イフちゃんとミッちゃん

 最近のドンくんは誰に頼まれた訳でもなく、屋上へ行きイフちゃんと共に昼食を食べている。


 顔を見る事さえ恐れから叶わない魔王イフちゃんと能動的で友好的に交流するドンくんは周囲から、度胸や勇気があると評されたり、魔王の傘下に入った疑いや、馬鹿なだけなど、評価は様々だった。


【区切り】


 学園のアイドルな女の子、ミッちゃんはドンくんがイフちゃんを構う事が気に入らない。


 性別や大人子供の区別なく愛されるミッちゃんはドンくんから愛されない事が気に入らず、個人へ積極的に関わらないドンくんから構われるイフちゃんに、無自覚な嫉妬心を抱いていました。


【区切り】


 恐れから魔王の素顔を直視した者は居ない、と生徒に留まらず先生からも噂される程にイフちゃんの印象は好ましくない。


 仮面を未装着なイフちゃんを見た者は、畏怖の念を抱き、逆らう事が出来ないと噂され、経験者の口々から発せられる噂を肯定する言葉の数々に、実感がこもっていた事から、噂を信じる者は学内に多い。


 姿を見ただけで畏怖の念を抱く人間が居ると思えないが噂が真実ならドンくんが積極的にイフちゃんへ構う理由に成ると考えたミッちゃんは、真実を確かめる為に昼休みに魔王の領土(校舎の屋上)へ向かった。


【区切り】


 屋上の扉を少し開けて、二人の様子を覗き込んだミッちゃんは、視線を仮面が未装着なイフちゃんへ向けると、原因不明な強い恐怖に襲われて、耐えきれず瞬時に視線を逸らしたが、身体が震えていた。


 他人から厳しく叱られたり誘拐されて恐怖を抱いた事は有るが、絶対的に敵わない恐怖を始めて抱いたミッちゃんは必死に走り所属する部活の部室へ向かった。


【区切り】


 屋上へ向かう階段で、怯えた表情で必死に階段を下るミッちゃんとすれ違い首をかしげて考えたユキちゃんは、屋上に居るイフちゃんがミッちゃんを害したと思いました。


 急いでイフちゃんの下へ向かったユキちゃんは、ドンくんと昼食を食べているイフちゃんを問い詰めましたが、今日は会ってない、身に覚えがない、とイフちゃんから返答されたユキちゃんは疑いながらも証拠が無く追及を諦めて当初の予定通り昼食に加わりました。


【区切り】


 ユキちゃんは購買へ昼食を買ってから屋上へ来るので、イフちゃんやドンくんより到着が遅くなりますが、イフちゃんはユキちゃんが来るまで、お弁当を開ける事は有りません。


 ドンくんはユキちゃんを待たずに昼食を食べているので、ユキちゃんが来る頃には……。


【区切り】


 気兼ねなく仮面を外せる屋上はイフちゃんが心休まる限られた場所です。


 ドンくんとユキちゃんが増えても、仮面が無い自分を恐れない二人なら……、と安心するイフちゃんは、一人で昼食を食べていた頃より、顔を見合わせて会話が出来る充実したお昼休みを過ごしています。

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