第25話


王立学園とは、名の通り国が運営している学校なのだが、生徒に貴族は多いが、一応一般にも門戸は開かれており、商家の子ども達なども来ていたりする。

学科は騎士科、魔法科、文官科、一般科にメイド科とあり、貴族の令嬢や令息であれば一般科で教養や領地運営についてを学ぶらしい。

その中でも文官や騎士、魔法が強いタイプは各々の学科に進むのだとか。

それぞれ、それ相応の適性がないと通えないので、一般科以外は結構少数精鋭で各学年に一クラスなのだという。

そんな私は魔法科一択であった。


ミレイド家や関わった騎士さん達にも、魔法の制御も力もかなりのものだが、だからこそ他の魔法が使える人のレベルを知るのも勉強だ、との事で魔法科に編入となった。

編入試験は先週受けたが、魔法科のおじいちゃま先生が何かをする前に、私と出会って言った言葉で即編入許可が下りた。

「フォッ、フォッフォ。黒の乙女様であれば、我々教師ですら力でも技でも勝てる者はおりません。こちらが学びたいくらいですので、ぜひ来週からいらして下さい」

よくよく聞いたら、王宮魔術団の前団長職だったらしい。

引退したとはいえ、ちょっと前まではこの国で一番強い人が認めた、という事でなんの問題もなく編入が決まったという。


そうして、たどり着いた王立学園はというと。

「これまた、どっかの学園ドラマみたいな校舎ですこと……」

私の呟きに、シャロンさんが一言。

「一応、国のものですからね。これ、その昔は離宮だったそうですよ」

なるほど、通りで立派な建物だし、そこかしこに名残があるのね。

しかも、王宮は荘厳だったのにこの離宮はなんというか……。

「派手だね……」

「えぇ、四代前の派手好きな王様の建てた離宮ですので……」

シャロンさん、はっきり言ったわね。

まぁ、ここで過ごすのは一年くらいだし、なんとかなるでしょう。

そんなわけで、私はシャロンさんの先導で教員室を目指した。

シャロンさんが迷いなく進むのは、ここのメイド科の卒業生だから。

頼りにしてます、シャロンさん。

しかし、校内を歩く私への視線が痛いくらい刺さるのは何故って、この黒髪黒目のせいだよね。

金髪、銀髪、亜麻色、赤毛に稀に青っぽいとかこの国の人々の目と髪は派手な色が多い。

そこに黒は目立つのだ。

たどり着いた教員室でも、教師から見つめられる状態に。

そんな中を転びそうな勢いで、たっぷりしたお腹の持ち主が駆け寄ってきた。


「黒の乙女様!! お迎えもせず、大変申し訳ありません!」

お腹に頭がくっつくかという勢いで頭を下げているのが、多分学園を預かっているトップなのだろう。

「学園長さんですかね? 私は過剰な反応を苦手としておりますので、どうかお気になさらず」

思わず苦笑いしつつ、言うと学園長はホッとしたように頭を上げた。

「こたびの黒の乙女様は、大変人柄もよろしく寛容でいらっしゃいますな。では、魔法科の三年生の担任が教室まで案内します。キャレド先生! お願いします」


呼ばれたキャレド先生は、黒のローブのフードを被って顔がよく見えないが、零れている髪は金髪だ。

多分、綺麗なお顔をしていると思われる。


「キャレド・ビーンズです。得意な魔法は土魔法です。では、教室に案内します」


顔は見えないけれど、声は涼やかでよく通った声をしていた。

そうして、キャレド先生の案内で建物二階の端にある魔法科の教室にたどり着いた。

入ると、そこにはテーブルと椅子が綺麗に並んだ空間がある。

馴染み深い学校の教室の光景があった。

黒板の前の一段高いところに立ち、先生カラ一声掛けられる。

「皆さん、本日より転入するユウ・ミレイドさんだ」

一斉に向けられる目は、好奇心を隠していない。

彼らは私の通り名的な方がよく知っているから、髪と目に視線が集まっているのを私も理解していた。


「ユウ・ミシマ・ミレイドです。皆さんと魔法を学びに来ました。よろしくお願いします」

ニコッと笑って、私は教室内に小さな虹を作って見せた。

生徒達以上に、先生も驚いていた。

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