第45話 最強の治癒師は、幸せにくらしました
婚約発表から二ヶ月ででの挙式に、本人達はもとより、周囲の人間があたふたしたのは言うまでもない。
しかし、そこは筆頭公爵家のホグナー家と優秀な華麗とメイド頭が支えるミレイド家。
この短期間で、しっかり準備を整えて、冬に差しかかる前の、晴れた日に無事に結婚式を行うことが出来た。
私のドレスはマリアさんとベイルさんが喧々諤々に戦っているうちに、デザイナーさんのイラストの中からひょいっとアラル君とジェシカちゃんが決めてしまったが、それを見て、二人が納得したので丸く納まった。
結婚までの二ヶ月は、ミレイド家で大切に、温かく、ゆっくりと家族団欒で過ごした。
早く
結婚したくって、一緒に暮らしたいベイルさんは若干不服そうだったが、私は年の離れた妹と弟と過ごす時間が愛しくて、それを言えばベイルさんも我慢してくれていた。
「全く、ジェシカちゃんやアラルくんには勝てる気がしません」
と苦笑していたが、時折私たち四人で過ごす時は、二人に優しいベイルさんを見て、子どもが出来た時を考えていいパパになりそうだと、ちょっと楽しみになったりした。
その事を伝えた時には、ベイルさんもにこっと笑って言ってくれた。
「ユウも、二人と接する時は優しくって、楽しそうで微笑ましいですよ。ユウもきっといいお母さんになりますね」
その時と、その後はお察しください。
実は初めて好きになった人が、旦那さんになるという事態に、結構大変だったりしますが、そこは歳上な旦那様なので、しっかりリードしてくれちゃうし、早々に私が恋愛初心者なのは把握されたので、ベイルさんは多分、結構手加減してくれてると思う。
それも、今日までですが……。
明日はいよいよ、結婚式です。
これからは、プロポーズしてくれたベイルさんのお屋敷で一緒に暮らすわけで。
明日が、初夜なわけです……。
現代日本にいたので、この歳ではしっかり耳年増状態で、経験なくとも知識はあるって感じ私は、徐々に緊張していたが、明日に備えてのメイドさんたちによるエステによって、半強制的に眠りの世界に送られたのだった。
晴れた挙式当日、私は控え室で綺麗に着飾った花嫁姿で呼ばれるのを待っていた。
ノックの後、ミレイド家一同が仕上がりを見に来てくれた。
「ユウ姉様、すっごく綺麗よ!ベイルおじ様、綺麗すぎて言葉をなくすわ!」
それはそれは、盛大に褒めてくれるジェシカちゃん。それを頷いて見守る笑顔のマリアさんにアラル君。
その横で、大きい体でグズグズ言ってるのはクリストフさん。
「父様、いい加減泣き止みなよ。姉様困っちゃうわ!」
ジェシカちゃんに突っ込まれるも、なかなか涙は止まらないようで、グズグズ言いつつもクリストフさんも言った。
「ユウ、き、綺麗だよォ!こんな早く嫁にやりたくねぇぇぇぇ!」
「あら、まぁ、最後が本音だわねぇ。いい加減諦めなさい。ベイルならすぐ里帰りすることも出来るんだから」
「だって、せっかく来た娘なのにぃぃぃ」
先日、結婚前の挨拶をした時に聞いた。
マリアさんとクリストフさんはマリアさんが十八歳で結婚して、直ぐに子どもが出来ていた。
しかし、その子は死産。
少し、私の方が歳は上だけれど、二人は私を見た時に直感的に、その子が帰ってきたと思ったという。
私も、直ぐに慣れたことに少し不思議ではあったけれど、その話を聞いて、なにかが腑に落ちた。
そうだったんだと、思えたのだ。
そんな二人の元からお嫁に行ける、私は幸せだなと思う。
「お父さん、私、ちゃんと幸せよ。だから、キリッとした顔で、一緒に歩いてね?」
元に戻るまで、ちょっと時間がかかったのは、ご愛嬌としておきましょう。
そんなてんやわんやがあっても、式は無事に済んで、私はユウ・アルバ・ホグナーとなったのだった。
異世界から、この世界に来た、歴代最強の黒の乙女は、癒し姫との二つ名の通り、結婚し、公爵夫人となってなお、流行病があれば治癒を惜しみなく使い、国の安寧を担い続けた。
そして、その力は公爵家の子ども達に受け継がれて行った。
その力は、最強の治癒術師と言われた公爵夫人には劣るものの、その心根と、知識はしっかりと受け継がれていき、ホグナー家は治癒師として連綿と国を支えていくのだった。
ユウ・アルバ・ホグナーはその後も史実に度々登場するが、そのどれでも優しさと慈愛に溢れていたという。
最強の治癒師は異世界にて、自身の幸せも見つけて、結婚後は穏やかに日々を過ごしたそうな。
fin
異世界転移したら、そこで強力な治癒師になってました。 織原深雪 @miyukiorihara
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます