第42話
「みんな、ありがとう。どうなるかなんて分からないけれど、私。自分の気持ちに正直で居ていいのかな?」
私の言葉に、まりあさんがキュッと肩を掴んで言った。
「もちろんよ。私もクリストフも、ユウの幸せを願ってるわ。あなたの気持ちを大事になさい」
肩に乗せられた手に手を重ねて、返事をした。
「ありがとう、ママ。私、頑張ってみるね」
ニコッと伝えた私、マリアさんがうるっと瞳を潤ませて言った。
「えぇ、私達は母娘ですもの。それは変わらないわ」
「はい、ママ。ありがとう」
ぎゅっと抱きついて、私はマリアさんから背中を押してもらってベイルさんが迎えに来たとの知らせを受けて、玄関ホールに向かった。
「姉様!私の姉様は、世界一可愛いのよ、だから自信を持ってね!」
最後の最後は、可愛い妹の声援を受けて階段を降りていった。
玄関先では、ベイルさんとクリストフさんが話していた。
「お待たせして、すみません」
私が声をかけて振り向いてくれた二人は、はっと息を飲んだあと、ベイルさんは微笑んで言った。
「あぁ、やはりユウ様にはこのドレスがお似合いですね。とっても美しくて、これから一緒に過ごせることが幸せです」
本当に嬉しそうに、目を細めて私を眺めているベイルさんはお仕事の時とは全然違う、貴族の貴公子然とした、クラバットにロングジャケット姿だ。
その姿は、やはりハッとするほどの美形で、隣が私でいいんだろうかという気持ちはやはり湧き上がる。
「ありがとうございます。私みたいな小娘が一緒でいいのか分かりませんが……」
ちょっと気落ちしながら言うと、ベイルさんは言った。
「ユウ様。ユウ様のような若く美しく、強い。そんなあなたの相手が私であることの方が、存外プレッシャーになっておりますよ」
まさかね、だって私はそこまですごくない。
「ユウ様、とにかく話は出かけから。今日はあなたに大事な話があるのですから」
差し出された手に、手を重ねて私はエスコートされて馬車に乗り込む。
その時、私たちのやり取りを見守っていたクリストフさんは声をかけて言った。
「ユウ、お前の望む通りに、素直に気持ちは言葉にしろ!嫌だと思ったら、それも言え!お前は俺の娘だ。だから、好きに生きろ、生きていいんだ」
「ありがとう、パパ。行ってきます」
私は、ここに来て本当によかった。
失ったものが、再びこの手に乗ることがあるなんて、ここに来るまで思いもしなかったから。
私の言葉に、クリストフさんが笑顔で言った。
「どうなろうと、俺達は家族だからな。それを忘れるなよ」
その一言に、送り出されて私はベイルさんと出かけたのだった。
自分の気持ちを、きちんと伝えるために。
たとえ、いい返事じゃなかったとしても、私には私を受け入れてくれる家族がちゃんといるから。
頑張ってみようという気になった。
私にとって、自分のための小さな一歩だった。
たどり着いた先は、綺麗な庭園のあるお屋敷。
そこの庭の東屋だった。
綺麗に魔法でライトアップされており、秋咲きのバラがいい匂いとともに美しく咲き誇っていた。
「ここは私用の邸宅です。ミレイド家ほど広くはありませんが、このバラは自慢ですね」
まさかの、ベイルさんのお家とは思わす、驚くものの、綺麗な庭園はとても居心地がよく、ここにも多くの小さな隣人が居た。
「お招きいただけて、光栄です。本当に美しいですね」
私は、東屋からの景色を本当に楽しんでいた。
そこに、私の足元に跪くベイルさんの姿の驚いて目を見張る。
「ユウ様、私はあなたに一番大きな嘘をつきました。それは、してはならなかったと反省しています」
言葉と共にその表情はとっても苦しそうで、事実反省しているのだろう。
なにが嘘だったのか、私には分からないけれど……。
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