第27話
「ユウ様。今の治癒術もお見事でしたな。あれは、どう治癒を施したか聞いても良いかよのう?」
うん、おじいちゃまはかなり治癒に関しても分かっていて、生徒達にも説明出来そうなのにしないなんて、結構ずるいな。
多分、私のためなんだろうけれど……。
「今回の彼の場合、血が流れた頭に注目してしまうと思いますが、側に行けば彼の呼吸が乱れ息苦しそうなのが分かりました」
私の言葉に、ひとつ頷くとおじいちゃまは先を促す。
「そこで、私はヒールの前に無詠唱で彼の胸部から腹部にかけてのケガが分かるようにサーチを使いました。そして肋骨が折れて肺を圧迫している事に気付き、それが癒えるようヒールを使ったのです」
私の言葉に教師陣含め、最終学年に席を置く学生達も驚いている。
「では、ユウ様。サーチではユウ様にはどのように見えるのです?」
担任のキャレド先生が聞いてきたので、私は私のサーチで見た物を、皆さんにも見えるように可視化、知識の共有を行うことにした。
つまり、現代のレントゲン写真みたいな感じで画像の共有である。
いきなり、目の前に浮かんだ映像に驚いた後に、その映像をマジマジと見つめる。
皆が注目したところで、私は話し始めた。
「これが、さっきの彼の状態。ここを見ると分かるけれど、この左の肋骨ここ、線が入っているの。ここが骨折箇所」
みんな、そこをマジマジと見つめ線を確認すると頷いている。
「この肋骨の骨折部分が、後ろに写るこの肺の部分を圧迫していたから、彼の呼吸に問題が出たの。なのでここを中心に治癒術を使ったわ」
そこで、映像を消して皆に言った。
「これは、私なりの治癒術の使い方になると思う。私には、多分この国の医官見習いさん位の人体に関する知識があるから」
それにはさっきの画像や説明で、納得がいったのか特に周りからどうこうとは声は上がらなかった。
「つまり、直ぐに同じことは出来ないけれど、皆も学べば、この治癒術は使用可能だということです」
その私の言葉に、俄然周りの人々の目の色が変わった。
魔法科に通う学生達は、皆わりと知識欲が旺盛で、新しものを貪欲に学んでいく姿勢があるように思う。
なので、編入生な私の話でも、ちゃんと聞いてくれたのだろう。
最初も批判的というより、驚きと、その工程への興味の方が強そうだったから。
つまりは、ここにいる面々は結構な魔法馬鹿な可能性が高い……。
「フォッフォ。ユウ様、さすがですのう。皆を乗せるのが上手い。じゃが、皆心得よ。この魔法、一度でかなりの魔力を消費することをのう」
おじいちゃまの言葉に、この場の学生も、何故か覗きに来ていた他の騎士科や下の学年の魔法科生も先生も、ピシッと固まっていた。
「さて、ユウ様。つかぬ事を聞きますが、今疲れや脱力感や眠気はありますかな?」
そんな周りは放置気味に、おじいちゃまは私の状態を聞いてきたので、サラッと素直に答えておく。
「全く問題なく、元気です。疲れも眠気もありませんよ。むしろ、まだまだ色々出来ますけど、どうします?」
そんな私の返答に、魔法が使える周囲の者はギョッとしていた。
「さすがは黒の乙女ですなぁ。そういったわけで、ユウ様は我々とはそもそも魔力量が違う事を忘れないように」
ニッコリ笑って言ったおじいちゃまの言葉に、周囲は深く頷いて今回の治癒術の実地は幕を閉じた。
学園初日から、色々とやったおかげで、黒の乙女と治癒術における実力は間違いないことが判明して、なんとか学園生活はスタートを切った。
もちろん、その日に帰宅してシャロンさんから報告を受けたクリストフさんやマリアさんにちょっと注意を受けた。
「ユウの力はかなり強いのだから、使い方わ違わないように気をつけなさい」
そう言われたのだった。
まさか、ここから魔法関係で一気に売り込み合戦になるなんて、予測していなかったから。
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