第39話

そんな移動してきた日から、三日後には開戦となる。

それに伴い、私は可愛い隣人たちと、メルバと砦周辺に、ありとあらゆる仕掛けを施すことにした。

それは遠距離にも近距離にも対応出来るような、様々な仕掛け。

隣人達は、この国に住む人々が好きだと言って、私が頼むと喜んで協力してくれた。

私は、彼らと彼らの得意分野で仕掛けを施すことにした。

例えば、くしゃみの止まらなくなる花粉が撒き散らされるようにする仕掛けとか、同じく涙が止まらなくなるものとか、とある地点に入ると、土が液状化して足がハマって抜けなくなるとか、コンクリートの壁出現とかだ。

そして、足止めしている間に相手方の戦力を無力化するつもりでいる。

眠り粉で寝てもらうために、風を操り敵方に眠り粉を蔓延させて風で封じ込めて、寝たところで全ての兵を捕縛する。

そうしたあと、その中から司令塔クラスを選別して叩き起し、現状を把握させて敗戦宣言をさせて帰還させる。

そんな予定だが、それでも認めない時は最終手段も辞さないつもりだ。

私ができる手段はどれでも使って、この国の優しい人達が安心して暮らせる環境を作る。

そのための力だと思うから、今回は私は遠慮なく自身の力を使う。


そんな、仕掛けが完了した頃にベイルさんとクリストフさんに呼ばれた。


「ユウ、一体ここ数時間で砦近辺で何をしていたんだ?」

その問いに、私は仕掛けた内容を伝えると、とっても嫌そうな顔をして言った。


「助かるが、自営の騎士や魔法師や住民達は大丈夫なのか?」

ご尤もな問いかけには、メルバが実に誇らしげに言った。

「砦の最終防衛ラインから五十メートルの距離に仕掛けてあるので、こちらに害はない。そんな危ない仕掛けを作るわけなかろう?」


メルバの返答に、一応の頷きを返したあとでクリストフさんが言った。

「しかし、この作戦だとユウは最前線に出ることになる。それは、俺は反対だぞ!」

クリストフさんお言葉にはベイルさんも頷き言った。

「私も、同じく反対です。なぜ、そんな矢面で切り込む位置にあなたが行くんです? 後方からでも十分でしょう!」


そんな二人に私はメルバと顔を見合わせて言った。

「だって、癒し姫で黒の乙女と聖獣の組み合わせだよ? 目の前に来られたら、勝てないって思うものでしょう? だから出るんだよ」


私の言葉に、その通りだから言い返せない、でも認めたくない。

そんな表情の二人に、私は笑って行った。

「ねぇ、私がなんの為にここに来たかわかってるよね? 私はね、この国で、ここに住む人々が安心して暮らせるようにするために来たの」

私の言葉に、二人は私を見て次の言葉を待つ。

「私は妖精と精霊にも住みやすいこの国が大切だと思えるの。ここが私のこれから暮らす国だから、守りたいの。その力があるから、使うだけなんだよ」

私の言葉に、揺るぎない意志に、二人はため息をついて言った。

「メルバ、最前線に行く際には、私も一緒に騎乗させてください。出来ますね?」

そう言ったのはベイルさんだった。

悔しそうだが、今回クリストフさんはベイルさんに譲った形だ。

「なぜ? 乗せねばならぬ? 」

それに、ベイルさんは真剣な表情で答えてくれた。

「もしものための保険と考えてください。私は、ホントの最前線にユウ様を一人で行かせたくないんです」

ベイルさんは、そう言って私を見つめて言った。

「私は、何がなんでも、今回ユウ様のそばを離れる気はありません」


ベイルさんの言葉に、メルバは頷くと言った。

「そちの、願い。あい、分かった。騎乗を許そう」

メルバの許可に、ベイルさんはようやく表情を緩めた。

「ありがとうございます。ユウ様、今回はずっと側に居ます。いいですね?」

その問いかけに、私は、頷いて返事をしたのだった。



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