第44話

そんな、私を見てベイルさんは私の涙を拭って微笑んだ。

「ユウ、ここに指輪を贈ってもいいか?」

コクっと頷いた私の左手薬指に、シンプルなリングは収められた。

キラリと輝くのは、小さな石がついているから。

それは今日贈られて、着ているドレスによく似たピンクの石だった。

「綺麗……」

私は、付けてもらった左手を眺めて呟いた。

「ユウ、私にも付けてもらっていいですか?」

その一言で、彼の手にある指輪をつまんで、彼の左手薬指に嵌めた。

その手で、私の手を掴んで顔を合わせてベイルさんは言った。

「ユウ、私と結婚してください」

「はい。私をベイルさんのお嫁さんにしてください」

私の返事にとっても嬉しそうに微笑んだ後、ぎゅっと抱きしめられた。

ドキッと心臓が跳ねる。

それを素直に受け入れると、鼓動は弾みつつも気持ちは和やかになっていった。

「これからは、遠慮なく甘やかしていきますので。覚悟してくださいね?」


和やかだった私の気持ちは、また簡単に跳ねあげられて、ドキドキと忙しなく、顔はちょっと赤くなってることだろう。

でも、私はこの世界に来て、諦めていた家族を、自分で掴むことができたような気がする。


こうして、私の仮初だった婚約は、本当の婚約へと変わり、もう待てないと急ぎに急いで、ベイルさんの希望によって、この日から二ヶ月後が結婚式の日取りとして決まったのだった。


デキル男は、何事においても行動がはやいのだった。

そして、私は宣言通りその後はとっても甘やかされて、愛されていると感じる満ち足りた日々を過ごしている。

それは、私が望んだ平和で平凡な日々とはちょと違うけれど、案外幸せで、くすぐったいけど心地よいものであった。

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