第28話 黒の乙女獲得合戦スタート?
学園生活は、いたって順調だった。
こと、魔法を学ぶということにおいては。
しかし、それ以外では周囲の大人が心配していた事態が起き始めていた。
そう、貴族の子息たちの自分アピール合戦である。
行く先々で声を掛けられて、お茶やら、オペラやら、自宅でのパーティーに誘われたりする。
簡単なものについては、シャロンがバッサリと断ってくれるのだが、厄介なのがミレイド家の家格以上の階級の子息たちだった。
元から、自身の家の家格にあぐらかいてるような次男坊以下のダメダメのボンボンばかりが寄ってくるのだ。
簡単に言おうか……。
嫌味すら通じない、おバカボンボンなど、相手にするはずがないと理解しようよ……。
学園での勉強はとっても楽しく、魔法科の学生とはいい距離感で過ごせて有難いのだが、一歩教室から出てしまうと、普通科の子達に囲まれてしまう。
魔法科は、私と同じ階級の子息と子女が数名で、他は下級貴族や、市井の子達も結構いて、魔法にばっかり興味があるので、あまり階級等で差別がないのだ。
なので、ここにアピールに来るアホボンボン共の態度はとっても宜しくない。
一気に空気が悪くなる。
「これは、そろそろどうにかしないとまずいわよね?」
私がシャロンにそう切り出したのは、編入から二週間目の事だった。
花やら、小物やらのプレゼント攻撃も軒並み返品してみても懲りない。
これはそろそろ、盛大にはっきり口にするべきかと思いシャロンに聞いてみると、シャロンはそれはいい笑顔で言った。
「ユウ様、その件に関しましては旦那様に報告致しまして、本日早急に決着を付ける手筈が整っておりますので、問題ございません」
この状態は、多分シャロンから聞いているとは思っていたが、まさかその対策まで既に準備済みとは思わなくって、ちょっとビックリした顔をすれば、その頃廊下が騒がしくなってきた。
ん? まさか、この騒ぎはなにかある?
「ユウ様の教室はここですか。あぁ、いらっしゃいましたね。案内ありがとうございます、日々鍛錬なさい」
教室の入口には、何故か騎士科の生徒に案内されて銀髪にモノクルを掛けた、顔見知りなベイルさんが現れた。
しかも、私を見つけて嬉しそうな微笑み付きである。
笑ってるとか、私ですら片手で足りるほどしか見たことありませんけど?!
あまりの衝撃に、多分ちょっとアホな顔をしていると、私の前までベイルさんがやって来て膝まづいて、私の左手を取り、口付けた。
なんて、様になるのか!
美形、ってずるい!
思わず、私の顔が赤くなるが、そんな私すら嬉しそうに微笑んで眺める姿は傍から見れば、互いに想い合っている男女の図である。
この事態は一気に駆け巡り、私に自分アピールしてきていた、侯爵家の次男や、伯爵家の三男など四人程が、教室の入口に詰めかけてきた。
なかなかに早い行動である。
彼らは、こと行動力に関してはご立派なのだ。嬉しくないが……。
「ユウ様、これはどういうことでしょうか?」
聞いてきたのは、四人の中で一番爵位の高い侯爵家の次男坊だ。
もう、名前もうろ覚えだからこんな感じになってしまう。
「おや、君はカーライン家の次男のダラス君だったかな? 君こそ、ここに何をしにきたんだ?」
私に見せていた微笑みとは違う、ヒヤリと冷気の漂う微笑みを浮かべてベイルさんは問いかけた。
「ユウ様に、会いに来た男性がいると噂を聞きまして。私達はユウ様に振り向いていただきたく、必死に想いを伝えていたので……」
だんだん尻すぼみになる声に、ベイルさんは実にいい笑顔で冷ややかに言った。
「では、今後はやめて頂きましょうか。彼女は、私の婚約者ですからね」
私の腰に腕を回して、親密な距離に私を置いてベイルさんがにこやかに宣言したことで、私の元に来ていた四人は一気に顔色を悪くした。
先王陛下の弟を父に持つ、ベイルさんはホグナー公爵家の次男。
そして自身は騎士団の副団長であり、王宮での地位もある。
そんな相手が婚約者にいたのだから、彼らには入り込む隙も無かったのだが、婚約者がいることはまだ話していなかったし、正式発表も来週の予定だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます