第41話 戦の終結と、婚約について
誰もが想像するよりも、かなりの速さで、予測されていなかった無血の終戦にイベルダでは歓喜に満ちていた。
敵国の指揮官を、捕縛して陣地に戻れば、苦笑を浮かべたクリストフさんに迎えられた。
「やはり、ユウは規格外だな。戦争を無血で解決するとは。歴史書に名を残す偉業だ」
そう言って、私は、クリストフさんに撫でられた。
「残らなくっても良いんだけど、多分残るよね……。まぁ、仕方ない。平和になるなら、それが一番だからね」
その後、捕縛した西の指揮官は、目覚めれば敵陣に捕えられていて、どうにもならず、自陣は崩壊しており、戦況は敗戦濃厚であり、立て直しも効かないと悟り、両手を上げて敗戦を宣言した。
こうして、史上稀に見るという、無血最短の戦終結となった。
その後の処理は、クリストフさんや、ベイルさん、ガルム宰相や陛下におまかせした。
私は、政務は全くわからないから。
とにかく、今後戦が起きないように、国同士で決めてくれたらいいと思っている。
メルバも、砦に戻れば、砦を守った英雄として子ども達から益々大人気になり、遊んであげていた。
実に、人懐っこい聖獣様である。
怖いところなんて、見当たらないが、魔法の威力は抑えていて、あの暴風で人を囲うのだから、きっとこの世界では最強だろう。
「ユウ様、お話があります。私に時間を下さいませんか?」
そう、ベイルさんに声をかけられたのは、戦の処理もだいぶ済んで、王都に帰還してから一週間経った頃だった。
砦から戻る時には、とっても惜しまれつつも、沢山の感謝をもらって、人々の笑顔に見送られて帰還した。
その後は、私は無事に学園生活の残りを過ごすべく、普通の学生生活を送っていた。
まぁ、周囲からはかなり尊敬の眼差しと、メルバへの視線が凄いことにはなっているものの、なんとか生活していた。
そんな時にかけられたベイルさんからの誘いは、断ることもないし、私も話さなければいけないこともあり、承諾した。
「はい、お聞きします。いつにしますか?」
そんな私の返事に、ベイルさんはキュッと一度唇を引き結んだ後に言った。
「今夜、お迎えに参りますので、これを着て待っていてください」
差し出されたのは、箱が三つ。
なんだろう、これはミレイド家へ行った日のような感じだが。
「これは、私自身のからあなたへの贈り物です。受け取ってください」
いつになく緊張している、珍しいベイルさんの様子に、私は受け取って、言った。
「分かりました、これを身につけてお待ちしていますね」
そうして、受け取った箱をもってミレイド家へ帰宅してから開いた箱には、桜色の可愛らしいドレスに、それに合う靴とグローブ、ヘッドドレスが収められていた。
あまりの綺麗さに、私はまず着るのも忘れてドレスに見入ってしまった。
すると、ドアをノックされて返事をするとマリアさんとジェシカちゃん。
その後ろから、美容に強いメイドさん軍団を引き連れたシャロンさんが入ってきたのだった。
「さぁ、ユウ様。今日は本気を出させていただきますよ」
シャロンさんの高らかな宣言から、私は逃れることも無いまま、一気にあれこれと施されて、ぐったりする前に仕上げられた私は、鏡に映る自分を二度見してしまった。
鏡に映るのは、淡い桜色のドレスを纏った、普段とはガラッと変わった、大人に見える私の姿だった。
「これ、私?」
思わず、呟く私に、シャロンさん、マリアさん、ジェシカちゃんがニッコリ笑って言った。
「間違いなくユウよ!あなたは綺麗できちんと大人の女性よ。だから自信を持って。どこから見ても素敵なレディーよ」
「ユウ姉様は綺麗なのよ。だから自分に自信を持って。姉様はカワイイ系の美人さんなのよ!」
「これは、私たちメイドからのささやかなものです」
そう言って、シャロンさんはアップにされた私の髪に可憐な白い花を挿して飾った。
「我らの可愛いお嬢様。どうか自らの幸せから逃げないで、その手で掴んでくださいまし」
私を一番近くで支えてくれたシャロンさんの一言に、不覚にも潤んだ瞳から涙が零れそうになったが、綺麗なメイクが崩れてしまうと、グッと我慢した。
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