


 あのリムアムまでもが殺されただと。あんなゾンビみたいなやつを殺したなんてそんな未来あるはずが・・・


 「甘い考えをしてはいけない。この世界はこの世界なんだ。あの……ここまでしか話さない方がいいかな」


 そんなことを未来からきたライトもどきは、言った。


 そして、ライトにはわからないようにこっそりと挑発するように笑った。どういうことだ、意味がわからないが、せっかく挑発されたんだ受けてたとう。さっきのセリフのはなさないほうがいいという言葉が怪しい気がする……


 わかった。私は、知識之神を使う。


 見なければよかった。この未来から来たライトの記憶を見て、真っ先に思った。記憶から、未来から来たライトの言葉はすべて本当だとわかった。そして、この組織の恐ろしさに気が付いてしまった。私が、調べた時にはこんな情報なんかなかった。これは、私一人でもいろいろな意味を含めて対処できない。


 この未来からライトのことは分かった。だが、それでも一つ聞きたいことがある。


 「未来からきたライト、だっけ? あなたは、どこまで自分のことを知っているの?」


 きっとすべてを知っているだろうな。それでも、能力ではなく直接声で聴きたかった。


 「全てだ……と思う。一応、カルノアもその憎らしいあんたもそしてリムアムちゃんの正体も知ってる」


 やはりか……この記憶から未来の私は、取り返しのつかないことをしてしまったようだ。私がしたわけではないが私がしたことだ。


 「そう。あなたは、私を憎むかしら?」


 どうしても、聞かずにはいられなかった。未来からきたライトは、恨んでいても仕方がない。私をライトが殺すほどに……


 「憎むな。俺に何も説明しなかった。いや、出来なかったのか? 細かいことは知らないが……俺は憎む」


 今の私の状態のことだ。未来の私は、私に、そしてライトのために最後にこのことをお願いをしたんだろう。


 「えっと、どういうことですか? 話が全くわからないのですが」


 ライトにはほんとに申し訳ない。未来でも、今でも、過去でも……


 未来を変えなくてはならない。そのために来てもらったライト、過去を変えるための一手を作らなければならない。そのためには……


 「未来からきたライト。あなたなら、今どうするかしら?」


 「俺だったら、戦う。あの腐った集団、研究者どもを殺すために」


 そうだな。今の私ならば、きっとそうする。未来を変えるために……


 「それで、私はどうしたら良いのですか? 話が全く分からないのですが……」


 今のライトのことを忘れていた。ライトには、すべてのことをいつどこまで話せばいいのか……私一人だけでは、到底解けない問題だ。こんな時、一体どうしたら……


 「俺が思うに俺は全然危機的状況になったことがない。だから、前みたいなことが起きたんだと思う」


 さすがのライトだ。私なんかより全然頭が良い。圧倒的なセンスだ。よし、とりあえずこの問題は後に考えるとして、今あの集団について考えることにしよう。


 「確かにそうかもしれない。完璧な方法だと思っていてが、まだまだ私も未熟だったということか……それなら、ライトには自らあの集団を倒してきてもらうか」


 「俺のその案がいいと思う。是非ともライトには、苦労をしてもらいたいな」


 「よし、じゃあそうしよう」


 「そうね……」


 良かった。私は殺されなかった。これからの未来私、いや私たちはどうなるのだろう。

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