ミッちゃんとイフちゃん

 ドンくんをファンにする、ミッちゃんが掲げた目標を成し遂げる為に、アイドル部が考えた方策は、ドンくんの為に特別なライブを行う事だった。


【区切り】


 登校したドンくんは、自分の下駄箱に入れられた殆どの人がお金を払ってでも欲するミッちゃんからの招待状を読んだが、無表情でごみ箱へ招待状を捨てた。


 物陰から期待の眼差しでドンくんの様子を覗いていたアイドル部一同は、関心の無さに愕然として落ち込んだ。


 ごみ箱の前に立つドンくんへ言葉で挨拶をしながら近づいたイフちゃんは、ごみ箱の前に立つ理由が気になって質問したら、ミッちゃんから送られた特別ライブの招待状を捨てたと返答された。


 特別ライブの招待状を羨ましがったイフちゃんに招待状を譲渡しようとしたドンくんは、ドンくん宛ての招待状は貰えないと断られた。


【区切り】


 休み時間、アイドル部の部長と出会い、友達イフちゃんを同行させても良いかと質問して快諾された、と昼休みにイフちゃんへ話したドンくんは、喜ばれて嬉しかった。


 何時も通り購買に寄って遅れてきたユキちゃんは招待状の話を知らず何時もと変わらなかった。


【区切り】


 放課後、アイドル部の部室で行われる特別ライブが決行されると調子に乗っていたミッちゃんは、観客席にイフちゃんが居る事に驚き、先日の恐怖体験を思い出して、身体が震えそうだった。


 今のイフちゃんは魔王ではなくライブを楽しみにしている観客だ、と部長から指摘されたミッちゃんは、仮面に隠れて表情は見えないが、そわそわするイフちゃんの様子から、イフちゃんを楽しませようと意気込んだ。


【区切り】


 歌唱中、イフちゃんの様子からは楽しんでいると分かったが、ドンくんの様子からは楽しんでいる可能性を微塵も感じられなかった。


 イフちゃんとドンくんでは、拍手に差があり、過去最高に練習して頑張った成果を得られなかった事が気に入らないミッちゃんは、ドンくんへ楽しまない理由を強気に質問したら、容赦なく下手だから、と返答されて傷ついた。


 ドンくんの容赦ない言葉に対処すべく、前よりも上手くなったから……と発言したイフちゃんは、対人経験が少なく、空回りしていた。


 ドンくんの「前より上手くなっても下手だから」という発言を否定できる者はこの空間に存在せず静まった。


【区切り】


 用事は終わったと言わんばかりに、落ち込むミッちゃんを放置して部室を出たドンくんの後を追ったイフちゃんは招待状を捨てる程度に好んでは居ない行事に誘われた事が気になり、何で誘ってくれたのか? と質問したら、(イフちゃんが)行きたそうだったから、と返答されて嬉しかった。


【区切り】


 部室で反省会する部員たちはミッちゃんを励ましていたが傷は深い。


【区切り】


 後日、誘われなかった事を知ったユキちゃんから、文句を言われたドンくんは、思いつかなかったと告げて、意図せず怒らせていた。友達……だよ。

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